No.007 艦長訓練
艦長って大変だろうけど面白そう
というわけで本格的に訓練が始まったのだが、とりあえず僕が艦長としてする業務についてざっくりとだが紹介しよう。
まず、そもそも艦長としての職務だが、みんなが考えているように艦全体のトップであり、僕が判断することで艦の運命が左右されるかも知れない重大な責務を担っている。
まあ基本的に行動を起こすには、僕より上の立場の宇宙艦隊の上層部や、指揮官の長岡さんから指示が来るが。戦闘時には船の指揮をし、場合によっては他の船との連携も取らなければならない。そして戦闘時以外も、艦の状態や各持ち場の状況を確認したり、常に航行に必要な情報について知っておく必要がある。
また一番上なので、場合によっては艦の中で騒動を起こした人を営倉にぶち込んだり、裁かなければならない。まぁあまり人を裁いたりはしたくはないが。ちょっと驚いたのは、自分も戦闘機の操縦訓練を受けたことだ。
僕達の船に搭載されている戦闘機、SF-14レオパルドはカナードタイプ、前進翼の付いた戦闘機で、地球だとエンジンは後ろについているが、この戦闘機は翼についている。しかもこの戦闘機に限らず、宇宙軍の戦闘機は前の部分が分離して飛べるようになっていて、座席を射出できる装置も合わせて二重の脱出装置となっている。他にもコックピット部分、胴体、翼にバラバラにできたり、胴体の後ろのエンジンが付いているところには、ネリネみたいに様々なパーツを付けることが可能だ。
基本的には何もなくても翼に付いてるエンジンだけで飛べるが、Aパーツ・・・増槽、Bパーツ・・・エンジン、Cパーツ・・・ミサイルウエポン、Dパーツ・・・強化型キャノン、Eパーツ・・・大型レーダーとジャミング装置が付いたレドームを搭載することができ、状況に応じてこれらのオプションパーツを組み合わせて飛ぶことができる。
胴体の上のハッチにはエネルギー砲が標準搭載されており、下部ハッチには、ミサイルや上と同じようなエネルギー砲を取り付けられる。羽にはエンジンが付いているが、その下にもミサイルなどを吊り下げることが可能だそうだ。……何でもつけることができるな。
ちなみに、艦も戦闘機もバラバラに分解したりできるのは、迅速に作戦のために展開できるようにするのと、あまり慣れない人が使うので壊すことが多い上、高校生も整備する以上、パーツ自体を取り替えるだけで素早く動かせるようにするためだそうだ。他にも戦艦ゲーム的な感じで船を動かしたり、AIを活用して指揮の勉強をしたりした。簡単そうに聞こえるところもあると思うが、どれも難しいし、隼華さんがめちゃくちゃ厳しい。
「そこで判断に迷っていると、すぐ撃沈されるわよ」
とか、
「そんなところにのこのこといたら味方の砲撃でやられるわよ」
とか、
戦闘機の訓練では、もっと展開を早くしろとか、それぐらいで墜落しないとか、ともかく色々なことを叩き込まれた。そんなわけで、いつもフラフラになってしまう。
「隼華さんたちは戦闘を経験したことはありますか?」
「あるわよ?前の戦闘のときに出撃したわ」
「どんな感じでした?」
「あっちは量の方に傾いているけど、やっぱり技術もあちらの方に分があったわね。でもこちらも質と兵器ではあまり負けていないからなんとかなったけれどもね?」
「そうなんですか。印象に残った敵っていますか?」
「青い船は速いし強かったわね。あれにはさんざん手こずらされたわ」
「そうなんですか……」
「今のあなただと、まだまだ勝てない相手だわね」
えぇ……撃沈されないようにもっと頑張らないと。これは他の人達も同じようで、いくら自分たちの得意分野だと言っても、先輩には勝てないようだ。
そんなこんなで高校の勉強を進めたり、船の勉強をしたり、船の他の乗組員と交流をしたり、朝は白美と一緒に走りながら他の班の状況について知らせてくれたりしながら時間が立っていった。ちなみに白美はやっぱり中学の時は女子の中で(男子でも追い抜けるのは2人ぐらいだったらしいが)1番速かったそうで。自分と遜色ないくらいに走るのが速い。やっぱなんか悔しい。
他には事務作業も艦長業務の一環だ。意見や要望、足りないものや上からの命令書や資料、予定なども見たりそれらの許可を出したり受諾するためにサインを書くなど、ちょっとこれが忙しいし面倒くさい。まあデスクワークはほとんどがしんどいが。
