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14_五本勝負~作戦会議~

『いまどこだ?』

『もうすぐ家だけど』

『じゃあ文面で伝えておく。勝負は引き受けた』

『え』『本当?』『どうして』『どういう風の吹き回しなの』

『うるせえ』『やるといったらやる』『だから明日作戦会議するぞ』

『はい』『その、ありがとう』

『お互い様だ。気にしないでいい』

『どういうこと?』

『なんでもない』


 文明の利器とはこうやって使うものである。スマートフォンのトーク機能で連絡を済ませ、次の日の放課後に部室へと集合。

「いろいろ情報持ってきたよー」と片峰と一緒に来た青山も参戦。昨日の出来事なんてなかったかのように、青山はいつもどおりのテンションだ。

 逆に、片峰がまだ落ち込み気味なのはやはり負い目が残っているからなのか。


「蒲瀬賢太くん。中学のときは生徒会長なうえ吹奏楽の部長だって。礼儀正しい真面目な性格で人望も厚く、女子人気もかなーり高かったみたい」


 自分で言うのもむなしいが雲泥の差である。せめてもの誇りは皆勤賞ぐらい。


「欠点はないのか? こいつの苦手分野を対決種目にするぞ」

「勝つためとはいえ清々しいほどに根性ねじ曲がってるねー」


 うるせえ片峰を守るためだと心中つっこみつつ、対策を考える。


「頭はもちろん運動神経も良いらしいから、これといった欠点はなさそーかな。千景ちゃんすごい人に好かれたねー」

「接点ないのになんで……」

「告られるまで会話すらしてないのか?」


 小さくうなずく片峰。これが一目惚れというやつなのか。


「でもまいったな、俺の有利なジャンルだけじゃ五本勝負はちょっと不安だぞ」


 五本勝負――交互に種目を出し合い、先に三本先取した側の勝ちとなる。片峰いわく、これは蒲瀬から求められた勝負形式らしい。

 なお、片峰の交渉により先手は俺からとなるので、確実に勝てる種目を三つ用意する必要がある。

 俺が有利か蒲瀬が不利か、どちらかの条件に当てはまれば上出来だ。


「ひとつだけあるかも」


 意外にも片峰が手を上げる。


「休み時間に偶然見たんだけど、頭の上に教科書やノートを乗せる遊びを蒲瀬くんが友達としてたの。でも蒲瀬くんはすぐに落としちゃうから、あの人バランス感覚がきっとないのよ」

「……」


 俺どころか青山すら微妙な反応なのを察したか、片峰は慌てて身振り手振りで弁明する。


「ほ、ほら、あなた手押し相撲のとき片足上げ安定してたじゃないっ。きっとバランス勝負ならあなたに有利だと思う」

「片足上げと頭乗せはまた別物じゃないか」


 だがまあ貴重な情報ではある。

 たとえば俺ならどうだろうと、試しに適当な教科書を乗っけてみる。


「二秒かー」

「なかなか難しいぞこれ」


 俺も苦手では意味がないが、本当にバランス感覚が悪いのであれば別案がある。片峰の言葉が大きなヒントとなったのだが、あえて口には出さない。

 その後も検討に検討を重ね、無事に三種目の内容が決まった。


「よし、あとは練習して勝率を上げるだけだな」

「なんかドキドキしてきたねー」


 運要素は極力排除している。練習を積み重ねればきっとうまくいくはずだ。

 肝心の勝負の日程を決めるだけだが、ここは片峰に調整してもらおう。


「やっぱり、わたしも戦う」


 ……不穏な一言とともに、片峰が身を乗り出してきた。


「元はと言えばわたしが原因でやる勝負だもの。お願い、わたしにも戦わせて」

「ダメだお前のような弱者が絡むと負ける」

「なんでよ! わたしまだあなたに負けたことないんですけど!?」


 さっきまでしおらしかったのに、煽った途端に盛り返してきやがった。


「お前な俺がどれだけ広い心で引き分けにしてやったと思ってんだよ!」

「ちゃんとした理由でノーカンだったでしょ! わたしだって役に立つんだからっ」


 このやりとりを、青山は実に楽しそうに眺めてる。

 ああくそ、俺だってわかってるよ。

 片峰千景はこうでなくちゃ困る。


「ああもうわかった!」


 力強く片峰の両肩をつかみ……はせず、代わりに机を叩いた。


「なにかあったらお前を頼る。だけど基本的には俺に任せておけよ、必ず勝つから」


 少し歯の浮くような発言だったか、片峰は固まって動かない。

 それどころか少しずつ赤面していき、最終的には「わかった……」と小声で引き下がってしまった。これじゃあ俺までも恥ずかしくなるじゃないか。


「いやー青春だねー」


 黙れ青春バカ。

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