No.011 時井宗光 1
今回は宗光さんの……苦労話?
「お前が自分勝手に動くせいでこうなっとるんやろうが‼」
「うるせぇ‼お前らだって前に飛び出したりしているだろうが‼よくそんなんで俺のこと言えるよなぁ‼」
「お前が最初に無視してるんだろうが‼隊長の言うことも聞けないのか‼」
「どっちも言いたいことはわかるが、今はやめておいてくれ……」
「だねぇ……」
「どうしますか?」
どうするって言われてもなぁ……
ここ、戦闘機の訓練場ではこんなことが日常茶飯事になってきてしまっている。
俺は時位宗光。ネリネで飛行隊隊長として1番機に乗っている。正直に言うとすげぇ貧乏くじを引いたような気分だ。
だって、何で優木とあかねは艦長と副長で同じ班にいるのに俺だけ全く違う班なんだよ‼そりゃ、機械とかコンピューターとか他も全くわからないけど、オペレーターとか砲術とかだったら出来るくね?俺でも。しかも飛行班は他の人達とは違って、ネリネで何かとやるのではなくてわざわざ宇宙に弾き出されて戦うねんで⁉怖すぎるだろ‼正直貴志が怒鳴り込んでいった理由が何なのかは知らんが俺的には戦場に突っ込んで行けと言われてるのと同じような感じの役職に不満があるのではないんかな?それだったら俺も同感だがな。しかも飛行隊6人は全員癖のある連中だしな。……俺も含めて。
和田先輩には散々そのことで俺と一緒に頭を悩ませてくれて感謝しか無いが。最後まで心配そうだったし。言われたことは、鍵岡は1人で突っ走っていくし、三木は元気すぎて騒ぐははしゃぐわ、でも他の人に何かあれば自分のことは放って、その人を助けに行こうとして撃墜されるし、美咲はパワースーツのヘルメットをつけるときにメガネを外すのだが、三木なりに活発になりよる……大廣はまあ言うこと聞いてくれることは多くなったけどまだ突っかかってくるし、大城はまあ表に出たくないだけらしいがな。
……大城が一番マシじゃね?
飛行隊の仕事は、戦闘機に乗って戦うことが主な仕事なので、普段は戦闘機で待機し続けたり(待機命令が出ていない限り)するわけにもいかないので、専用の待機室や自由に艦内を行動していたりできる。まあそういう意味では比較的普段は自由にできるからやりやすいんだよなぁ……
これで戦場にちっぽけな戦闘機で飛び込まなければ良いのだが。それでもそこそこにはみんな上手いから、優木が無謀な策を押し付けてきたりしなければ大丈夫だと思っている。そもそも、宇宙用の戦闘機には2重の脱出装置が組み込まれているからコックピットに直撃弾でも来ない限り意外となんとかなる。
地球の基地に連れてこられたとき、自分はいきなり戦闘機に乗れだの、君は飛行隊の隊長になれだの急に言われてたもんであまり実感は沸かなかった。まあ貴志がいきなり殴り込みに行った時は肝が冷えたし、その時は自分が何とかしなければと思ったのだが。そのようなこともあったおかげで、飛行隊の雰囲気は最初は最悪だった。たぶん先輩もこれからのことで頭を悩ましていたことだろう。
とりあえず、まずは基礎的な操縦方法から教わることとなった。こちらは意外とみんな飲み込みが速くて、簡単な操縦は1日あれば出来るようになった。その後はこの戦闘機の詳細な説明や、オプションパーツについての説明などがあり、複雑な操縦や、パーツの換装方法、船からの発進方法なども教わった。といっても基本的にスイッチひとつでできることもあるため大分楽なのだが。基本的にはネリネでの活動のため、ネリネからの発進を主にしているが、他の船からの発進の仕方も教わった。
……船によって発進の仕方があまりにも違うから、覚えるのがすごく大変。どうせ開発するんやったら同じようなものにしてくれたら良いのに。それについては、覚えることが多いせいで、座学だけで数日かかることとなった。そこからはシミュレーターを使っての模擬戦闘なのだが、まあそりゃこんなチームだとバラバラだね。シミュレーターだと言うのに負けっぱなしなもんで、自分勝手に動き回るかパニクるかのどちらかに陥っている。
