24_いつまでも勝負を
「ありえない、ありえない、ありえない、ありえないわよこんなこと!」
「そんなにダメな奴と思われてたなんて心底むかついてるぞ俺は」
中間試験の結果が全て返ってきた日の部室にて。俺と千景は全教科の総得点で勝負をしていた。
当然、敗者は勝者の言うことを聞くという条件付きで。
お互いの答案用紙を眺め、千景は予想だにしなかった結果にすっかり発狂している。
「だって、あなたどっちかっていえばバカなほうなんじゃないの!?」
「お前ぶん殴るぞ」
「いやーあたしも千景ちゃんのほうが頭良いと思ったんだけどねー。見直したよ圭馬くーん」
「お前も俺をなめてたのか……」
今回の勝負、僅差ではあるが俺の勝ちである。得点は嘘をつかないしこればかりは引き分けになんかできない。己が勉強不足を呪うがいい。
「でも、教科ごとだと引き分けだから無効に」
「ならねーよ! 最初に千景のほうから何度も総得点での勝負って言ってただろ有効だ有効! こればかりは反論の余地はないぞ」
「さすがにねー。今回は千景ちゃんの負けだね」
「言っておくがお前も俺に負けてんだぞ遥」
「あたしは勝負してないしー? かんけーないね」
遥とも僅差であり、現状ではわりと学力に差はないらしい。中の上、いや上の下と盛ってもいいか。
まあそんなことはどうでもいい!
「とにかくだ! 今回は俺の勝ちなんだから約束どおり言うことを聞いてもらうぞ」
「ひっ」
にやりと浮かべた俺の笑みは、千景にはどう邪悪に映っているか。
「そーいやコスプレ衣装製作部が可愛いメイド服を仕上げたって言ってたよー。ちょっと露出あるけど千景ちゃんにぴったりだと思うけど」
「ちょ、待って、それはさすがにヘンタイだと思うわよ圭馬!!」
「まだ俺はなにも言ってないだろ!? 俺が命令するのはこれだ!」
メイド服も捨てがたいが、両手で胸元を隠す千景の誤解をいますぐ正さねばならない。俺は印籠のごとく生徒手帳を突きつけた。
「……生徒手帳がどうかしたの」
「千影の図書室での本貸し出し権利をしばらく俺によこせ。そうすれば俺は一度に十冊借りることができる。お前との合わせてな」
「……ああ、そう。別にいいけど」
「きみにはがっかりだよ圭馬くん。こういうときチキンっぷりが発揮されるなんてさー」
「なんでだよ俺には至極真っ当な命令だと思うんだが!?」
遥には失望されるし千景もなぜか反応が薄い。なんなんだよもっと過激な命令してもよかったのかよ。
「じゃあ今回の勝負はそれで構わないわよ。ただし……次からはもう手加減しないわ、コテンパンにしてやるんだから!」
手と手を合わすかのように、俺の生徒手帳と千景の生徒手帳が触れ合った。なんかのアニメやゲームならこのタイミングで派手なバトルが始まったりファンタジーな空間ができあがりそうだが、現実はなにもない。ましてや生徒手帳である。
「返り討ちにしてやるよ。ちなみに次もちゃんとわかってんだろうな?」
「ええ、当然よ。そうじゃなきゃあなたの本気を引き出せないものね」
生徒手帳を戻し、千景は一歩引く。
「あなたに勝てば、あなたがわたしの言うことをなんでも聞くの。その代わり……」
遥はとても楽しそうに「青春だねー」と呟いている。
そして、片峰千景は力強く一歩前に出た。
「わたしに勝ったらなんでも言うこと聞いてあげる!」
『中間試験』~俺の勝ち~
今日が終わっても、次が終わっても、まだまだ俺と千景の勝負は続いていく。
喧嘩もするし、仲直りもするし、笑い合いもする。
なるほどまさしく青春だ。




