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No.047 お茶会

ちょっと長め。


レイザ様のところでお茶会という名の何かをしたんだって。

「艦長、カタパルトは使えないのでそのまま発進して下さい」

「分かった。ななみ、出るぞ?」

「分かりました。どうぞ」


「ななみは大丈夫なのか?」

「何がですか?」

「この状況のこと。自分たちのこれからのこととか」

 今起きていることで精一杯だけどよくよく考えたら普通は僕ら今は夏休み間近で高校生活を楽しんでるはずだったんだよな。それがいきなりこんな事になって、おかしくなってしまっているからな。多分これからも普通の生活は送ることは出来ないだろう。

「考えたら私たちおかしいですよね。でも今のことを受け入れなければ前に進めないじゃないですか。しかも私たちがこう出会えたのもなにかの縁ですし」

 やっぱりポジティブだな……

「……そうか。なら良いのだが」


「でも、実感は沸かないですけど戦争って人殺しをしていますからね。私たちのせいで何人の敵が死んでしまったのか……あの人達にも生活があるでしょうに」

「そうだな……ボタン一つ押して殺しているからそれほどだけど、人殺しのための武器だからな。戦艦も極端な話僕らも」

「自分たちが死なないため、と言えれば楽なんですけどね」

「対話ができれば良いのだがな……」

『艦長、お話し中すみません。iです。まもなくパウエルです。管制の指示に従って下さい、コード表示します』

「ありがとう。ななみ、パウエルに着くぞ。後ろのコンテナはパウエルに置いていくから」

「分かった」



『パウエルより、接近中の戦闘機へ。所属と名前を言って下さい』

「こちらはネリネ隊0番機、ネリネ艦長、好井優木だ。後ろに乗せているのは隠岐ななみ、コンテナとともにそちらに引き渡したい」

『確認しました。2番格納庫より侵入して下さい』

「了解。送り届けたあとすぐに発艦させてもらう」

『了解しました』

「じゃあななみ、よろしく頼む。何かあったらすぐに連絡してくれ」

「分かった‼艦長は相手の流れに惑わされないでくださいね?」

「分かったから……」

「お願いしますよ?帰ったら尋問しますからね?」

 怖いなぁ……絶対に気をつけよう……それが自分のためだ。そうだよな⁉そんなことを思っていると、フローレスに来てしまった。



「ようこそお越しくださいました、好井様。レイザ様がお待ちしております」

「ありがとうございます」

 さぁてフローレスに来たぞ。何も起こらないことを願おう……まぁ友軍艦に来たぐらいでは何も起こらないよね⁉

 フローレスに乗っていて気づいたことがある。……圧倒的に女性が多いことだ。9対1ぐらいじゃないのかな?ちなみにいま案内してもらっている人も女性だ。しかも若い。

「失礼ですが、この船って殆どのクルーが女性ですよね?」

 ていうかよくよく考えたら男性クルーって他の沈没した乗組員じゃね……どうなってんだ。

「あぁ……まぁここの乗組員は昔から教育を受けている乗組員ですが、レイザ様と亡きフォリア様のご意向により、乗組員は全員女性となっております」

 大丈夫なのかそれ……でも他の船のことには口出しはできないな。

「私たちはフローレス家によって、レイザ様によって救われた者たちが多いのです。日本では世界大戦後、戦争は殆どなくなっておりましたが、戦争後もヨーロッパでは内戦が残っていました。そのせいでホームレスなどの子どもたちが跡を絶たなかったのです。しかし、レイザ様が私たちを救ってくだりました。なので我らはずっとお側にいるために、訓練を受けてここにいるのです」

