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No.046 パウエル

パウエルに行ったんだって。

 

 「状況は?」

 「パウエルが航行不能とのこと。1番近くで被害が少ない船はネリネとフローレスのみだということで、迎えに行ってくれとのことです」

 せっかく帰れるように準備できたのに行かないと駄目なのかよ……

 「というか、なんで今頃になってそんな情報が流れてきたんだ?」

 「他の船が敵の撤退していく船を追撃しまくっていたそうです」

 「それに巻き込まれて返り討ちにあったのか」

 「はい」

 「馬鹿じゃない?」

 「……」

 言いたいことはあるが口に出すんじゃない。仮にも貴族なのだから……

 「とりあえず、反転して迎えに行こう。有次、進路変更、取舵160」

 「了解、取舵160」

『フローレスはどうしますか?』

 「そのまま帰還させておいてくれ。エンジンは復旧したんだろう?」

『そうですね。わかりました。……艦長、ついて行くと言っていますが?どうもあの貴族はちょっと問題があるみたいだそうです』


 やだなぁ……

 「……分かった。付いてこさせろ」

『はい』

 にしても深追いは禁物って普通じゃね?他の船に巻き込まれたとはいえ何やってんだあの船は。

 「艦長、副長とかを集めますか?」

 今は半舷休息中だ。でもみんな疲れているだろうから呼ばなくて良いだろう。戦闘は起きないだろうし。

 「いや、呼ばなくていい。今は休ませてあげよう」

 なんか嫌な予感がするんだよなぁ……



 「……なんて?」

『だからパウエルに来いと言われています。パウエルの艦長兼当主のジャニナ・パウエル様に』

 普通こっちに来るか通信で済ませる場面じゃね⁉貴族と言えどなぁ……高校生でもわかることだぞ。

『どうしますか?』

 「艦長、これは行くべき。こういう人は後々面倒」

 「だなぁ……」

 行くしか無いか。

『レイザ様より個人通信です。モニターに出します』


『呼び出しを食らったそうですわね?』

 「あぁ……どういう人なのだ?」

 「気難しい、平民はあまり好きではない、自分第一主義……色々です。古い思想の持ち主です」

 面倒くさいなぁ……そして小さいのによく見ている。

『大丈夫ですわ!私も行きますもの!」

 滅茶苦茶目をギラギラさせながらこっちを見ているのがモニター越しでもわかる。なんか危険な香りがするが居てもらわないと何かやらかしそうだしなぁ……

 「ありがとう。よろしく頼む」

『いえいえ、ふふふ……」

 やっぱ嫌だなぁ⁉


 「……艦長、あの女危険です」

 広海、貴族様だぞ?

 「何をしたんですか?艦長」

 有次は有次で少し呆れている。

 「知らないよ……とりあえず僕はすぐにあっちに向かう。留守は……あかねを叩き起こしておいてくれ」

 「了解、気をつけて行ってきてくれよ?艦長」

 「……私も行きたい」

 えぇ……

 「1人で大丈夫だから……心配しないでくれ」

 「心配」

 「俺もちょっと信用できないかな?」

『同意します』

 みんなひどくね?



 「パウエル公が参ります」

 こういうときってどうすればいいんだろう?。頭下げておくか。

 「ふむ、久しぶりだの?レイザよ。父上は誠に残念であった」

 「お久しぶりです。パウエル様。お心遣い恐れ入ります」

 「うむ。それで貴様か。父上が司令官だそうだな」

 「はっ、父は日本地区宇宙軍の司令官をしております」

 他にあまり言わないほうが良さそうだ。

 「ふむ、まあ良い。ところでだ」

 なんか滅茶苦茶面倒くさいことを言われそうだ。

 「貴様の船は少し壊れているが動けるのだな?」

 少しじゃないよ、滅茶苦茶だよ。

 「はぁ……まあそうですが?」

 「私の船は動かすことも出来ない」

 誰のせいだと思っているんだよ。

 「そうですね?」

 「そしてみんな疲労していて動かすこともままならない」

 ……嫌な予感してきたぞ⁉

 「そこでだ。貴官らでこの船を修理してくれたまえ。」


 いくら何でもそこまでやる義理はこちらにはない。

 「お言葉ですがパウエル公」

 「なんだ?」

 「我がネリネ隊はかろうじて動けるとは言え、状況は最悪です。推進機関のもう1つの中枢であるスタビライザーは半分なくなってまともに動かせられなくなり、エンジンも損傷してかろうじて動かせる程度です。内部にも被害が起こっていますし、他の隊の方々の救助も行ったためその対応もしなければならなく、とても手を貸せる余裕がありません」

