No.053 敵の星
敵の星を調査するんだって。
「艦長、レーダーに敵影あり。距離4000、小型戦闘艦です。数は3隻。恐らく防衛艦隊です」
「よし、小惑星帯に隠れろ。エンジン停止、急速冷却。スタビライザー格納」
「了解。小惑星帯に進路変更」
「エンジン停止、スタビライザー停止、収納します」
「エーデルワイスとフローレスは?」
「それぞれ隠れました」
「よし」
これで8回目か。1日に1回以上は遭遇するな。時間も様々だから気が抜けないな。
「……どうだ?」
「通り過ぎて行ってくれたみたいです」
「そうか」
「意外と楽勝やな」
それはそうだな。でも逆にこんなところで見つかったら助けてくれる船はエーデルワイスとフローレスだけだから、気をつけないと。
「多分こんなところまでやってくるとは想像がつかないのかもしれないな」
「敵にとっては想定外の事態ということですか」
「たぶんな」
「それはラッキーだな」
「その代わり、見つかったら僕ら相手に過剰戦力投入されそうだな」
慌てて手隙の艦隊を全部持ってこられそう。
「やめてぇや……」
そうだな。そんなもん持ってこられたらたまったもんじゃない。
「それでいつまで進むつもりなんですか?」
「そうだな……」
隼華さんに聞いてみるかぁ。
「そうね、できれば敵の本拠地と、残存戦力を見ておきたいわ」
「ということはもっと近づくのですか?」
「そういうことになるわね。でもあくまで可能ならの話なので、危険を感じたら撤退しても良いそうよ。ワームホールから出て、居住可能な惑星を調べられただけで、最低限の任務は完了しているし、それだけでも十分な成果だしね」
「分かりました」
「このこと、レイザさんにも伝えておいてくださいね?」
隼華さんが伝えてくれよ。
「あなたのほうが、レイザさんとも気兼ねなく話せるし、状況とか正直に話してくださるでしょ?」
あいつ遠慮し無さそうだがな。
「分かりました。」
「というわけで、我らネリネが先に斥候として調査をすることになったよ。エーデルワイスとフローレスはここで詳しく調査をしていくそうだ。目標としては敵の本拠地、軍事基地の調査とストレンジャーの残存戦力を見ることだそうだ」
「それは難解ですね……一応最低限の目標は達成されたのでしょうけど、恐らくあなたのお父様より上の意向もあるからもっと詳しく見なければいけないでしょうね……」
上からの圧力か。やだなぁ……
「まぁ分かりましたわ。私達よりあなたのほうが危険だと思うけど……」
1隻で知らんところに送り込まれるからな……
「この任務終わったらフローレスに顔出してくださいね?」
うん、前向きに検討はしておこう。
レイザと話したあと、特に何が起きるというわけでもなく、当直をこなし、たまに来る敵をやり過ごし、勉強も進めながら先へ進むという日々を送ること数日。
「あれがそうなのか?」
「あれがそうですね」
「あれなのかぁ」
「あれっすか」
「……なんか、寂れてない?」
来てみるとそこは明かりがあるが、暗ぐらとした星であった。
「本当にここに人が住んでいるのか?」
「はい。反応もありますし、何より……ほら、船が行き来している」
『艦長、新たな星の反応。あと3つあります。しかし、どれも半分機械のような星ですね』
半分機械?どういうことだ?
『おそらく、元々は住めるような星ではなかったものを、無理やり住めるようにしたのが、古くなってきてしまってああなってしまっているんでしょうかね?』
「そんなこと出来るの?」
「母星がなければですが……その母星が破壊されていますね。今は辛うじて天体としての機能が維持されていますが」
何で破壊されてんの?
