No.048 調査隊結成とクルーたちの出発前
こんなの死にに行けと言ってるようなものでしょ。
「艦長、フローレス、修理完了です。こちらとさがみをドッキングさせます」
「そうしてくれ。救助者の退艦状況は?」
「65%完了しています。今はさつきへの移乗作業中です」
「分かった。引き続き作業を続けてくれ」
『さがみより通信。モニターに出します』
『艦長、新たな任務のために必要な装備を取り付けるから、ちょっと時間がかかるで。早くて4時間で修理はすべて終わると思う』
「ありがとうございます。よろしくおねがいします」
『うん。超特急で終わらちゃうからそこまで休めないだろうけどしばらくは暇にしていて大丈夫だと思う。後でどこを変えたのかとか報告するね』
「分かりました」
『艦長、司令本部より連絡です。エーデルワイス、ネリネ、フローレスの艦長は、司令本部に出頭せよとのことです。ネリネとフローレスの艦長は、さつきに乗って下さい』
マジか……
「分かった。あかね‼ネリネは任せた。さがみから来たらあかねが応対してくれ。僕はさつきに行く」
司令本部は調査隊の件だろうな。
「隼華さん‼」
「あら‼優木くん‼久しぶりね‼」
「そちらこそ‼」
久しぶり?に隼華さんを見たけど元気そうで何より。
「それでそちらがレイザ様?」
「はい。レイザ・フローレスです。エーデルワイスの植木艦長ですよね?はじめまして」
「いえ、こちらこそはじめまして。あなたのことは存じ上げております。……じゃあ会議室に行きますか」
さてどんな事を言われるのか。
「植木隼華少佐、入ります」
「好井優木少佐、入ります。」「レイザ・フローレス、失礼いたします。」「3人ともご苦労だった。そこに座ってくれ」
「さて、事前に聞いているので最初から説明はいらないと思うが、本部より通達があって君たちには独立調査部隊としてワームホールに入ってくれということらしい。詳しくはそこの紙に書いてある」
……紙なんてまだ使うんだ。
「まず、今回は実際に入ってワームホール内の状況についての調査、できれば出口も探し出してほしい」
「……出口に出てきたら敵の本拠地とか無いですよね?」
「……有り得る話だな。その時は尻尾を巻いてさっさと帰ってきてくれても構わん」
帰れたらね……
「とりあえず、3隻だけだが調査部隊として立派な隊だ。エーデルワイスには独立部隊の司令になってもらう」
「了解しました」
「あとは3人で上手く役回りを決めてくれ。それと、ネリネ」
「はい」
「ネリネ隊は全員ちゃんと勉強もすること。最近色々あってできていないのは分かるが、時間を決めて少しづつでも進めなさい。一応高校生なんだから」
「はい……」
すっかり忘れてた。最近は戦闘とかずっと哨戒をしていて気が抜けないことが多かったから全然してなかった……
「おそらくワームホールに入ったら通信が困難な状況になるだろう。しかしこちらは船が圧倒的に無くなってしまって救出はほぼ不可能になってしまっている。すまないが、基本的に自分たちの判断が強いられると思うが、頑張ってくれたまえ。私からは以上だ」
「「「はい」」」
さて、お仕事の時間だぁ……
〜出発前のネリネクルー〜
【艦橋班】
「ふぅ……」
「どうしたの?あかね。お茶でもどうぞ」
「ありがとう、広。いや、優木っていつもこんな大役やっているんだなぁって……」
今艦橋には私と広の2人で当直に当たっている。いつもは孝宏君と二葉ちゃんもいるけど2人共体調不良だからね……
「すごいよね……普通に尊敬するよね」
「まあ優木は大の乗り物好きだしアニメ好きだからね。そりゃちょっとは知識があるんだろうけど……」
「でも何でも万能だよね。あの人」
「運動能力はさして良くもなく悪くもなくだけど、体力と反射神経は断トツなんだよね」
本当に……怒らせると怖いし。
「どうしたらあそこまで出来るんだろう?」
「さぁね……でも妹のしずかちゃんのほうが全部上だけどね」
「兄妹揃ってすごい……」
「あの2人はどちらも好いているからね。特にしずかちゃんは本当に優木のことが好きだからね」
「そうなんだ」
「……だからこそ、この事を知られたら優木どうなるかな……?ついでに優木のお父さんも……」
説教は間違いないわね……いや、それだけで済むかな……
「まああの人のことだから大丈夫……では無さそう」
「まあその時は私と宗光で救出か」
「何か優木さんって威厳があるのか無いのか」
