No.021 開戦
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エーデルワイスが呑気にしていたせいで不意打ちにあったんだって
「艦長‼あと40秒でステルス効果が消えてしまいます‼」
「オリジンの中型艦は⁉」
「あと50秒で会敵します‼」
「総員、戦闘配置‼あの光る羽つきを沈める」
まさかこんな事になってしまうとは。起こったことは仕方がないがこれはまずいな。
私たちの船は今、敵の訓練宙域と思われるところにいる。というのも私たちはこの艦のステルス性能を生かしてオリジンへの偵察任務に当たっている。ことの始まりは20分前……
「機関出力低下中。やっぱりあまり調子が良くないですね」
「う~ん……もう少ししたら任務は終わるからそれまで持たせてくれ」
「了解。調子を戻すためにも頑張って修理をします」
「頼む」
嫌な感じだな。ワームトンネルを使ったせいかな?あんな未知の発見のものをいきなり使わされたせいでどうも調子が悪いんだよな……この船は最新の艦なのに。
ただ、その新しいワームトンネルが使えるようになったことで、数年かかっていた恒星間航行が、数週間に短縮され、迅速に部隊を差し向けることができるようになった。まぁ、まだ未知の部分が多いのと、固定された場所にしか移動できず、印をつけて置かなければどこにあるのかさえわからないからな。
「やばい‼」
「どうした?」
「機関出力がさらに低下しています!このままではステルス状態を維持できません‼」
「修理に行ったやつらは何をしている⁉」
「どうも修理をし始めようとした直前にショートしたらしいです」
ショート?何でだ⁉
しかしそれだけでは終わらなかった。
「艦長!前方よりオリジンの艦。あの光る羽つきです‼」
「なんだって⁉」
最悪なタイミングの時に現れやがって。
そしてこれが今の状況である。
「総員、戦闘配置」
この船は調査線であり、武装では格段に劣るのでこちらなので先制攻撃をしなければ。
「主砲発射用意。対魔法レーザーを使用するのも忘れるなよ?ステルス解除と同時に主砲発射しろ」
「了解」
「すみません。ひどくなるばかりで」
「今はそんな事考えている暇はない。戦闘に集中するぞ」
「ステルス解除します!」
「主砲発射‼」
[フィーン]
「直撃を確認。羽に当たりました」
「そうか」
「敵艦発砲‼しかし速力が落ちています」
「回避‼そのまま敵艦を沈める」
「りょ、了解」
仕方ないが見られてしまった以上こちらも引くことは出来ない。そのまま撃って回避、そして的に打つという戦闘が起こる。
「敵の戦闘艇が邪魔だな・……撃ち落とせんのか⁉」
「ちょこまかと動いて話になりません。防衛するだけで手一杯です」
1発だけ巨大なビームが来たが、それ以外はほとんど膠着状態だった。しかし、あの船が来たことで事態は急変した。私たちの悪い方向に。
「か、艦長!右舷20°、俯角5°より、エネルギー接近‼」
何で⁉
「回避しろ‼」
[ジジッ]
「右舷をかすめました!航行には問題ありません」
何だ⁉
「新手です‼艦影照合します‼」
「羽つきはあとだ!新手に砲撃を集中させろ‼」
「レーダーを敵艦予測位置に照射。敵艦はあの新型艦です‼」
あっちは旧時代のレーダーだからこちらはまだ補足されていないはずだ。と言っても私達も照射方向に艦がいなければ分からないものだが。
「まずいな……」
「新型艦の戦闘艇も来ました。これで合計10機です‼」
「敵艦も接近中。滅茶苦茶速い‼」
撃ち合っていてもこっちの優位性が無くなっていくだけだな……ステルスのおかげでこちらは優位に立てていたが、それが無くなった今、敵のほうが圧倒的に火力が高く、こちらは偵察専門なので戦える小型戦闘艇はない。この状況ではこっちが撃沈されるのも時間の問題だな……逃げるしかないか。
「これより本艦はこの空域を離脱する。面舵10、上げ舵10‼」
「そっちは光る羽根つきがいる方向ですよ⁉」
「仕方ないだろ‼国に帰るためにワームトンネル使うんだったら。それに手負いを突破するほうが、新型艦よりましだろ?」
「そうですね」
「艦長⁉でも最大船速で行っても途中で新型艦と会敵してしまいます‼」
なんとか振り切ってくれよ?
