No.051 ワームホールの先へ
ワームホールに突入したんだって。
「艦長、機関始動。発進準備よろし」
「……二葉と孝宏はもう大丈夫なのか?」
「はい。もう大丈夫です」
「ずっと寝込むわけにはいかないですし」
ちょっとまだ疲れが残っていそうだけど……
「……分かった、ネリネ発進。さがみとのドッキング解除してくれ。取舵40、上げ舵30。フローレスとともに、エーデルワイスとの合流ポイントへ向かう」
「了解。ドッキング解除します」
「ドッキング解除10秒後、取舵20、上げ舵30。目標、エーデルワイス」
「エンジン全開、フローレスとリンクします」
「頼む」
「さがみより通信、貴官の健闘を祈る、とのことです」
「分かった。総員、イエローアラート、レベル4を維持してくれ」
「了解しました。総員に通達、イエローアラート発令。レベル4です」
「機関、フローレスとリンクします。スタビライザーも協調運動を取らせます」
「エーデルワイスとの接触まであと52分」
「フローレスより入電。本艦は貴官の指示に従う。、とのことです」
「分かった。じゃあ各員、最終チェックをしておいてくれ」
「了解‼」
「レーダーに艦あり。IFF識別、エーデルワイスです」
「よし、エーデルワイスに連絡してくれ」
「了解」
にしても3隻だけの艦隊って寂しいな。でもバリアー使えるのは僕らだけだし。
……なんかエーデルワイス長くなってないか?エーデルワイスを目視しているとそんなふうに感じる。
「ブースターが付けられていますね」
「いかにも強引に付けました的な感じだね……」
まあ、大丈夫でしょう‼なんかちょっと頼り無さそうで怖いけど。
「エーデルワイスより連絡です。艦長はエーデルワイスに来てくれとのことです」
「分かった。あかね、ここを頼む」
「分かった‼」
「行ってらっしゃい‼」
「気をつけて行って下さい」
「またレイザ様に連れて行かれないようにしてくださいね?」
「分かってるよ」
別に危険な場所に行くわけではないのだがな。
『艦長、フローレスの飛行隊より着陸許可が求められています』
「おーん……」
なんか嫌な予感がするんだが……
「……カタパルト展開させて」
『分かりました。1番カタパルト展開させます』
「これは連絡が来なくても分かるな」
『どうせレイザ様が乗り込んでくるんでしょうね』
でしょうね。分かりますよ。
「まぁ、行ってくるわ」
『はーい』
「優木さ〜ん‼やっぱり連絡しなくても来てくれましたね‼」
一報入れてくれよ……マジで。
「ここに乗って下さい‼」
「お断りいたします」
「即答‼」
だってそんなんまたなんか言われるじゃん‼
「でもそこ以外無いんだよ?パイロット席は私の執事がやっていますから」
えぇ……
「ちなみにそこの執事も女性なのでナンパするの、やめてくださいね?」
「お久しぶりです。好井艦長」
パワースーツ来ていてわからないけど声の感じからしてフローレス行った時に案内してくれた人だな。
「お久しぶりです」
「じゃあ後ろに座って下さい」
「分かりました」
ちなみにパイロット席は狭い。2人はマジで窮屈だ。
「あの……なんかごめん、レイザ」
「何がです?」
だってこんな窮屈なんだもん‼申し訳無さとそっちが誘ってきたんだろうという感じだが、若干申し訳無さが勝っている。
「別にいいですよ?」
「レイザ様、好井艦長、まもなくエーデルワイスです」
「わかったわ」
「ありがとうございます」
「好井副司令、入ります」
「レイザ・フローレス、失礼します」
「はい、どうぞ」
「隼華さん、こんにちは」
「お久しぶりです」
「お久しぶりね、2人共」
「はい。それで任務についてですか?」
「うん。とりあえず最長90日の任務になる予定だわ。やるべきことは内部の調査と、敵の本拠地、ワームホールの航行中の支障等についてですね」
「分かりました」
「分かりましたが、そんなことのために出したんですか?」
「知らないわよ。でも、使えるようになったら自由に移動できるかもしれないからね」
この後のことか。……終わるのかな?
