No.055 滅茶苦茶やりたくない交戦
海賊が来たんだって。
「さて、戻るか」
ここにずっといてもいつかばれるだろうし、何よりあの艦隊が動いたら面倒なことになる。
「艦長、エンジン始動させます。少し熱が出るので気をつけないと……」
「頼む二葉」
「あ”っ……」
「…………」
「ん?」
「……大丈夫だよな⁉」
「ちょっとなんかエンジンおかしい?」
大丈夫だよなおい⁉こんなところでエンストとかほんとやめてくれよ‼
「敵には動きがないので問題なさそうです」
「エンジンも普通だよ。私の勘違いみたいですみません……」
「いや大丈夫。まぁもし壊れてもなんとかできるだろうし」
なんかそれぐらいの安心感がここにはあるからな。安心しすぎたらだめだが。
「……大丈夫そうですね」
「うん」
「二葉、さっきのことを機関班で調べてくれ。少し気になる」
なんかあったらマズイからな。
「わかりました」
「アラート戻してくれ。しばらくは大丈夫だろう」
「はい。総員、イエローアラート、レベル2です。各班、個々に休息を取ってください」
「私はちょっと行ってくる」
「僕も行くよ」
なんか気になる。
「じゃぁ私が残っておくわ」
「すまんあかね頼む」
「緋色、さっきちょっとエンジンおかしかったがどうしたんだ?」
「艦長‼二葉‼すみません。いま原因を調査中です」
分かってないのか?
「ちょっと想像がつかなくて……急に出力が爆上がりしたもんで慌てて下げたんですが」
「エネルギー入れ過ぎたの?」
「いや、それが急にすべて上がったの。私達何もしてないから何がなんだか分からなくて……」
えぇ……
「とりあえず、エンジンは異常ないです。他のところも今のところ問題がないんです」
おーん……何でなのだ。
「私ももうちょっとここに残って見てみる」
「わかった二葉。よろしく頼む」
問題なければ良いのだが。
『艦長、民間船の航路出ました』
「よし、ネリネはそのまま集合地点まで後退。進路そのまま、また何かあったら言ってくれ」
『了解しました』
さて、あとは帰るだけだな。……勉強しておかんとマズイな。
[ズドーン]
なんだ⁉攻撃されたのか‼
「孝宏‼どうした‼」
『艦長、緊急事態発生です‼本艦に未確認の艦多数接近。状況精査中です。外装パネルに直撃しました。サブエンジン3,4番小破。エンジン出力両方60%に低下』
「どこまで出せる‼」
『第4船速まで‼』
やられたな……
「IFF照合、状況把握急げ‼総員戦闘配置‼レッドアラート‼レベルも全部あげてくれ‼回避運動を取りつつ振り切れ‼」
『了解』
『総員戦闘配置。レッドアラート、レベル5』
[ビービー]
バレたのか……今まだ3分の1しか戻れていない……厳しいな……
「遅れた‼状況報告‼」
「敵は8隻‼未確認の船です‼全部小型艦‼」
『どうも敵軍ではなさそうです』
「じゃあ何だというのか?」
「多分海賊みたいなもの」
……ここ、船通らないからな。しかもこの船、比較的大きめだし。地球では最近見かけなくなったりとかして身近じゃないけど、ここらではまだいるのか。
「どうしますか?」
「振り切るのはちょっと難しそうだぞ。今は重いし色々隠されて出力低くなっているし」
「他に船は?」
「3隻いましたが避けられていますし、なんか近づこうとしている船がいましたが、一目散に逃げていきました」
おぃこんなところ見て逃げるとは何事だ。関わりたくないということなのか……えぇ……
「まぁ……あまり武装してないですからね。民間船って」
「うぉ‼」
[ズドンッ]
前からか‼まだいたのかよ……
「被害報告‼」
「ダメージコントロール‼被害は偽装パネルに掠っただけ‼」
「前方より新たに7隻接近‼小型艦6、中型艦1‼挟み撃ちにされます‼」
「回避そのまま‼どっから出てきたんだ‼」
いや、ワームホールか。
「流石にこのままは無理だな……偽装解除‼反撃する‼」
「パネルは手動で外さんとだめだ‼自動で偽装パネルは外れない‼」
やっぱ急造だからな。でもうまく出来ていたんだよなぁ……もったいない。でも沈んだらどうしようもないし。
「主砲と副砲を照準させろ。パネルをぶち抜く‼」
「わかりました。主砲全門一斉射撃。1番から4番は前方の船、5番も後方に照準させます。副砲も個々に照準。……全砲門照準完了」