「さぁ?ですがその影響でだいぶ改変が起こってしまっているようですね」
「現在位置は?」
『その4つの惑星の1番外側ですね』
にしてもガバガバだな……いくらこちらが半分ステルスのような状態でコソコソと動いているとは言え、全く探知されていないぞ。
「まあ幾つかの防衛ラインは突破できなかったから回り道とかしましたけどね」
「これ探知されているけど泳がされているとか無いよな?」
それだったら最悪だな。
「まあ、そうじゃないことを祈るか。それじゃあ、他の星もまわっていくか」
「そうですね。フローレスとエーデルワイスにも連絡します」
「ああ」
今は3隻で別々の行動をしている。と言うのも、我らネリネが高性能すぎるから、僕らが斥候みたいな感じで簡単な調査を中心近くまで、あとの2隻はワームホールの出口で詳しく調査をするという方法を取っている。
「一応僕らはその破壊されている母星付近まで行って調査をするか」
このまま行けたらの話だけど。
『そこまでの最適ルートを調べます』
「頼むIちゃん」
あまり深くまで行かないほうが良さそうだが、気になる。まだ部隊がいるとしたら一大事だし、人類以外が住んでいる星を見るなんて、多分僕らが初めてだろうし。
「おーん……」
「これは無理ですね」
「だな。流石に星の近くになってくると警備はすごくなるな。何なら軍じゃない非武装の船もたくさんいそうだし」
「防衛能力は非常に高度。これはダメだし、そもそもどこから手を付けて良いのか……」
まあ僕ら地球の技術とは全く違うだろうし。無理もないか。
『活動はこちらではなく反対側が数百倍活発ですね』
「やっぱり内側に向けて活発なんだな……」
「そうですね。こっちには需要がありませんし」
「艦長、こちらにパトロール艦3隻が接近中。会敵まであと15分」
「よし、偽装しろ。機関停止、急速冷却。ダミー隕石散布、スタビライザー収納。全艦、戦闘配置。レッドアラート、レベル5」
[ビービー]
「了解。総員に通達。レッドアラート発令、レベル5」
「艦長、どうせなら偽装させて民間船みたいにしたら良いんじゃない?」
できるのかそんなもん……
「砲門とかどうするの?と言うか見慣れない船を見たら怪しまれるんじゃないの?」
『あちらの民間船のデータを解析してみます』
おいおいおいおい……
「一応調査はしておいてくれ。でも隼華さんに確認してみる」
あまり行きたくはないな。危険だし。最初はこちらの新たな秘策を使おうと思っていたんだがな。
「艦長、防衛艦隊は通り過ぎました」
「そのまま待機、イエローアラート、レベル3」
「分かりました」
「僕は艦長室に戻る。あとは頼む」
「分かった」
ふぅ……隼華さんに相談してみるかぁ。
「隼華さん。こんな風に言っておりますが」
『……危険だわねぇ。あなたはどうするの?』
「やれば様々な情報がわかりますが、あまりにも危険すぎますね」
「そう……いま私達2隻で詳しく調査しているけど、あまり情報が無いのよ』
まあここらへんはあまり無いしな。
「とりあえず、艦長として最終判断したら報告します」
『分かったわ』
「艦長、偽装工作完了しました」
う〜ん……民間船だな。何でこんな風になっているんだ⁉ちょっとカクカクしすぎだが。ストレンジャーの船は全体的に丸みを帯びたデザインの船が多い。たまに角ばっているのもいるが。
「うん。すごいのはわかった。でもどうやってこんな風……」
下側は砲門を収納できるから良いとして、上側には何か……金属?布を覆いかぶせて貨物船的な感じにしているのか……
「頑張りました」
『艦長ちゃうで広海ちゃんじゃなくてうちらが頑張ったんやで』
「メカニック班達か。ありがとう」
広海は何言うてんねん……
『いやこれくらい何でも無いわよ〜』
う〜ん……ここまで完璧なら行くしかないか。考えはあるし、無駄死にだけはしないように気をつけないと。
あけましておめでとうございます。今年をよろしくお願いします。
(誤字報告ありがとうございます!)