 めっちゃ目がキラキラしてる。忠誠心が高いなあ……貴族って40年前の戦争で政治からは手を引いたけど、あらゆるところで影響力を残しているらしいからな。



「レイザ様、好井様をお連れしました」

「お入りなさい」

 豪華な扉だなぁ……キンキラキンだ。

「ゆ、う、き、さ、ま〜‼」

 何か突っ込んできた……避けるか。

「ちょっと‼何避けているんですか‼」

 壁にぶつかった。おでこに手を当ててふくれっ面している。滅茶苦茶可愛いけど痛いだろうなぁ……

「好井様、ここにおられるのは当主ですよ?何かあればどうするのですか?ぶっ殺しますよ?」

 お付きの人に怒られてしまった。こわい。

「すみません。反射的に……」

 避けるかとはいったが、反射的には本当だ。

「まぁ、今回は良しとしましょう。次はちゃんと受け止めてくださいね?」

 やだなぁ……


「まあそちらにお座り下さい」

 そうレイザが言うと、お付きの人が椅子を出してきた。

「ありがとうございます。失礼します」

「今日は紅茶とサンドウィッチ、スコーン、ペストリーですわ。どれも私の屋敷で取れるものを使用したものですの」

 豪華だな……いい匂いが漂ってくる。

「こちらにジャムとクリームもございます。ナイフでご自由にスコーンにお塗り下さい」

 スコーンってパンと同じって聞いたことあるな。そのためのものか。

「ありがとうございます」

「ではどうぞごゆっくり。私は失礼させていただきます」

 おいおい2人だけになってしまったぞ……


「今日は別に本格的なお茶会でもないですし、それほど作法には気をつけなくて結構ですわ。2人だけの密会ですし」

 それはありがたい。貴族社会なんて全然知らないからな。でも言い方……

「それじゃあ、お茶を入れさせてもらいますわ!」

 えっ?そう言うと、つかつかとポットを持って歩いてきた。

「お茶会は主催者がお客様をおもてなしするものなの。だからおかわりをするときも私のところに持ってきて入れてもらうのよ?」

 そうなんや……

「どうせなら膝の上に乗って良いかしら?」

「それはやめてくださいマジで死にます」

 この後尋問があるというのにボロが出たら絶対にまずい。

「あら、今日は仕方ありませんね。次にしましょう」

 次もやるのかよ。



「さて、ここからは真面目なお話でもしましょうか」

 急に真面目な雰囲気になったな。

「真面目な話とは?」

「定期的にこういうお茶会に来てもらいたいのです」

「……それのどこが真面目なのですか?」

「敬語じゃなくていいですわよ?あなたに日本地区の状況とか内部事情について教えてもらったり、こちらから調査依頼したりさせていただきたいのです。……まぁ、あなたと会いたいのも理由の1つですが」

 おい。でも何となくは分かったぞ。要するに定期的にお互いの情報を交換したいということだよな。……貴族の世界では普通なんだろうな。だから他地区の状況を知りたいということもあるのだろうけど、15歳でそんな事をするんだな……そうやって貴族として生き残っていくんだろうなぁ。

「こちらはそれで何の得になりますか?」

「私たちヨーロッパ地区の情報をお渡しいたします。あとこちらは貴族の力を使って調査もしてあげますわ」

 これは勝手にして良いのだろうか?あっちは基本的に司令官は建前だから勝手に行動しても良いんだろうけど、こちらはちゃんと上の指示に従わなければならないからな……でもこういうパイプは持っておいたほうが良いって映画とかアニメでもそんな感じだし。

「分かった。良いよ。他になにかあるか?ていってもこちらはあまり権限がないからどこまで役に立てるかわからなけど」

 僕はまだ1番下っ端だからな……いくら階級が少佐と言えど。まだまだだからな。

「まぁそこは調査できる範囲でいいですわよ?まあ対等でなければあなたで払ってもらえれば……ふふふ」

 受けてよかったんか⁉これ……


「とりあえずですが、てんりゅうの艦長は知っておりますか?」

 あの人達か。

「知っているよ?坏土艦長と、平戸副長だね」

「その人達に思うところはありますか?」

 ありまくる。

「いっぱいあるよ……特に平戸副長。あの人何かとこちらのことに口を出してくるし、どちらも任務のこととかこっちの言うことを聞けとかうるさいんだもん。最初は坏土艦長はましなのかと思ったけど、あれは上辺だけだね。中身は腹黒いと思うよ。それと……」