「疲れたなぁ……」
自分もここに来て数日経ったらネリネに関する資料を見たり、サインをしたりしている。
「白美から聞いていたりはしていたが、資料としてそれぞれの班の課題が挙げられてきたりする。やはり1番の問題は飛行班かぁ……担当の人からの報告書だと、
[飛行班の状況です。個々の能力はそこそこあり、数値的には以下のようになっていますが、問題としてチームとしての行動することが殆どできていないです。かろうじて時井隊長についていっているのは三木さんと大城さんです。一番問題は大廣さんで、何かと時井隊長に突っかかっており、鍵岡さんは暴走します。他の人でも暴走したり、庇いまくっている人がいて、話にならない]
と、エーデルワイスの飛行隊の人から来ている。なんとかしますと言っているけど大丈夫かなぁ……僕等艦橋班は担当がそれぞれで違うのでばらばらになっているが、それぞれ特技を生かしてやっているようだ。
琴丘は何か担当している先輩が俺よりもうまいし何も教えられん。自分のほうが教えられているし、あまり話してくれないと頭を抱えているそうだが。
「あかねは安定して活躍しているそうだし、操舵・機関・砲術・オペレーター全員優秀で文句なしか……あれ?僕だけじゃね?こんなに苦労してるの」
やばい考えないでおこう。
[コンコンコンコン]
誰だろう?
「どうぞ。」
「優木さん!お菓子を持ってきました!今日はエクレアです‼」
結衣か。いつも持ってきてくれて正直めちゃくちゃありがたいんだよな。
「いつも悪いな?」
「いえいえ。ずっとキッチンで作れますので楽しいです‼」
「いいなぁ……ずっとデスクワークか指揮の取り方とか飛行機の操縦の仕方とかを学んでいるよ……」
「大変ですねぇ……私達は全員文句なしなのでもう教えることはないと言われて、今日の夜から食堂で働かせてもらいます‼」
「楽しみにしているよ。みんなにもそう伝えておいて?」
「はい‼艦長も頑張ってください‼」
「うん」
まあみんな楽しそうにしているようで良かった。
「さて、休憩するかぁ……」
休息も立派な体調管理の1つだしな。その後はありがたくエクレアを頂いて、書類のチェックは意外と早く終わった。美味しいものを食べれたからかな?
「ちょっと暇になったなぁ。夜ご飯まではあと3時間ぐらいか」
というわけで、他の人達の様子を見に行くか。隼華さんもみんなの様子を常に見ておいておいたほうが良いって言ってたし。
「どこを見に行こうかな?」
そう思いながら廊下を歩いていると、
「あっ、優木じゃないか‼」
後ろを振り返ると、宗光がこっちに来た。
「宗光か!そっちの班の状況は?」
「いや、あまり良くない……」
[ズーン・・・]というような効果音が聞こえそうなぐらいに弱ってやがる。よし、今日はこいつの面倒を見てやろう。
「今から宗光はどうするの?」
「とりあえず今日は休養を取れるからなにもすることはないよ」
というわけで宗光を連れて艦長室に戻って来た。
ぐすんぐすんぐすん……
oh……
「他の班員の人達とうまくいってないのか?」
「いってなくはないんだけど……腕は普通にいいんだけどみんな本能なのか自分たち優先で行ってしまって……エーデルワイスの先輩もめっちゃ困っていたし」
「なんとかまとめ上げないとやばいよな……戦闘機に乗るっていうことは最前線に出るんだし」
「そうだよなぁ。マジでどうしよう……」
「とりあえず1人1人と話し合ってみてから考えてみたら?」
「そうかぁ。1回それをしてみる。みんなの気持ちとかも聞かんとだめだよなぁ」
その後も話し合ってこれからのこととかについても話し合った。何でも飛行班の男子で宿舎の部屋を共用しているようだが、そこでは仲良くしているようだからまあ大丈夫かな?
「じゃあ俺はもうそろそろ行くわ」
「おぅ。またなんかあったらいつでも来てくれ」
「分かった」
これで良いんだろうか?なんとなく不安になるがもう少し様子を見てからでいいか……
いやめっちゃ不安だわ……
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