No.033 ベイズ隊視点から
武装が強すぎる……
「隊長、あと3分でこちらの主砲射程圏内に入ります」
「進路そのまま、全艦主砲発射用意、ミサイルも随時撃て。シールド展開も忘れるな」
「イエッサー」
呑気なもんだな。1艦で突撃してくるとか馬鹿じゃないのか?あの船の艦長は自分の命も簡単に投げ出すのか。大体の船は10隻も相手にすることなくさっさと逃げるのだが。まあこれで勝ち確だろ。いくら何でも10隻で叩けばすぐ終わる。
「僚艦にあの船を袋叩きにしていて遅れるなよと伝えておけ」
「イエッサー‼」
まあこれで呑気に足引っ張るようなやつは出ないだろう。
そう思っていたのだが、呑気だったのは俺たちの方だったようだ。
「待って下さい‼艦長、右舷前方より巨大なエネルギー、急速接近‼」
「なに⁉回避‼」
「本艦にはぎりぎり届かなさそうです‼」
なんじゃあの光。そう言えば前にバカでかいエネルギーでまるごと飲み込まれるから、巨大なエネルギーが来たらすぐに回避しろって言われたよな。自分はそれなりの戦績を上げているのだが、オリジン方面軍で実際に戦争をするのはこれが初めてだ。オリジンは他よりも未開拓惑星で兵器もさほど進化していないと聞いていたが、とんでもないことをすると聞いていた。そのうちの一つとして、大きなエネルギー砲を使うと聞いていたが、半端なものじゃない。これ俺らと同じぐらい進化しているんじゃね?たかが宇宙に出てきて数十年の星が異様な進化スピードだな。
「艦長、被害甚大です‼ユイズ、メリエズはモロに食らって蒸発。ハイズ大破、サエズ、ガエズ中破です!」
「半分が使えなくなったんだと‼ふざけるな‼」
予想以上だなおい。この1撃だけで半分が使いものにならなくなっただと⁉
「艦長‼どうしますか?このままでは……」
許さんっ……こんな事されておいて何と報告するんだ。面目丸つぶれじゃないか‼いや、このままじゃまずいんじゃないか⁉
「残った船でそのまま進む」
「我が隊は半分を喪失しています‼無茶です‼」
「統率も取れずに混乱しています‼」
「うるせぇ‼このまま何もせず帰るというのか‼」
「それは……」
「とにかく進むぞ‼編隊を組み直せ。出来なかったとしても、俺らが散り散りになったとしてもあの船だけは許さん‼」
「い、イエッサー‼」
「あとの4隻も付いてきます‼」
「全艦、主砲射程圏内です‼」
「砲身が溶けるまで撃ちまくれ‼」
何があっても、2隻を失わせ、3隻を動けなくさせたあれだけは許さん。
「敵艦、サブの砲塔で応戦してきます。こっちの主砲はビームを減衰させるミサイルとバリアで弾かれています」
「良いから突き進め ‼あっちは主砲が撃てない。ということはエネルギーを使いすぎているんだ‼そんなんじゃバリアもすぐに飽和して被弾する‼」
「敵艦との会敵まで2分‼」
「敵飛行隊、後方より撃ってきています‼」
「シールドで防げ‼これだけの速さで俺らは動いているんだ。命中しにくいはずだ‼」
「敵艦はなおも接近中。会敵まであと20秒。いや……急速に速度を落としています‼」
何をしようっていうんだ今度は。
「敵の回頭を確認。敵、速度をまた上げ始めました‼私たちと同じ方向に向かっています」
少しでもこっちと撃ち合う時間を長くするためにしているんか?