「よし、全門、撃てぇい‼」
[ズドーン]
「主砲4、副砲2、直撃‼6隻轟沈です‼他の艦は依然として攻撃してきています」
「回避そのまま‼次弾照準‼」
「完了しています‼」
「よし撃てぇい‼」
[ズドーン]
「敵艦バリアー展開‼ですが1隻さらに撃沈、もう1隻大破です」
「敵を抜かします」
「このまま逃げる?」
どうしよう……あまりこんなところでドンパチしたくないんだけれどもな……滅茶苦茶。
「敵の反撃は?」
「まだあります」
「振り切りつつ反撃してくれ」
「敵1隻さらに撃沈。残り6隻です」
「まもなく主砲射程圏外になります」
なんとか振り切れたか……
「よし、各班被害報告」
「全て被害ありません」
なら良いんだが。
「進路そのまま。最大船速‼エーデルワイスに緊急連絡してくれ」
「良いんですか?」
「いや、もうこんな格好をしている時点でやばい船だし多分こんなにドンパチしたせいで軍も気づいていると思う」
「だろうねぇ……」
「集合地点まであとどれくらいだ?」
「あと半分ほどです」
「途中で交戦する可能性もある。すまんが警戒態勢は維持で」
「あと2日ですか……」
きついなぁ……
「わかりました。各班に通達、アラートをそのまま、レベル3に移行してください」
「民間船の航路からも離脱してくれ。こんなところにいると目立ってしまう」
「そりゃそうだな」
「エーデルワイスより通信、ネリネはそのまま集合地点まで後退。近くまで来て交戦状態に入ったときはエーデルワイスも動いてくれるそうです」
それはありがたいけど……
「そこまで保てるかだな……」
「そこはもう神に祈るしか無いですね」
「とりあえず、しばらくは気を緩めることが出来ないな……」
「そうですね」
「艦長、メカニック班から連絡です」
なんだ?
『あのぉ……』
「どうした白美?」
『やっぱりこっち来てもらっていいですか?』
「おぉ」
何なんだ?
「ちょっと行ってくる」
「行ってら〜」
「どうしたんだ?」
「……ごめんなさいっ‼」
おーん……思いっきり頭を下げられた。何がどうなってそうなった。
「何に謝れているのかがよくわからないんだが……」
「エンジン少し不調になったことがありましたよね?」
「あぁ」
あっ……まさか。
「なにかしたのか?」
「うん……」
「実はあの時ある実験をしていました」
「あの艦長から借りていたペンダントにエネルギーを与えていました」
「……なぜに?」
「実はあれの解析をしていたんですよ」
うん。
「あれ、うちの船で使われているMN超合金の物質です」
えっ……
「でも全く違うものです」
「どういうこと……」
その物質なのに違うものって……
「MN超合金って色々な物質が混ざっていますよね?」
「あぁ」
「その中で1つ、この地球の物質ではないものがあります」
「そうだな」
その1つがMN超合金の要、今こうやってスタビライザーで色々できるのはその宇宙からの物質だ。何でそんな事ができるのか、どのようなものかが分かっていない謎のものだがな。そして、その物質はそのままでは使うことが出来ない。地球の技術では純物質のままで崩壊してしまう。
「そのまさかの純物質のままのやつです。このペンダント」
えぇぇぇ……
「私もびっくりして……どこでこんなもの拾ってきたんですか?」
「父さんから貰ったものだが……」
父さん何拾ってきたんだよ。
「それでエネルギーを与えたら予想以上で……」
「エネルギーを与えたらエンジンからスタビライザーまですべてに影響を……」
「まぁじゃあ不調の原因は……」
「そういうことです」
「申し訳ありません」
まぁ……仕方ないですとは言えないが……仕方ないか。
「まぁ仕方なくはないとは言え、まずは機関班に謝ってきてくれ。それとペンダントは一応僕に返してもらえるか?」
「わかりました」
まぁ……原因はわかったけど、どないなってんねんこのペンダントは……
「なんですかそれ?」
「二葉か。父さんからもらったペンダント」
「あっ‼それ‼」
「どうしたんだ孝宏?」
「あ、いえ、なんか見覚えあるなと思ったんですけど勘違いみたいです」
そうかぁ……やっぱこのペンダント不思議だわ。
特になし‼




