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だって、今度こそ愛されたい ~巻き戻った世界で、 侯爵令嬢は自分だけを見てくれる人を探します~  作者: 乙原 ゆん


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18.殿下の変化

 今日から中断していた王太子妃教育が始まる。


 先日の襲撃事件がどう決着がついたのかは知らされていないが、呼ばれたということは一段落付いたのだろう。

 警備が厳しくなり、今後は馬車も王宮が用意するという。

 迎えの馬車に乗って王宮へと向かう。


 ロータリーに着くと、思ってもみない人物が待っていた。


「ジュリア、よく来てくれた。さぁ、手を」

「マティアス殿下」


 差し出された手を取って馬車を下りるが、内心は戸惑いでいっぱいだった。

 殿下が出迎えてくださるようなことは今まで無かった。何かあったのだろうか。


「早くジュリアと会いたくて、迎えに来てしまった。迷惑だったか?」

「滅相もございません。私も殿下とお会いでき嬉しゅうございます」

「そうか」


 嬉しそうに頷く殿下に私も頑張って微笑を浮かべる。

 殿下の態度が突然変わったことは頂いたお手紙からわかっていたものの、温度差についていけない。

 そうだ、手紙と言えば、お返事はしたものの、お礼を言っておいた方がいいだろう。


「殿下、お手紙、ありがとうございました」

「ああ。会いに行くことができず、せめて手紙だけでもと思ったのだ。不安ではなかったか?」

「殿下のお気遣いでつつがなく過ごすことができました」

「そうか」


 柔らかく微笑む殿下に目が奪われる。


「さぁ、授業のある部屋に案内しよう」


 殿下の変わりように周囲に居る護衛や侍女は顔色を変えることはない。

 私も内心を表情を変えないように気をつけながら殿下のエスコートで本日の授業がある部屋へと向かった。



 一日の最後の授業が終わったところで、殿下が迎えに来られた。


「まぁ、殿下、いらしているとは知らず、お待たせしました」


 礼儀作法の先生が恐縮した様子で言う。

 これまで、殿下が私の授業が終わるのを待たれていたことなどなかったから、先生も驚いておられるようだ。


「いや、構わない。急に思いついて立ち寄ったからな。授業は終わったようだが、ジュリアを連れて行っても良いだろうか?」

「勿論でございます」


 先生の返事を聞いて、殿下は私の手を取る。


「さぁ、行こう」


 殿下に連れていかれたのは、いつも殿下との交流で使っている部屋だ。

 だが、いつもより、菓子の種類が多い。


「さぁ、こちらに」

「ありがとうございます」


 椅子を引かれ用意された席に座ると、殿下は向かいへと座った。

 私が並べられた菓子を見ていると、殿下は困ったように眉を寄せた。


「ジュリアの好きな菓子を準備しようと思ったのだが、そういえば聞いたことがなかったと思ってな。今まで、我慢をさせていたのではないか?」

「滅相もありません。今まで頂いたものは全部美味しくて、流石王宮のおもてなしと思っておりました」

「そう言ってくれると気が楽になるよ」


 殿下は表情を和らげると、続ける。


「ジュリアの好きなお菓子はこの中にあるだろうか? なければ次回用意させるから、遠慮なく教えて欲しい」

「まぁ、でしたら、私も殿下のお好きな物を伺いたいです」

「もちろん、ジュリアの話を聞いたら教えるよ」


 そう言われ、私は並べられた物の中から、好きな物を挙げていく。


「ベリー系の物が多いな。苺が好きなのか?」

「はい」

「ふむ、では、旬の季節には苺でタルトを作らせよう」

「楽しみにしております。ところで、そろそろ殿下のお好みを教えて下さいませ」

「そうだな。約束だった。私は――」


 殿下の視線が、私を捉える。


「ジュリアが喜ぶ顔が見られれば、味などどうでも良いと思っていたところだ」


 息を呑む私に、殿下は微笑んで頬杖をついた。

 プラチナブロンドがはらりと流れ、ネモフィラの花の色をした瞳がうっとりと私を見つめる。

 席が離れていて幸いだったが、それでも殿下が振りまく魅力に一瞬呼吸が止まる。


「……それは、困ります」


 かろうじて出した答えに、殿下は首を傾げる。


「どうして?」

「私も、殿下が好まれる物をお贈りしたいと思いますから」

「そうか。なら、考えよう。……そうだな、甘い物よりは塩気の強い物が好きだな」


 そういえば、と見るとテーブルの上にはベーコンやホウレンソウが混ぜ込まれたケークサレも並んでいる。


「でしたら、こちらなどお好きなのでは?」

「では、食べてみようか。取ってもらえるかな?」

「かしこまりました」


 殿下の皿に取り分けた後、自分の皿にも載せる。


「おや? ジュリアも食べるのかい?」

「折角ですから、私も頂いてみようかと」

「そうか」


 殿下は嬉しそうに微笑み、カラトリーを手に取る。


「うむ、確かに好きな味だ。ジュリアはどうだ?」

「美味しいです」


 殿下は頷き、言う。


「これと、後は先ほどジュリアが好むと言った菓子を土産に包ませよう」

「よろしいのですか?」


 今まで、そんなこと言われたことは無かった。


「もちろん。代わりに、家でも私のことを想い出して欲しい」

「わ、わかりましたわ」


 どこまでも甘い殿下に戸惑いながら、茶会は続いた。

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