24.観劇デート(2)
後半は、前半の予想を裏切らない展開だった。
一時は惚れ薬により公爵令息に傾いた王子の婚約者は、魔物の討伐から帰って来た王子の真実の愛により本来の心を取り戻す。他にも罪を犯していた惚れ薬を盛った公爵令息は罪を裁かれ、婚約者は王子と結ばれるというものだ。
観客の拍手で幕が下がった後に再び姿を現した役者達に拍手を贈り、彼らが姿を隠したところで殿下が言う。
「面白かったかい?」
「はい。王子様の悲恋で終わった原作の物語も好きですが、この舞台は最後に幸せに終わったので、こういうお話もいいなと思いました。それに、あのヒロイン役の女優さんの歌声がとても素晴らしくて」
「ジュリアが気に入ったのならよかったよ。この後は、食事をどうだい?」
「喜んで」
そうして殿下のエスコートで席を立った。
連れていかれたのは、王都でも人気でなかなか予約が取れないという店だった。本日は王族である殿下がいるのでレストランにある離れを丸ごと借り上げているという。離れはレストランの敷地内にあるものの、本店とは独立して建つ一軒家だった。
手入れされた庭には、淡い魔法光が漂い幻想的な雰囲気だった。
「こんな素敵なところに連れてきてくださってありがとうございます」
「パトリシアにご令嬢方に人気だと聞いてね。ジュリアも気に入ってくれて嬉しいよ。パトリシアにも伝えておくよ」
「まぁ、パトリシア様のご紹介だったのですね」
「ジュリアも今度会った時に礼を言うと良い」
殿下の言葉に、私は微笑みながら曖昧に頷いた。
確かに私もこのレストランのことは気になっていたが、殿下の口からバシュレ公爵令嬢の名を今は聞きたくなかった。
殿下はそんな私の様子に気が付かないようだ。満足げに頷くと、続ける。
「今日ジュリアを誘ったのは、ジュリアが王太子妃教育を頑張ってくれているからだ。これからより高度な内容になっていくと聞く。今以上に励んで欲しい。そうすれば、また連れてこよう」
「励みます」
王族だからだろうか。殿下の言い方は、まるで勉強ができなければデートは無いと言っているようにも聞こえる。以前の私ならば、殿下の言葉に張り切って、今以上に頑張っただろう。けれど、どうしてか今の私には、殿下の言葉はどこか虚ろに響き、頑張ろうとは思えない。
美味しいはずなのに味気ない食事を終えると、殿下に送ってもらって屋敷へと戻った。




