12.エリクとのお茶会
家に帰ると、異母弟のエリクが出迎えてくれた。
「姉上、おかえりなさい」
「ただいま戻りました」
「エリクさんは今日の授業はもう終わったのですか?」
「はい。宿題も終わらせております」
後ろに控える侍女は頷いている。
「頑張られたのですね」
「はい! 今日は姉上とお茶をご一緒できるとお約束していましたので」
胸を張るエリクに思わず微笑みが零れる。
「では、着替えて参りますので、お待ちくださいね」
元気に返事をするエリクを置いて部屋に戻った。
エリクはもうこの家に馴染んだようで、教育も順調に進んでいるという。
初回以降、お茶会の際は事前に手紙で都合を聞いてくれるようになっている。
素直に話を聞いて成長を見せる姿に、私も徐々にエリクと打ち解けるようになっていた。
部屋に戻るとケイトが出迎えてくれた。
「どのドレスに致しますか?」
「そうね、こちらにするわ」
軽やかな水色のデイドレスを選ぶとケイトが支度を整えてくれる。
「では行ってくるわね」
「どうぞ楽しんできてくださいませ」
頷いて、ティルームへと向かった。
侍女が来訪を告げると、内側から扉が開いた。
「お待ちしておりました」
エリクが出迎えてくれて席までエスコートしてくれる。不慣れながらも椅子を引いてくれる姿に感謝を述べる。
「エスコート、ありがとうございます」
「うまく出来ていましたか?」
「ええ、とてもお上手でした」
「先生には不慣れでもどんどん実践するようにと言われたのです」
「そうですね。実践することで慣れる部分もありますから」
「先生の言葉にはそういう意味があったのですね」
エリクは感心したような様子で頷いている。
話しているうちに、目の前にはティセットとサンドイッチなどの軽食、果実が並んでいた。
「王宮で甘い物は召し上がったかもしれないと思って。今日は軽めの物にしました」
「お気遣いありがとうございます」
エリクに御礼を言うと、照れたように頬を染めている。
「ところでエリクさんはもうすぐお誕生日と伺いました。何か欲しいものなどございますか?」
誕生日については、エリクの侍女から聞いていた。
一度目の時は誕生日を祝うような交流すらなかったから好みを知らないし、まだ交流を始めて間もないために今回は直接欲しいものを聞くことにした。
「あの、それは物でないものでもよろしいですか?」
「内容にもよりますが、私にできることでしたら」
「でしたら、あの、姉上とピクニックに行ってみたいです」
思ってもみないことを言われて、どうだろうかと考え込むとエリクが落ち込んだ様子を見せる。
「駄目、ですか?」
目を潤ませる様子に、どうしようかと思い悩む。次期侯爵予定のエリクの外出は私の一存で決められることではない。
エリクの後ろに控える侍女はエリクの希望に添いたいが、私の気持ちもわかるのだろう。
複雑な表情だ。
「駄目かどうかは私の一存では決められませんので、お父様とお継母様に伺ってみます。許可を頂ければ私は問題ありません」
「本当ですか!」
まだ行けるとは決まっていないのに、ぱっと表情を明るくするエリクに苦笑する。
「ちなみに、どこに行きたいのですか?」
「姉上が通われている王宮を見てみたいです!」
「王宮、ですか?」
「はい。庭園は申請すれば貴族なら入れると伺いました。今までは行ける身分ではありませんでしたし、いつも姉上が通われている場所を僕も見てみたいです」
エリクは期待に目を輝かせている。
「では、許可が頂けるか、伺っておきましょう」
「ありがとうございます!」
お父様はともかく、お継母様から許可は出るだろうか。
義母とは食事の時に顔を合わせるくらいだが、必要以上の会話は無く、反応がわからない。
「もし駄目と言われましたら、違う物を考えましょうね」
「はい!」
元気よく返事をするエリクに、私は許可が下りるといいなと思うのだった。




