No.031 そこどけそこどけベイズが通る
敵が突っ込んでくるんだって。
「修理に関してはあと1時間もあればできるで〜」
「ありがとうございます」
「それで少し改装もしたからその報告もするで」
改装って……まだ就役からちょっとしかたってないぞ。
「どこ変えたんですか?」
「ネリネはあまり変わってないぞ?ただ変えた主砲はいつでもパワーアップできるようにしてある。また時間があるときに来てもらったら他の主砲も一緒にパワーアップするからまた来てくれ」
「わかりました」
「あと、戦闘機のジェネレーターもパワーアップさせてるのと、君が作ったiちゃんも各機体に載せて補助させるから」
だいぶこれで楽になるかな?
「ありがとうございます‼」
「じゃあ頑張ってくれたまえ。パーツはだいぶ多めに置いているから全部壊れても問題ないと思うよ」
これで当分の課題は解決されるかな?
「艦長。さがみとのドッキング解除します」
「解除後、本艦は新たな任務へ向かう」
「解除確認。さがみより連絡。貴艦の幸運を祈る。とのことです」
「了解したと伝えてくれ。これより本艦は任務に復帰する。指示は来ているか?」
「はい。月方面に向かってくれとのことです」
「月か。月って開発とかされてないんかな?」
「ほとんどされていないですね。研究所や宇宙戦艦の造船所だったらあるみたいですが、非常時にそこまで守る戦力があるならこっちに回さないといけないんでね」
「人手不足か」
40年前からいつでもついて回る問題だな。ほぼ100億いた人口が、一気に数億ほどにまで激減し、やっと回復し始めているところだからな。最近は安定して教育を受けられるようになったけど、10年ぐらい前までは中学生以上は誰でも働かざる者食うべからずと言われていたらしい。
ま、その考え方が染み付いているから今でも労働できる年齢は曖昧な部分があるしな。流石に中学生とかはきつい仕事はできないけれど、高校生以上はどこでも雇ってくれる状態だ。中学生もたまに働いて稼いでいる子も見かけるし。
「……艦長、救援要請が来てます」
「復活してすぐかよ」
「どこだ?」
「月の方向。前にアメリカ軍が出会った所ですね。すでに1隻撃沈され、2隻航行不能に陥っています」
ひでぇ損害だな……
「すぐに向かうと言ってくれ。有次、最大船速。急いで向かってくれ」
「またかよぉ……分かりました。最大船速、面舵10、下げ舵15」
「残っている船は?今救援に来る船はあと何隻?」
「会敵中の船は戦闘不能の船を除くと3隻、救援は2隻です」
「敵は?」
「10隻です。情報によるとまた別の隊だそうです」
えぇ……
「到着予定は?」
「35分です」
「飛行隊を出すか……」
「もうちょっと後じゃない?」
「そうだな。10分後に出す。みんなに伝えてくれ」
「分かりました。レッドアラート発令、レベル5。飛行隊は10分後に発進してください。ウェポンはCパーツを装着。ハードポイントにもミサイルと増槽を付けてください」
「艦長‼なんかまずいです‼」
「どうした⁉」
「敵艦隊は矢じり状になって3隻を抜けました‼そのうち1隻が更に航行不能。2隻は追撃しています。この事により、本艦との会敵は20分後になります」
「他の船はどれくらいで来る?」
「ネリネ隊が一番早く会敵する予定です。あとはエーデルワイスが来ています」
「もう飛行隊を出せ‼ちょっとでも勢いを削がなければこっちまで来るぞ!」
僕らは出発してすぐにこの情報が出ている。すなわち敵は基地のすぐ近くにまで来ていることだからな。いろんな船が修理中のところですぐに回せないからな。防衛部隊、突破されちゃってるみたいだし。
「了解‼飛行隊スクランブル‼状況変更、本艦との会敵予想は20分。敵は最大船速でこっちに向かっている模様。全機緊急発進してください。1番及び2番カタパルト展開。発進シーケンスを開始します。……サポートアーム接続。発進用格納庫展開完了。進路クリアー、飛行隊、発進どうぞ‼」
「追撃艦の主砲射程圏内から敵艦が離脱します」
船のパワーの差か。機器の更新があまりできていないからだ。どちらにしても無駄か。
『艦長、1隻では10隻を止めることはできませんよ?どうするつもりですか?』
「速い船はすぐには曲がれないだろうな。……特射砲を使って敵を削る。特射砲射程圏内に入り次第特射砲は固定モードで発射するぞ」