「とりあえず、ワームホール突入は30分後に設定するわ。各艦とも最終チェックを急がせて?」
「「了解」」
「ネリネ隊各員に通達する‼本艦は20分後、スタビライザー、バリアーモード最大出力でワームホールへの突入を敢行する。各員とも最終チェックを急いでくれ。飛行隊はネリネのワームホール突入後、安全が確認されたら2機でローテーションを組んでネリネの護衛を頼む。確認できなければでなくて良い‼」
死なれるのだけは絶対に嫌だからな。
「優木、了解した」
「優木、発進5分前」
「分かった。孝宏、各班安全確認を行ったら副長に報告してくれ」
「了解しました。オペレーターより各班へ、ネリネ発進5分前です。安全確認を行い次第、報告して下さい」
「ブリッジ各員、最終チェック」
「艦長、ネリネのシステム、異常ありません」
「操舵問題なし。いつでも発進できます」
「機関、出力安定。スタビライザー、正常に稼働中」
「各砲門、異常ありません」
「優木、各班異常なし。大丈夫」
「ありがとう、あかね、孝宏。よし、ネリネ、エーデルワイス発進後、エンジン最大、スタビライザーバリアーモード、最大出力。目標、ワームホール内部及び、出口」
「了解。ネリネ、エンジン最大出力」
「スタビライザー、バリアーモードで最大出力」
「進路そのまま、ワームホール入口へ向かいます」
「エーデルワイス、発進しました」
「よし、ネリネ、発進‼」
「発進します」
「後続のフローレスも発進しました」
「エーデルワイス、エネルギー上昇、特射砲発射します」
「ワームホール入り口、開きました‼エーデルワイス、突入‼」
「よし、ネリネも突入してくれ‼」
「了解‼」
「突入完了、通信は外とは繋げませんね」
『ただいま広範囲レーダーで周辺をスキャン中。……艦長、近距離レーダーしか使えないです』
まじか……中には入ったら使えないというのかよ。
「艦長、エーデルワイス、フローレス、両艦とも突入を確認。全艦異常無しです」
「中とはいってもちょっと明るくなったような気がするけどあまり変わら無さそうだね」
「でも下手に出たらよく分からんところにほっぽり出されるんだろうなぁ……」
「それはやだなぁ……」
「とりあえず、周辺に異常はないな?」
『はい。周辺をスキャンした地図を表示します。一応危険なところはありますが、基本的には問題ありません』
「分かった。ありがとう。よし、ネリネ、イエローアラート‼レベル4‼飛行隊、1組目、発進準備‼」
「了解。総員に通達。本艦はこれよりイエローアラート、レベル4。飛行隊、発進準備をお願いします」
多分大丈夫だとは思うんだけどなぁ……怖いし他の船からも出るみたいだし。
「カタパルト展開完了、サポートアーム、接続。……発進用格納庫、展開。システムオールグリーン。……進路クリアー、発進、どうぞ」
「出たのは誰だ?」
「宗光さんと幸さんです」
2人か。ならまあ大丈夫だろう。
「引き続き、2時間後まで警戒態勢を厳としてくれ。2時間後、当直で交代させながら調査を続ける」
「了解‼」
あとは、前に広海と矢一から聞いた件をレイザに報告だな。
「どうされましたか?優木さん」
「いや、レイザに頼まれていた件の経過報告をしようと思って」
「分かりました。それで?」
「とりあえず、てんりゅうの坏土艦長は、アメリカ地区のヘラン・ビルトライト中将と密接に話しているらしい。艦長への推薦やクルーもその人の後ろ盾があったのかもしれません。それと、副長のほうは色々な人に指示をしているみたい」
時間がない中でよくもまあ調べられたもんだ。
「分かりました。アメリカ地区ですか……こちらでも少し調べてみます。こちらの情報としては過激派はおそらく裏で根強く残っているものと思われます。優木さんの情報から日本地区だけでなく、他の地区にもいるんでしょうね」
ということはレイザ達ヨーロッパ地区も、他の地区にもいるということか。
「残念ながらそうなりますね」
……僕ら高校生なのにこんな事情に付き合って良いんかな?もう遅いのか。