「無いわね。でも優柔不断なところはあるけどちゃんとするときはしてくれるし、何より私たちのことも第一に考えてくれるからね」
そういう所が良いのよね……優木は。
「フォローをすれば最強になるのか」
「そうね」
「まあ、あの人だったら何かと生き抜くことができそうだね」
「何回も助けられたからね。私と宗光は」
「中学生の時のやんちゃか」
「あはは……」
「とりあえず、自分たちで流されずに行動できるようにはなりたいね」
「そうだね……」
【飛行隊】
「宗光さん、もう歩いて大丈夫なの?」
「ああ。迷惑かけたな、幸」
「本当に心配したんだから……」
「今は最新技術があるからな。そこそこの傷でも直せる。まあ、梨奈のおかげだがな」
本当に死にかけだったらしいからな。優木が助けてくれなければ、梨奈が頑張ってくれなければ死んでいたらしい。そんな傷でもすぐに回復できるのは、技術の進歩だな。
「新しい戦闘機、来ましたね」
「うん。しかも優木が乗ったのと同じで翼に特殊合金が使われている」
「これでまた戦うのかぁ……」
格納庫には真っさらな機体が6機、留め置かれていた。いや、予備も合わせるともうちょっとか。あと優木のオリジナルと合わせると。
「それにしても艦長の技術は凄かったですね。いくらあの時あの戦闘機を使ったと言えども、戦果がすごい」
「俺たちも見習わんとな」
「そうですね」
あいつはそういう系はマジで得意だからな。普通に尊敬する。
「宗光さん。……これ終わったら地上、一緒に行きましょうね?」
「そりゃもちろん」
【メカニック班】
「白美‼最新の機種が届いたは良いけど、部品がちょっと少なくないか⁉」
「マジで⁉じゃあちょっと尋也はそれについて調べて‼」
「分かった‼」
私たちは戦闘には参加しないけど、戦闘前や戦闘後、いや戦闘中もたまにか、そういう時に修理などをするための班だ。今回は優木に乗ってもらった、レオパルドの改造機が評価されて、限定配備ではあるがこちらに新型が送られてきた。と言ってもレオパルドの改修型であって、翼ぐらいしか変わってないけど。あとは一定程度改造や新たな試作機を作ることを正式に許可されたので、その資材も送られてきた。これも優木が好きに改造していいよ、と言ってくれてあれを作れたから、認められたことだ。優木には本当に感謝しないと。
「白美‼戦闘機の方は稼働状態に入れるぞ‼ジェネレーターは前と同じだけど、特殊装甲からもエネルギーが発せられるから、出力は以前よりも上がっている」
「ありがとう、大和。じゃあ後はIちゃんのミニホログラムを設置する工事をしておいて‼」
「分かった‼零也としておく‼」
これで戦闘機は一段落するね……ネリネ本体も今回はだいぶ損傷したが、さがみの人たちのおかげでほとんど直った。これでしばらくは大丈夫かな……
【機関班】
「緋色、戻ったよ‼」
「おかえりななみ。艦橋はどうだった?」
「いやぁ、賑やかで飽きないね」
「まぁここは二人しかいないからな……」
「まぁでも緋色くんがいるし?ここには」
「そう言われてありがたいこった」
「エンジンはメインエンジンにブースターが付けられたね」
「まあでも長距離航行用ではなく、地球圏から出るためのものだから本来の用途ではないけど」
「まあ、様々な環境に対応できるようにというネリネの方針にはあっているんじゃない?」
「そうだな……」
「とりあえず、エンジンをぶっ壊さないようにしないとね」
「そりゃもちろんだ。ななみと2人でいれば大丈夫だろ」
「そりゃもちろん」
【補給班】
「ものはこれで全て良いかな」
補給班は調理だけかと思われがちだが、意外とそこそこ仕事がある。生活用品から食料、娯楽、その他ほかの班からの要請に従って様々な物資を仕入れてきたり、常に切らさないようにしている。
「今回は長丁場になりそうですね」
「香苗ちゃんか。そうだね。ここまで詰め込むのは初めてだね」
何と言っても、量にしたら4,5ヶ月分の物資を詰め込んだからな。ネリネには一応最大で7ヶ月近く無補給で動かせるようにはなっている。これは野菜室とかという実際に栽培できるところが備わっているからだ。このおかげで上手く調節できればずっと新鮮な野菜を栽培できる。
「とりあえずしばらくは大丈夫そうですね」
「うん」
【看護班】
「……救助した人がいなくなったのは良いが、カルテを作るのに何でこうも忙しいんだ……」