あまり使いたくないんだけどなぁ……
「分かりました。準備しておきます」
さぁて、大丈夫かな?今回は突っ込んでくる敵を止めろという、とんでもないミッションを任されたな……
「とんでもなくヒデェ事になったなくそ……」
「ワームトンネルの座標が入れ替えられるなんて。誰がやったんでしょうね……」
たぶん不具合だろうな。後で怒らんと。
「ブルージェとウィズダムは?」
「もう戦闘は終わっています。戦闘については一応全体的には勝利しましたが、ブルージェ隊が1隻、ウィズダム隊も1隻撃沈されました」
「チッ。戻ってくるまで思いのほか時間がかかったな。それにしても何やってんだよあいつらは。精鋭じゃないのか?」
「どちらも今は仮基地で補給を受けています」
「ブルージェ隊より連絡があります」
「放っておけ。俺らは一気に地球へ向かうぞ」
「でも……」
「行くんだ‼」
「イエッサー。これより本隊は地球へ向かう。全艦最大船速。突撃体制になれ」
「よし行くぞ‼」
ブルージェやウィズダムと3隊でオリジンの船を挟み撃ちするって言うから従ったのに、とんでもないことになったな。待っていればいいものを勝手に始めよって。ならばこっちも勝手にさせてもらうまで。あっちが失敗したんだから別にこっちも勝手にしてもいいじゃないか。
「あっちの戦果は何隻だったんだ」
「え〜と、2隻撃沈。他数隻を航行不能にさせたそうです」
「目標は3隻撃沈、10隻大破させるぞ。その後できれば基地も破壊する」
「そんな事できますか⁉こっちも相当な被害が……」
「やるんだよ‼」
やるしかねぇんだよ。後の船も艦長が何とかしてくれるだろう。伊達に任されてはいないはずだからな。頑張ってもらうしかないな。
「敵艦来ます‼」
「何隻だ⁉」
「5隻です!」
「一番前の船に集中砲火をする‼全艦砲撃準備‼撃沈後、そのまま突破する‼シールドの残量に気をつけろと言ってやれ‼」
「イエッサー。全艦、突撃体制。砲撃準備。目標、前方の敵艦。敵突破後、最大船速で地球方面へ行く」
どこまで行けるかな。スコアを伸ばしてとっととブルージェたちを抜きたいものだな。
「主砲射程圏内です」
「よし、全艦、主砲発射‼」
「イエッサー‼主砲発射‼」
何度見てもこれはすごいな。無慈悲なもんだ。なんて言ったって1艦2連装主砲2門が20の束が1艦に向けて撃たれるのだ。見てるこっちは笑えるがな。
「敵艦は轟沈‼というか跡形もない……」
「他の4隻が撃ってきます」
「シールド展開。全速力で突破しろ‼すれ違いざまに右舷と左舷それぞれ1隻ずつに主砲を撃ちまくれ‼」
「イエッサー!会敵まであと45秒‼全艦、目標両舷の敵艦。全砲門撃てぇい‼」
チッ。敵め、勘がいいな。とっさに全力で上がったおかげで大ダメージを負ったものの撃沈には至らなかったみたいだ。
「敵艦を抜けました‼このまま全速力で突っ切ります‼」
「そうしろと言っている‼こちらの被害は⁉」
「ユイズが大破‼それ以外はまだいけます‼」
「よし、そこどけそこどけベイズ様が通るぞ‼」
「流しますか⁉」
そこまでは良い。
「敵艦3隻が追撃してきます‼あと2隻新たに発見‼」
「後ろにバンバン主砲を撃て。どうせ敵の足は速くない」
「イエッサー。全艦、そのまま最大船速」
「敵の主砲射程圏内から抜けました」
「一番近い基地まであとどれくらいだ」
「あと20000。40分です」
近くに出てきたから距離が短い。他に敵は来るかな……
「他に敵は?」
「後ろ以外いません‼」
馬鹿なのか⁉人手不足なのか⁉楽にできるのは良いが削げないじゃん。
「チッ。分かった、このまま進む」
「前方に敵艦を発見‼」
「何隻だ‼」
「それが、1隻です……」
マジかよ、1隻だけだと……バカにしてるだろ。
「主砲射程圏内まであと何分だ⁉」
「あと7分‼」
「敵は新型艦です‼」
あのぶった切ったやつか。今回はだいぶ離れてるし、近接戦にならないからこっちのほうが有利だろ。
「よし、あいつを倒せばもっとすごいぞ‼全艦、砲撃用意‼」
こちらとしては1隻で向かってきてくれてありがたいだけだ。やっぱり1隻だけであっちは歯向かってくるからあっちには俺のような突撃してくる奴ばっかりいるんだよな。……数が違うけれども。
来週からはテスト期間(泣)