「敵のバリアー飽和を確認‼砲撃が届き始めています‼」
「敵の主砲も復旧しています。威力が強い‼」
「敵艦、ダメージ多数。またエンジンの1つに直撃したことも確認。でも速度依然として上昇中です」
「左舷にもう1隻展開しているライエズより連絡。新たな敵艦がこちらを砲撃しているとのことです」
「放っておけ。あの船より脅威ではない。ともかくあの船を沈没させるぞ」
「イエッサー‼」
「敵、尚もダメージが入っています。しかしこちらにも徐々にダメージが入っています」
「このままでは追い抜きますがどうしますか?」
「減速しろ。あれは放っておけないし、なんとしてもダメージを入れなければ気が済まん‼」
「イエッサー‼全艦に告ぐ。これより敵を囲い込んで袋叩きにする。減速して囲め‼なんとしてもあの船を沈めるぞ‼」
その息だ。にしても化け物だな。半分に減ったとしても5隻の主砲を浴びせているというのに、目立ったダメージはエンジン1基だけとは。ちょっと自分の腕を疑ってしまう。
「1隻相手にここまで手こずることは無かっただろう‼もっとよく狙って撃て‼」
「やってますよ‼何故か弾かれるか避けられるんですよ‼」
「艦長、左舷からもう1隻が突っ込んできます‼」
「なに⁉」
まさかもう1隻も気が狂ったのか?
「ライエズ大破‼航行不能‼」
「見りゃわかる。何をしたいんだあの船は」
「いや、さっきので隙が出来たので新型艦が包囲網を抜け出せるようになりました‼」
「逃げられるぞ‼各個追ってくれ」
「もう無理です‼抜けられます‼」
「無理です無理ですではねぇ‼何とかしろや‼もう1隻のほうが弱いはずだからそっちを狙え‼」
「もう出ています‼」
逃げ足速いなおい‼
「敵艦からのエネルギー反応多数‼ミサイルも来ています‼」
「回避しろ‼」
[ドガン]
「我が艦は小破‼リエズ大破‼他の艦も中破です‼」
無理だな。
「全艦に通達。ベイズ隊は全艦180°反転。撤退する。動けない船はなんとしてでも引っ張って仮設基地まで持っていくぞ‼」
「イエッサー!全艦に通達、これより我が隊は反転し、仮設基地へと向かう。動けない船は動ける船に牽引してもらいながら撤退しろ‼」
「艦長、敵も2隻とも撤退する模様‼しかし、敵の増援の部隊が続々と集まっているようです‼」
「撤退を急がせろ。最悪の場合、避難艇に収容させて、大破した船は自爆させる」
「イエッサー‼」
「艦長!!リエズはもう無理です。脱出させます‼」
怒られるだろうけどしゃあないな。
「やってくれ‼収納まで7分で終わらせろ」
「イエッサー‼」
「サエズは私たちの船で牽引させます」
「頼む」
とりあえず残りの置いてきた3隻も回収しなければならないよな。先に行かせるか。
「おい‼他の船は足手まといだから先に撤収させろ‼ついでに置いてきた3隻も可能な限り牽引させるようにさせろ」
「分かりました」
「撤収準備完了」
「艦長、すぐに撤収を‼あと2分で敵の主砲射程圏内です‼」
「最大船速でこの宙域を離脱しろ‼」
何とか間に合ったみたいだな。
「艦長‼あとの6隻なんですけど、程度の重い2隻を自爆させたとのことです」
「分かった。半分を失ったのか」
こりゃベイズ隊解散だな。怒られるどころの話じゃねぇ。面目丸つぶれだ。本国に帰ったらなんと言われるか。
「ブルージェにも通信を入れておいてくれ」
「なんて言いますか?」
「任務失敗、これより帰投するとでも何とでも言っといてくれ。ぼかす必要はあまり無い。したところで変わらんしな」
「入電です。ベイズ隊はそのまま仮設基地に帰投。今ある3隊を2隊に再編させる。とのことです」
そんなこんなでため息を付きながら、何を言われるかわからないまま、基地に向かって帰るだけであった。
PV3000超えとった……ありがとうございます‼