 「……申し出を断るというのか?」

 傲慢な申し出だなぁ……

 「いえ、機関班から1人とアンドロイド数体をそちらに渡します。申し訳ありませんがそれで精一杯です」

 「それだけなのか?」

 「はい。そちらの人員と連携すればすぐに復旧できるはずです」

 「……私の言うことを聞いていなかったのか?」

 こっちはいくらでも働けると思っているのか?

 「お言葉ですが、こちらも戦に慣れきっていないもので体調不良者が出ていて人員不足です。とても出せる状況ではありません。しかしながら友軍として協力します」

 「それでしたらフローレスからも人員を出しましょう。こちらのほうが機関部の被害は最小限ですし、だいぶ復旧も終わっております。……伯父様、もしかして私にこの人が近づいていて妬いているんですか?」

 レイザが横からすかさず言ってきた。ありがたい。

 「……レイザがそこまで言うのなら良い。貴官は助けられたな」

 助けられたと言われても……レイザには何もしないぞ?

 「とりあえず、貴官らの申し出に感謝する。整備が終わり次第、基地に戻るのだな?」

 「はい、そのように指示をされています」

 「分かった。下がって良い」

 「はっ!!」


 「レイザも初陣にしてはよくやったな。その調子だとちゃんと当主としてやっていけそうだ」

 「ありがとうございます。パウエル様」

 「あと、ネリネ艦長」

 「はい」

 「レイザをよく助けてくれた。感謝する」

 「いえ。当然のことです」

 最後にそれはないだろう……嬉しいけど。


 「好井艦長、このあとはいかが致しますか?」

 「とりあえず船に戻って機関班の子に頭下げなきゃだな」

 あっちも忙しそうなのに無理言ってしまうからな。

 「それじゃあその後、私の船へ来て下さい。お茶会でもしましょう」

 「……はい?」

 「ささやかなお礼です」

 目が怖い……この人マジで15歳だよな⁉滅茶苦茶狙われているんじゃないか、僕。かと言って別の地区の貴族とは言え、まあまあ権力を持っている。断れねぇ。

 「……分かりました。指示を出したあとそちらへ向かわせてもらいます」

 「頼みますよ?」



 「ななみ‼ちょっと頼み事があるのだが」

 早速ネリネに戻ってきた僕は休憩中のななみのところまでやってきた。

 「どうしました?」

 「すまないがちょっとパウエルのところまで行ってくれないか?あっちの船の推進機関を修理してほしいのだが……」

 「……あの船の人たちの仕事じゃないですか?」

 それは僕も思う。

 「一応フローレスの人員も出してくれるらしいから問題ない。ちなみに女性だ」

 ネリネであんな事があったしな。外だともっと面倒なことになりそうだしあまり出したくはないのだが……

 緋色は今ネリネの推進機関を何とかしてもらっているし、二葉は行動不能に陥っている。……人手不足がなぁ。

 「まあ艦長の頼みですし良いですよ‼……どうやって行ったら良いんですか?」

 「僕が送っていくよ。使える戦闘機は1機しかないし」

 それにその後フローレスに行くし。

 「艦長もパウエルで手伝ってくれるんですか⁉ありがとうございます‼」

 ……おーん、勘違いされているぞ。

 「……すまんが僕は他で用事があって行くことは出来ない」

 「はい?まさかですけどフローレスに行くとかじゃないですよね?」

 そういりゃななみはレイザとの通信のとき居たよな。なんか面倒くさいことになってきたぞ。

 「どうしましょう?広海ちゃんに行っておいたほうが良いかな?」

 「……ややこしくなるからやめて下さい頼みます」

 広海に言ったら面倒なことになりそうだ。それだけは分かる。

 「分かりました。まあ艦長がどうしようと自由ですもんね‼しかもこの船のトップですし、従うのが道理ですもん‼」

 いつもの笑顔だが心なしか怖い。

 「艦長‼」

 「はい‼」

 「マズイ事態は引き起こさないほうが、身のためですよ?」

 善処します……

 ななみが怖いと思った瞬間だった。


総合評価100ptになりました‼ありがとうございます‼

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