No.67 想定外の事態
だいぶおされてるみたい……
「艦長より各員に連絡。これより本艦はモスクワと共に敵艦隊へ切り込む。なお、他の2方向からも味方艦隊が切り込んでくるので、連携を密にしてくれ」
フレンドリーファイアとかされたらたまったもんじゃないからな。
「艦長、前方に敵戦艦。大型艦1隻、中型艦7隻、小型艦22隻です。」
「対艦戦闘‼ 広、主砲、1番から5番、全門照準敵戦艦‼副砲は任意に照準‼ミサイル発射管1番から5番、対艦ミサイル‼広海、スタビライザー、バリアー展開、ソードモード‼二葉、エンジン最大出力‼」
「了解。主砲、副砲照準、敵戦艦。特射砲はどうします?」
「もうちょっと近づいてから撃つ‼全門、撃て‼」
[ビィィィィィ]
「エンジン出力、安定して上昇中」
「バリアー、展開完了」
『前方より敵戦闘機。数18機です』
「ミサイルも多数接近中‼敵艦、主砲の照準がこっちに向けられています‼」
いっぱい来るねぇ…めちゃやばい‼
「チャフ‼6番発射管対ビームミサイル‼レーザー、CIWS起動‼撃ち落とせ‼」
本当はこの時点でもっと回避したいんだけど、今は後ろに僚艦もついているからなぁ…
近づいたらスタビライザーでぶった切るんだけど…
「敵艦発砲‼」
「バリアー‼」
「敵艦、及び敵残存戦闘機、側面に回り込もうとしています」
他の味方はまだ来ていないのか……まず僕たちをつぶそうっていうことかね?
「モスクワより通達。ネリネは右舷の敵を掃討すべし、だそうです」
「右舷は何隻だ?」
『大型艦1隻、中型艦2隻、小型艦6隻です」
左舷は中型2隻、小型8隻だからまぁ妥当かね。とりあえず、大型艦を叩くことから始めるか。
「了解したと伝えてくれ」
「分かりました」
「有次、取り舵20、上げ舵10‼広、特射砲、発射用意‼照準は敵大型艦。出力は40%で」
「了解。取り舵20、上げ舵10、ヨーソロー」
「特射砲発射体制。出力40%、照準、敵大型戦艦」
「撃てぇ‼」
[ビィィィィィ]
「敵大型戦艦小破!いまだ健在です‼」
マジかよ‼
「どうする⁉」
「上等だ!このまま突っ込む!総員、対ショック姿勢‼」
いくら出力を落としていたとはいえ、ここからの攻撃も受け付けないのか……
「艦長!前後上下左右から小型艦が突っ込んできます‼」
「回避はできるか⁉」
「ダメです‼」
「最初に来るのはどこだ?」
「側面2隻と正面‼」
突っ込ませないために自爆してでも沈没させる魂胆か……
「艦長‼衝突まであと30秒!」
どこへ逃げても敵が来る状態だなぁ。
「あと20秒‼艦長どうするんです‼」
「敵艦より攻撃‼右舷第2,3ブロックに被弾‼」
「警報出せ。大型艦の現在位置は?」
「左舷30度、俯角に10度です‼」
「あと10秒‼」
「ソードライザー最大出力‼衝突3秒前にバレルロール‼上げ舵一杯‼その間に全砲門、正面から来る敵艦へ照準!」
「了解!主砲、1番から4番、照準前面の敵艦‼」
「撃てぇ‼」
「敵小型艦大破‼」
「バレルロール完了‼」
「側面の敵2隻も撃沈です!」
「そのまま大型艦へ向かう‼全砲門照準、敵大型艦‼ギリギリまで近づけろ!」
恐らく今回の戦闘から、敵艦も大幅に強化されていると思われる。だから近づかなければ確実な撃沈は見込めない。
「敵艦まであと300‼」
「150まで近づけろ!」
「敵艦よりエネルギー反応‼でかいです‼」
「戦闘機も多数接近中!」
「戦闘機とミサイルはCIWSとレーザーで迎撃させろ! 全発射管、対ビームミサイル全弾発射‼バリアー全て前面へ!」
「了解!全弾発射!」
「バリアー、最大出力で出します‼」
「撃ってきた!」
[ヴぃぃぃぃぃ]
ひでぇ光だ。失明しかけるぞこれ。
「あかね、ダメージコントロール‼」
「火器管制異常なし!全ブロック異常なし!」
「敵艦まであと200‼」
「全砲門、大型艦に照準合わせました!」
「敵艦回避行動をとっています‼」
「逃がすな!ミサイルも全て対艦ミサイルに‼」
「了解!」
「敵まで150です‼」
「ミサイル発射!」
「発射します」
「よし、全砲門撃て‼」
[ビィィィィィ]
「敵大型艦艦撃沈!」
よっしゃぁ!
