No.024 侵攻開始
いよいよやって来るみたい
地球よりはるか先に、ワイダム連合という国がある。
5つの星からなる国家で、地球とは何万光年も離れている。ただ、とある事情で1つの星は消滅してしまった。そしてこの星が、我らがストレンジャーとよんでいる者、地球に侵攻している国だ。そして今、最後の地球侵攻を開始しようとしていた。
「閣下」
「どうした?」
「先遣隊の偵察部隊との交信が途絶しました」
「そうか……」
「ただ最後に緊急通信で色々と情報を送ってくれました」
「偵察部隊は新入隊員だったよな?惜しい人材をなくしたな」
「成績は優秀でしたからね……こんなに徴兵が出来なくて人手不足になっていなかったら精鋭部隊に配属できるぐらいの腕前にはなっていましたね」
「分かった。情報の内容は?」
「敵の配備状況とあの新型艦についてです。ご説明しましょうか?」
「そうだな、頼む」
「はい。まずはオリジンの配備状況です。小型艦23隻、中型艦5隻、それとあのオリジンの違う部隊らしき戦艦が6隻の合計34隻です」
「こちらは遊撃部隊が1個隊小型艦8隻、中型艦2隻の合計10隻で3個隊30隻、あぁいや、ブルージェ隊は旗艦が小型艦ですので、中型艦1隻、小型艦9隻ですね。降下部隊は大型艦1隻、中型艦10隻、小型艦15隻の合計36隻の予定です」
「戦力は2つに分かれるが、ほぼ2倍か」
「そうですね。最初の遊撃部隊がどれほど敵を削ってくれるかでその後が変わってきますね」
「問題はあの新型艦だな」
「はい。最後に送られてきた映像では羽からビームが出て、それによって真っ二つにされたみたいです」
は?
「自分も疑いましたが、映像で残っている以上それしか言えません」
「分かった。後で見よう。遊撃部隊の発進準備の状況は?」
「全艦発進準備完了です」
「君も行くのか」
「はい。閣下は降下部隊で来られるんですよね?」
「そうだな。総旗艦のホーネストの艤装が完了し、すべての積み込みが完了したら行く」
「わかりました。それでは」
「あぁ。まあ遊撃部隊にはブルージェ隊も組み込んであるから暴れてくれ」
「はい」
最初に侵攻を行うのは、ブルージェ隊、ウィズダム隊、ベイズ隊の精鋭3部隊、10隻ずつの合計30隻で構成された遊撃部隊だ。この3部隊で手始めにオリジンの戦闘部隊を各個撃破していく。そして第2群の降下部隊で地球に侵攻して被験者たちを回収、そのあとに焼き尽くせれたらスムーズなのだが。……簡単には無理だろうな。何せ3度の侵攻を跳ね返されたからな。3度目は偶発的とわいえ、そこそこの戦力を削れたが、それでもまたオリジンが力をつけてしまってからの侵攻になってしまった。
「研究のための侵攻だけではなく、移住のための侵攻だからな。あの人たちのためにも、我らの手でとっとと出て行ってもらうとするか。……青と緑の惑星はさぞ暖かいんだろうな。ここはいつでも薄暗くて寒すぎる。」
「遊撃部隊、発進準備完了。予定通り、12:00(ヒトフタマルマル)に侵攻を開始します」
「分かった」
「それでは予定通り、閣下の演説をよろしくおねがいします」
「うむ」
「ワイダム連合国軍、オリジン方面遊撃及び降下部隊の諸君‼私は、ヴィラミス・べテム、オリジン方面軍司令だ!
