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だって、今度こそ愛されたい ~巻き戻った世界で、 侯爵令嬢は自分だけを見てくれる人を探します~  作者: 乙原 ゆん


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36.予想外の出会い

 魔術の講義は今日も休講だった。

「このまま休講が続くのなら、別の講義を取った方がよいのかしら……」

 実際、そうしようかと話している人も見かけたが、私は他に取りたい講義もない。

 ひとまずは時間を潰そうと学園に付属する図書館に向かっていると、前方から意外な人が歩いてくる。

「……クロード様?」

 こぼれた声に、視線が合う。クロードの表情にも驚きが浮かんでいた。

 クロードは珍しく黒のスーツ姿で、似合ってはいるがローブ以外の服装を見るのは初めてだった。

「ラバール侯爵令嬢……。どうして、今は、講義中では」

 意図せず呼び止めた形になって、慌てて言葉を探す。

「魔術の授業を選択しておりますの。本日も休講だったので、図書館に行こうかと思っておりました」

「そうだったのですね。申し訳ありません」

「どうしてクロード様が謝られるのですか?」

「少々手続きに時間がかかり休講が続いておりましたが、今年度から私が魔術の講師となります」

「えっ? クロード様が講師なのですか? 筆頭魔術師のお仕事と両立は大変ではございませんか」

 驚く私にクロードは頷く。

「そちらは解任されましたので、問題ありません」

 言葉を無くした私に、クロードは苦笑する。

「明日から講義を始める予定ですが、王宮務めの任を解かれた魔術師に教わるのはお嫌かもしれませんね。別の講義に変更されても私は気にしませんので」

「そんなことは致しません。ですが……、もしかして、解任は私のせいなのではありませんか?」

 真意を探るようにクロードを見つめると、クロードは小さく息を吐いた。

「ラバール侯爵令嬢のせいではございませんが、ここでは詳しい話は差し障ります。お時間はおありですか?」

「次の講義の時間まででしたら」

「では場所を移しましょうか」

 クロードに連れられ、学園講師のために用意されているという研究室へと向かった。


 学園から割り当てられたばかりだという研究室にはほとんど物がなく、私が座る椅子も別の部屋から取って来た物だ。

 少々込み入った話になるため、研究室の扉を開け、侍女には扉の外で待っていてもらっている。

 クロードの方でも防音魔術をかけていたから会話は聞こえないだろう。

「お茶の一杯ぐらい出せたらよかったのですが」

 お茶を淹れる道具どころか、カップすらない部屋の様子に私は首を振る。

「食堂でお昼を頂いたばかりですのでおかまいなく」

「それはよかった。早速本題に入りますが、ラバール侯爵令嬢はどうして私の解任をご自分のせいだと?」

 改めて問われると、確証がないことに気がついた。だが、静かに私を見つめるクロードの瞳に、覚悟を決めた。

「信じられないかもしれませんが、私には一度死んだ記憶があるのです。その記憶と今の状況を照らし合わせて、クロード様が時戻りの魔術を使ってくださったのではないかと。そしてそのせいで、魔力枯渇に陥られたのではないかと推測しております」

 クロードの反応を窺うが、彼は何の表情も浮かべていない。

「一度死んだ記憶など、夢だとは思われないのですか?」

「そう思うにはあまりにも全てが鮮明なのです。それにこの指輪は、調べたら時戻りの魔術の発動中に現れるものだと」

「どこでそれを?」

「王族の書庫に入れて貰い、魔術書を読みました」

 クロードが驚いたように私を見る。

「そうまでして調べてこられたというのなら、誤魔化すのは難しいようですね。そうです。私がラバール侯爵令嬢に時戻りの魔術を使いました」

「やっぱり。クロード様、私にやり直す機会をくださってありがとうございます。……ですが、どうして私に機会をくださったのですか?」

「……理由などありません」

 目をそらしながら言うクロードに、言葉のままに受け取ることが出来ずに更に尋ねる。

「ですが、クロード様は私に時戻りの魔術を使われたせいで魔力枯渇に陥られているのですよね?」

「問題はありません。初めにお伝えしたように、侯爵令嬢のせいではなく、私の問題なのです。細かいことなど気にせず、どうぞ新しく得た機会を活かす事だけをお考えください」

 それ以上話すことはないという様子に、私は気を取り直してクロードに問う。

「ですが、魔術書には、魔力枯渇の対策もあると」

 クロードは首を振る。

「侯爵令嬢がお気になさることではありませんから」

 明確に拒絶するクロードに、私は戸惑う。

 言葉を探すうちに、講義時間の終わりを告げる学園の鐘の音が聞こえてきた。

 ほっとしたようにクロードが口を開く。

「どうやら授業時間が終わったようですね。そろそろ移動なさった方がよろしいのでは」

「……そうですね。また、参ります。本日はお時間を取っていただき、感謝致します」

 それだけ言って、私はクロードの研究室を後にした。

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