まあそれでもだんだんとみんなもマズイと分かってきたのか、指示に従ってくれるようになったが。それでも先輩には負けてしまう。途中から他の先輩も訓練に参加してくれるようになったが、2vs6でもたまにしか勝つことが出来ない。これじゃ先輩4人相手でも負けてしまうぞ……ネリネの飛行隊は6人だが、普通は1隻2人か4人しか乗っていない。6人もいるのは俺たちの船が初めてだ。これは人がいないのもそうだが、ネリネが大型化されたのも、増えた一因らしい。そうして、俺たちは訓練を積み重ねていくのだった。
まあ後は優木に疲れ切っているところを見られて相談して、一回みんなと1対1で話し合えば?と言われたので話し合ったが、まあ役に立たないこともなかったけど、皆の気持ちを聞いて、性格からみんなにあったやり方でやらんと駄目だなと思いましたね。はい。
「訓練を開始する。全員シミュレーターに入り次第、マニュアル通りに出てくれ」
「了解。各機に告ぐ、これより訓練を開始する。今回の目標は敵戦艦3隻の破壊だ」
『隊長、またあの2人が・・・』
個人通話で連絡してきたのは、ちょっと危ういところもあるけど、いつも割って入ったりして俺と一緒に仲立ちしてくれる美咲だ。
「……ほっとけ。」
『良いの?』
もう知らん。後でブチギレたろか。
『まあ2人の性格がああじゃね・・・』
『でも、私生活ではあそこまでではないのに……』
宿舎ではまだ何とかいけてるんだけどなぁ。
『隊長‼2人が前に出てしまっています‼』
『宗光くん‼そのままじゃ2つに分かれてしまって前の2人のほうが叩かれて撃墜されてしまうぞ‼』
あのバカ2人……
「大廣・鍵岡、どっちもそれ以上前へ出るな。やられるぞ。」
……返答なしか。いっそのこと、パワースーツに痛み機能でも付けて、撃墜されたりなんかあったら痛みを伴うような事出来ないかなぁ?なぁ‼
『あっ‼隊長‼』
「今度は何だ?」
『三木が2人のところに行っています‼』
3、3か……こっちは今も先輩たちのデータ出できた機体4機に苦戦しているというのに、各個撃破されていったらたまらないぞ。
『大廣機、撃墜。』
『ざまあみやがれ‼あ”っ』
『鍵岡機、撃墜。』
言わんこっちゃない。
「美咲、大城、三木だけでも助けて、せめて1隻だけでも堕とすぞ。」
『『了解‼』』
『隊長‼僕は右から行きます‼』
『私は下から‼』
「分かった‼俺は正面から行く‼2人共頼むぞ‼」
『きゃぁぁぁ‼』
シミュレーターだから怖くないと思うかもしれないが、意外と目の前から襲われたり、振動があったりしてマジで怖い。
『隊長‼敵戦闘機は三木のところに群がってます‼』
『俺が助ける‼2人はそのまま敵艦へ‼』
『気をつけて下さい‼』
途中から本当のことなのか仮想世界何かがわからなくなってしまうんだよなぁ……
「三木‼そのまま上に逃げろ‼俺が狙って少なくさせる‼」
『隊長‼』
よし、そのまま上に行って追いかけろよ……今の状況としては俺から見ると縦になっているし、1番上は三木の機体だからそこから下をどかどか撃っていけば……
「うん。何か予想以上に来たな……」
成功して、3分の1ぐらい撃墜は出来た。しかし、何か異様にこっちに来ているな……でも三木の方にも今の三木の機体を十分撃墜できるぐらいの数が残っているし、油断はできない。後は2人が成功してくれるかだが……
『敵艦の撃破を確認。これにて訓練は終了する。』
何とかなったか……これで訓練の成功率は5分5分になったな……
『後でミーティングするから、準備室に来るように言っておいてくれるか?』
「分かりました。」
ここからが苦労するんだよな……
「俺は悪くねぇ‼」
「いや、お前が無駄に前に出すぎだろ‼」
「2人共でしょ‼」
いつもこんな感じで誰が悪いだの、俺は悪くないだので喧嘩する。ここまでくればマジで子供の喧嘩だな……
俺としては仲良くしたいのだが。とりあえず、訓練中も俺の言うことを聞いてもらえるように努力するか……
大丈夫かなぁ?(…オイ)