我らは今、全戦力をもって、オリジンへの最後の戦いを行う‼
41年前‼我らが母星の1つ、ベレラは、野蛮なオリジンによってそこにいた人々を星ごと抹殺した‼そして、我らは幾度となく復讐をしてきた。しかし、奴らの非人道的な策によって、我らは幾度となく多くの同胞を失って撤退させられた‼我らの星々は今、薄暗さと、寒さと、憎しみに包まれている。
しかし‼我らはまた力を合わせて、そして、過去の同胞の者たちよりも、強力な剣として‼オリジンへ突き刺す準備ができたのだ‼彼らもまた、様々な策で我らを陥れ、対抗してくるだろう‼
しかし‼この最強艦隊は伊達じゃない‼各隊とも、我らの持てる力すべてを使って、この戦いを、勝利に導くだろう‼我らの明日への未来のために、その力、遺憾なく発揮してもらいたい‼
オリジン方面軍、遊撃部隊、全艦発進‼」
「イエッサー‼全艦に通達。ブルージェ、ウィズダム、ベイズ各隊、発進を許可する‼計画は予定通りに遂行。諸君の健闘を祈る」
「隊長‼艦隊司令部より連絡。全艦発進とのことです‼計画は予定通りに遂行との通達も‼」
「分かった。全艦、発進しろ‼最終目標はオリジン周回軌道上の基地!!方位修正!第一目標、ワームホール入り口‼我ら精鋭部隊の力を見せつける時が来たぞ‼」
「イエッサー‼全艦へ通達、我に続け、これよりブルージェ隊はオリジン周回軌道基地へ進軍する。第一目標ワームホール入り口‼」
ブルージェ・ノラム、この男は、前回、前々回の進軍のときも出撃し、2回とも小型艦での出撃であったが、戦績は2番目に撃沈数が多かった。そして今、隊の指揮を任されて、この精鋭部隊を率いることとなったのだ。地球側では、青い船に乗っている男として恐れられている。船の機動性を最大限に引き出して、敵を翻弄しつつ撃沈していくのを得意としている。
「副司令はこちらに乗艦してよかったのですか?」
「敬語じゃなくて良いですよ。あなたのほうが実戦経験もあるし、私はまだまだ未熟です。まあ、上の人からここに乗艦するようにお達しが来たので」
「そうですか。危険が伴いますよ?」
「お気遣いありがとうございます。しかし私も軍人なので危険は承知です。この遊撃部隊のトップは私ですが、指揮はあなたに任せます」
「分かりました。」
「隊長。艦隊司令部からです」
「発進しろと言われたか」
「はい。全艦発進せよと。計画は予定通りに遂行しろとも来ています」
「分かった。ウィズダム隊、全艦発進する。最終目標はオリジン周回軌道上基地。まずはワームホール入口まで行く。途中まではブルージェとともに行くことになると思う」
「ベイズ隊は?」
「ベイズは勝手に行くだろう。アイツのことはもう知らん」
「分かりました。全艦に通達、これより本艦は発進する。最終目標はオリジン周回軌道上基地。途中まではブルージェ隊と連携して向かう。ブルージェ隊発進後、本艦も発進する」
ウィズダム・テレサ、この女もブルージェと一緒に地球へ2度侵攻し、彼とタッグを組んで2隻で動いていた。戦績はトップ5には入らないが、策を練るのが得意であり、ブルージェが多くの船を撃沈したのも、ウィズダムがいたからだとも言える。かと言ってそれだけではなく、敵にも一定以上の戦果を出しており、ブルージェとは戦友として、そして良き理解者として2人は認識している。
「隊長、発進許可出ました」
「よっしゃぁ‼全艦急速発進!ブルージェとウィズダムなんかに負けるなよ‼」
「艦長。司令部は計画は予定通りに遂行しろと言っています」
「ちっ。仕方ない。オリジン宙域に来たらスピード勝負でやるぞ‼」
「艦長。オリジンの船は伊達ではないです。各個撃破でお願いしますよ。甘く見ないでください」
「どうせそこまで強くねぇよ。あいつらよりも俺は強いからなぁ‼」
「艦長、ブルージェ・ウィズダム隊の後方につくように来ております」
「チッ。了解したと伝えろ」
「イエッサー」
ベイズ・ノーレス。正確に一癖あるが、最年少ながら別の宙域での戦闘では幾度となくトップスコアを上げる成績を残し、今回精鋭部隊に抜擢された人物だ。
こうして、ワイダム連合は侵攻を開始したのだった。
「侵攻をやっと開始したのか」
「今回も随分と時間がかかったものだな」
「今回で決着がつかなければ我らはあの2の舞になるぞ」
「ともかく、今度の戦争ですべてが終わる」
「この実験は少々危険すぎたようだ」
「しかし、我らにとっては有益なサンプルが獲れるのも事実」
「我らの身体に新たな進化を引き起こすかもしれないものも見つかりそうだ」
「5度目の実験はするのか?」
「いや、サンプルは集まった。これ以上は危険だろう」
「次このようなことになったら我らが持たない。ましてやこの星たちが持たないだろう」
「そうだな」
「今回は最終的に惑星に直接降下するみたいだな」
「どのように攻めるのか楽しみだ」
「さて、どうなることやら」
関係ないけど、……明日で午後までの授業は終わりだぁ‼




