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だって、今度こそ愛されたい ~巻き戻った世界で、 侯爵令嬢は自分だけを見てくれる人を探します~  作者: 乙原 ゆん


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20.婚約披露宴(1)

 婚約披露宴はガーデンパーティ形式で行われることに決まった。

 当日、朝早くから起床しお風呂で下ごしらえを受けた後、殿下に贈られたドレスを着つけてもらう。ドレスは細かい花柄の総レースの生地で、胸下に切り返しがありネモフィラ色の細いベルトが付いていた。そして、スカート部分はレースの下にベルトと同じ色の生地が重ねられていて、うっすらとレースから青色が透けて見える。

 ドレスを着終わるとケイトが私の金髪を編み込み、ネモフィラの花を差していった。最後に殿下に贈られたプラチナゴールドのネックレスを身に着けると完成だった。ネックレスには殿下の瞳を写し取ったかのような色のアクアマリンが使われていて、全身が殿下の色味で彩られる。

「こちらの指輪は外された方が良いのではありませんか?」

 ケイトは左手の小指にはまったままの薔薇の指輪に視線を落とした。

「このままでいいわ」

 この小指にはまる指輪だけが金色で、確かに今日のコーディネートの中で異質だった。でも、不思議と外そうとは思えなかった。それに、この指輪は外そうにも外せない。そのことを言い訳に、そっとケイトの視線から左手を庇った。そんな私に、ケイトは疑問を浮かべながらも頷いたのだった。


 王宮へは侯爵家の馬車で向かった。今日はお父様とお継母様も一緒にいらっしゃっている。王宮に着いたところで馬車のドアが開き、お父様が降りて、お継母様が降りるのを手伝う。私も降りようとしたところで、外から驚きの声を上がった。

「これは、殿下!」

「ラバール侯爵、驚かせたかな。ジュリアが到着したとを聞いたもので迎えに来た。ジュリアは中かな?」

「は、はい!」

 お父様の返事と同時に、靴音がステップを登り馬車の扉から殿下の顔が覗いた。

「ジュリア、早く君に会いたくて迎えに来たよ――」

「マティアス殿下?」

 途中で固まってしまった殿下に、控えめに声をかけると殿下は気まずそうに微笑んだ。

「失礼、ジュリアがあまりにも美しくて、時が止まってしまった」

「おおげさですわ」

「そんなことはない。やっと今日、皆にジュリアを婚約者として披露できるとほっとしていたが、…………このまま閉じ込めたくなるな」

「え……? 今、なんと?」

 ほっとしていたの後は小さな呟きで、殿下が何と言われたのかよく聞き取れなかった。

「なんでもない。さぁ、手を」

「かたじけのうございます」

 殿下の差し出した手に右手を乗せ、立ち上がると殿下に寄り添われて馬車を降りる。ステップを降りきると、殿下の手が当然のように腰へとまわった。もう少し距離を取りたいのに、離れられない。

「殿下、お手を……」

「折角の仲の良さをアピールする機会だ」

 言外に抵抗を示すけれど、殿下は微笑み拒絶した。そしてお父様の方を向く。

「ラバール侯爵、ジュリアはこのまま連れて行ってもよいか?」

 本当はお父様達と控え室に行きそこで別行動となる予定だったが、殿下と合流したのだからとお父様は頷く。

「では、また後で会おう。会場へはあの者に案内させよう」

 警備の人とは別に玄関扉の前で控えていた侍従を呼んで、殿下が指示を出す。

「お心遣いありがとうございます。ジュリア、おめでとう。今日という日を迎えられて嬉しいよ。私達は殿下のお言葉に従って先に会場に入っておくから、また後で会おう」

 お父様はそう言うと、殿下に一礼すると、お継母様に腕を差し出す。

「ジュリアさん、よかったですわね」

 扇で口元を隠したお母様はそう言い残し、お父様の腕に手を添える。二人は侍従の案内で会場となる庭園の方へと歩いて行った。

「それでは、私達も行こうか」

 殿下は腰に添えた手をそのままに歩き出す。王宮内で働く者達の視線を集めながら、私達は王族の控え室へと向かった。

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