「構わん‼このまま突っ込む‼」
流石にあっちもぶつけはしないだろ。今は損害のことを気にする暇はない。そう思っていたのだが……
「艦長‼新型艦の羽からビームみたいなものが‼」
「このままではあのビームにぶつかります‼」
「回避‼取舵一杯‼」
「間に合いません!」
「ギャァァァ‼」
私が最後に見たのは、その光るビームだった。
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「今日はどれぐらい持つかな?ネリネの後輩は」
「明らかに強くなっていると言うか、毎度作戦が突拍子もないんだよね。好井艦長は」
「そうですね。船からワイヤーを射出させて回転したり、全速力で岩を避けながらこっちに撃ってきたりあの船、戦闘機みたいなアクロバティックな動き方をするんですよ?」
「そのせいで照準が狂ってしまうんだよ。あっちの艦長は頭おかしいんだろうね。まあでもそれを実行する操舵手もなんか妙にあんな動きをしているというのにこっちに当ててくる砲術の子も頭おかしいんだよ」
「恐ろしくなりそうですね、あの子達」
「唯一の欠点は飛行隊がバラバラな動きをしているんだよね」
おかげでこっちは撃墜しまくっていいけど。
「艦長‼前方に未確認機出現‼発砲しました‼」
[ズドーン]
「きゃあぁ‼」
いきなり敵が来るなんて何事なのよ‼
「回避して‼被害報告‼」
「ダメージコントロール‼スタビライザー4枚に直撃‼出力低下中‼航行に支障発生‼」
「迎撃急いで‼SOS発信して‼」
「だめです‼ジャミング検知。レーダー、通信不能‼」
「SOS発信できません‼」
[ドーン]
「ぐはっ‼」
「玲香‼」
玲香が席から吹き飛ばされて隣で思いっきり体を打ちつけた。血が出ているんだけど‼
「右舷上部に被弾‼」
「玲香を早く医療班へ連れてって‼」
不意打ちとか最悪じゃん。
「被害多数‼だめです‼ジャミングされて主砲とミサイルの照準システムがイカれてしまってる!」
「撃てる砲が少なくなってもいいから手動で撃って‼」
「くそぉ‼飛行隊は何をしていたんだ‼」
「あっちも対空防御があつすぎて肉薄できていないみたい‼」
「スタビライザー出力低下‼バリアー維持不能‼」
「ネリネの様子はわかる⁉」
「さっぱりです‼予定時刻まであと20分‼」
それまでは持ちそうにないな。
「最悪本艦を放棄して脱出するわよ」
「くっ……分かりました」
「スタビライザー機能停止しました‼補助エンジンに切り替えますが最大出力であと3分です」
「艦長‼特射砲の発射許可を‼」
こんな時に⁉
「エネルギーはあるの?」
「最後の1発になるんだったら派手に行きましょうや」
そうだわね。
「……特射砲発射用意。最低限の電力を残して全て特射砲に回していいわ」
「了解‼特射砲射撃体勢。ハッチ開放‼展開完了」
「エネルギー充填開始‼」
「エネルギー充填78%‼これで最大です。」
「電力カットされました!非常電力‼」
「特射砲発射‼」
「発射します‼」
どうだ!このDP艦の虎の子の威力は伊達じゃない‼
「敵艦避けよった!」
だめか……直撃だったら1発だったのに。
「総員、退艦めいれ……」
「艦長‼ネリネの飛行隊が2機来ました‼2機ははそのまま本艦の防衛に当たってくれる模様‼」
「助かったのか……」
「はい‼増援ももう呼んでくれたようで他の機体も全機くるとのことです。ネリネも最大船速で向かってきてくれているようです」
ありがたい。
「よし、本艦はこの宙域から撤退する‼」
にしてもいきなり攻撃してくるとはね。
「助かったなぁ……」
「玲香は大丈夫かな……」
『大丈夫です。命に別状はありません』
良かった……
「ネリネの飛行隊が到着しました。……1機突出していますが、守ってくれるみたいです」
やっぱり問題だなぁ。いつか絶対痛い目見るわよ……
「ネリネが砲撃をはじめました‼敵艦もネリネに向けて応戦しはじめました」
「やってるやってる。これで突っ込んでこない限り助かりますね‼」
「……敵艦こっちに突っ込み始めました」
「見事なフラグ回収‼」
「ボケてないで何とかしてぇ‼」
「ネリネ下から突っ込んできます‼」
「敵艦とぶつかるぞ⁉」
大丈夫なのこれ⁉
「ネリネのメインスタビライザーが光り始めました‼」
「えっ……」
ナニシテンノアノフネ
「……敵艦真っ二つになりました。轟沈です」
「やっぱキチガイだよあの艦長‼突っ込んで羽でぶった切るとかどういう神経してるんだよ‼」
まあでも助かったので私達は何も言えないわね……
明日はネリネ目線から‼