 あの2人なにか隠しているんだよな……というかあの船全体で。


「あの船は少し危険な感じがする。何か隠していそう」

「そうですか……他に思うところは?」

 そう言えばお父さんも言っていたな。

「そういえば僕のお父さん……好井司令にもあの船には気をつけろって言われた」

「……優木さんは過激派というものをご存知ですか?」

 何だそれ?見るからにヤバそうな感じがするのだが。

「聞いたこと無いな」

「昔に宇宙軍にあった派閥です。今はもう粛清にあったと聞きましたが」

「そんなものがあったんだ……」

「私も詳しくは聞いていませんが、地球が宇宙の覇者になるという思想の持ち主たちで集まった派閥らしいです」

 何でそんなもんが生まれるんだよ……でも宇宙軍の人って良くも悪くも癖が強い人が配属されるからな……


「そこで、てんりゅうを調べてもらいたいのです」

 日本地区軍で1番怪しい船って言ったらそこだもんな……

「どういう事を調べればいいの?」

「てんりゅうの動向と、これまでの記録です。それと……」

 レイザが滅茶苦茶言いづらそうな顔をしている。かわいい……

「何でも言ってくれていいぞ?」

「先の補給基地への攻撃がありましたよね?」

 レイザのお父様が亡くなったやつか。

「疑り深いだけかもしれないのですが、最後に旧フローレスの沈没を見たのはてんりゅうでしたよね?」

「そうだな。……もしかしたら見殺しかそれとも……」

「分かりませんがもしてんりゅうが過激派なら排除対象として撃沈されてしまったのかもしれないと思うのです」


 ……考えすぎかも知れないが、それでもこの子は父さんが死んでしまっているからな。

「分かった。こちらで調べてみよう」

「私はそれがお願いですわ。優木さんは何かありますか?」

 何かあるって言われてもなぁ……

「私を差し上げましょうか⁉」

 スススって近づいてくるな……

「いやそれは大丈夫です」

「えぇ〜……私は優良物件なのですよ?」

「そう言われてもなぁ……今のところはないし、その調査は僕も気になるからお願いと言えど、共同で良いんじゃない?……過激派を調べてくれないかな?過去にどんな事をしていたのかとか」

「まあ分かりましたわ。……お口にクリームが!」

「ちょぉっ‼」

「ふふふ、今日はこれぐらいでいいですわ」

 そんなこんなでお茶会という名の取引は終わった。

「優木さん……」

「どうした?レイザ?」

「死なないでくださいね?」

「そんな簡単には死にたくないよ。……そっちこそ死ぬなよ?」

「優木さんが死なない限り絶対に死ねません‼」

 そんな理由で死ぬ気無いのかよ……良いけど。


「レイザ・フローレスと好井優木が接触したそうです」

「……内容は?」

「お茶会だということです」

「……貴族のお茶会というものは何なのか知っている?」

「ティータイムとして歓談するのでは?」

「それもあるけど、それだけじゃなく情報収集や新たなパイプづくりのためにもあるの。社交の場であり取引の場でもあるのよ」

「……何かを取引したと?」

「その可能性が高いわ。何よりフローレスの動きが少し怪しいもの。それに歳が近くてあれだけあの子を好いていたら何かあってもおかしくないわ」

「あの人は?」

「あの2隻を要警戒とするように言われたわ。ヨーロッパの方は手は出しにくいでしょうがね……」

「……分かりました。引き続き監視いたします」

「そうして頂戴。それとこちらにまで来ないようにあの2隻は一度別のところへ離すらしいわ」

「司令は?」

「了承するでしょう。それしか方法がないでしょうし」

「……始末は?」

「まだ出来ないわ。あの2隻は下手に手を出したら怖いもの。返り討ちにあったら動けなくなってしまう。現に前回はそうしたことによって動きづらくなっているのですし」

「そうですね。分かりました」

「厄介なものが動き出すわね。このままではマズイかもしれない……」


いつの間にか12月……

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