『艦長、喜ぶのはいいですが、モスクワの援護へ回ってください』
やべ、そうだな。
「回頭。取り舵一杯‼モスクワを連れて離脱する!」
「あ、他の味方の突入艦隊も確認、敵を蹴散らしています」
やっと来てくれたか……
「司令部より通達。第2艦隊は指定座標へ合流しろとのことです」
「被害状況は?」
『無人艦隊は4割が消失、無人戦闘機も6割ほどが撃墜されてます。事前予測より敵が多かったのと、AI達が艦隊と機体を動かすことになって連携が十分に取れていないことが課題ですね』
「有人艦は?」
『アジア、アメリカ艦隊でそれぞれ2隻沈没、他に大破している艦が多数います。有人の戦闘機も多数行方不明です』
無人艦隊が盾になってくれたが、決して少なくない被害だな……
「ネリネ隊は?」
『……美咲機がロストです』
うそだろ……覚悟はしていたとはいえ、空気が一気に重くなったのが肌で感じ取れる……
「本当か?」
「死亡したかまでは確認が取れない状況です。他の機体も一応ビーコンは確認できますがどうなっているのかは……」
「そうか……」
正直怖くなってきたな……本当に一瞬でどうなるのか分からなくなってしまう……
いつ死んでもおかしくないこの状況で、本当にど素人の寄せ集めで生き抜けるのだろうか……
ただでさえ勢いで大型艦を倒したが、接近しなければ倒せなかったし、もう一回撃ってこられたら恐らくこちらは一瞬で消し炭になってしまう……と考えていた時、急にiちゃんが焦りだした。
『艦長‼おかしいです‼日本地区とのリンクが途絶しました‼有線での非常通信も途絶!状況不明‼』
「何だって!」
日本地区まで墜ちたのか⁉ていうか確か日本地区を守っているのはさがみと無人艦だったはず……
「さがみとの通信は?」
『だめです。AIでの相互リンクでも途絶しています』
「司令部より通達。総員、再度の戦闘に備えよ。また、全艦隊はアメリカ地区まで戻り死守せよ、とのことです」
「日本地区が陥落したのかもしれないんだぞ⁉そこから大気圏突入とかはないのか⁉」
「それはないと思いたいわね」
あかねも隣で焦っているな……
「艦長、第二艦隊との合流が完了しました。このままアメリカ地区まで戻るそうですが、ネリネは先行して戻り、再度特射砲の強化パーツを接続し、備えよとのことです」
とりあえず今はそうするしかないか……
「反転!最大船速でアメリカ地区まで戻る!スタビライザー、ハードドライブモード‼」
「了解!180度回頭、最大船速」
「エンジン出力100%」
「スタビライザーハードドライブモード」
どこまで通じるかわからないが、強化パーツで何とかするしかないか……
「艦長、大丈夫ですかね……」
二葉が心配そうに言ってきた。色々な意味で言ってるんだろう。
「僕らが何とかしなければ人類は滅亡だ」
40年も持ちこたえたんだ。今度も何とかしなくては。
「艦長‼先ほどの宙域より新たな反応‼ワームホールです‼」
「強大なエネルギーを探知。先ほどの比にもなりません!」
『このままだとネリネも消し炭になります‼』
こんな時にかよ‼いや、こんな時だからこそか……
「エネルギーきます‼」
だめだはやすぎる‼
ちなみにいっぱい人が死んでいますが、未だに地上でも色々な問題によって死は身近なことなのですよ、この世界。




