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29. 共に

「ドランコちゃんでーす。どうぞ」


 メーティルレシュアショーをみんなが見ている。


「あっ! シュガさん!」


 ミミヌイは俺に気づいて近寄って来た。

 俺は少し身構えた。


「ついに、ラクアピネスさんを手に入れたんですね!」


 彼女はうれしそうに言う。


「え? ……うん」

「あっ! ハーメニちゃん!」


 ミミヌイは屈んでラクアピネスの隣に座っている犬をなでた。


「もう放さないわ、ずっと一緒だからね」


 クーンとハーメニは鳴いた。


「拙者の探している猫か!?」


 ソルティオルが来て、屈んでハーメニの隣で寝ころんでいる猫を持ち上げた。


「ジャメニ、お主は拙者たちの仲間だ」


 みんなはメーティルレシュアショーを見ていた。

 さっきまでの戦いが嘘だったかのように消えている。


「……雄シマリスです。このサーカス団のスーパースター、ミックスサーニーでーす!」


 黄色のシルクハットをかぶったピンク色のリスが壇上へ上がり芸をすると、みんなから拍手が巻き起こった。


 オーガミッドまでもが少年のように無邪気な笑顔を見せている。


 ……どうなってるんだ?


 ミックスサーニーは芸を終えると壇上を下りた。


「どうもありがとうございました。続いては今回のメインイベントの登場でーす!」


 途端に暗くなりスポットライトがラクアピネスに当たる。


「ラクアピネスー! 彼女の得意技は歌でーす。それでは、どうぞ」


 ラクアピネスは俺から手を離して壇上に上がって行った。壇上には雲みたいにドライアイスが流れ始める。


「シュガさん、前に行きましょう」


 ミミヌイが俺を誘い壇上が見える一番前に来た。壇上の真ん中にラクアピネスが立っている。


 静まり返った室内に彼女の清らかな歌声が響く。


 ――それから。


 あのあと俺たちは彼女の歌声を聴いた。心を清められるようなそんな歌だった。


 メーティルレシュアショーが終りいなくなると、ラクアピネスはまた俺のほうに戻って来た。すると今度は俺たちのほうへオーガミッドがやって来た。彼は少し下を向いて話し出した。


「シュガルコール、すまないことをした。非礼を詫びる。ラクアピネスの歌で目が覚めた。吾輩はもう、他人のモノを奪ったりはしない。元気でな」


 その船を残してオーガミッドは姿を消した。

 そのあとも、ウィザティーンやボローボなども心を打たれたと言って帰って行った。


 マドワレは「今回は彼女の歌に免じて見逃してやる。だが、次は必ずラクアピネスを奪うからな」そう言い残して帰って行った。


「あたしも帰るわ。あたしもあたし自身が本当に探したい物を見つけるわ。きっとね」


 ラップポロントは疲れたように帰って行った。


 そして、ミミヌイ、リジュピッピ、ソルティオル、ポワティガがここに残った。


「シュガルコールさん」


 リジュピッピが言った。


「わたくしのお役目はここで終わりです。あなたが幸運の女神を、ラクアピネスさんを手に入れましたから」

「リジュピッピさん」

「とても有意義な時間が過ごせました。本当にありがとうございました」


 リジュピッピは振り返りここかた立ち去ろうとした。


「あ! でも」


 俺が呼び止めると彼女は首を横に振った。


「素敵なものを見せていただいたので、お代のほうは結構ですよ。また何か探したい物がございましたらいつでも訪ねて来てくださいね」


 リジュピッピはそう言ってワープで帰って行った。


「行っちゃったね。リジュピッピさん」


 ミミヌイが寂しそうに言う。ソルティオルはリジュピッピを見送ったあと俺たちに言った。


「シュガルコール。ここでお別れだ。拙者とポワティガはウィザティーンのところへ行く。まだ妖刀の呪いを解いてもらってないんでな」


「そうか……あの、ソルティオルとミミヌイに聞きたいんだけど」

「何だ?」

「なに、シュガさん」


 俺はふたりを交互に見ながら言った。


「ふたりはこの世界に残ることに決めたの? っていうか決めたんだよね」


 ふたりはお互いに顔を見合わせたあと俺のほうを向いた。


「そうだ、この……」


 ソルティオルは抱いている黄色の猫、ジャメニの頭をなでた。


「ジャメニを抱き上げた瞬間、時間が止まり天使が現れた。それで言われた。もとの世界に戻るかここに残るかって。拙者はここに残ると答えた。お主もそう答えたのだろう?」


「ああ、でもどうして?」


「さあな、そうしたかったんだろう。拙者自信が。赤ん坊として産まれるのも嫌だったしな。それに、もっと大事なものを手に入れた。それは誰かを助けたいと思う気持ちだ」


「私も……」


 ミミヌイは屈んで桃色の犬、ハーメニの頭をなでた。


「このハーメニちゃんの頭をなでた瞬間に時間が止まったの、それで天使がやって来て言ったわ。もとの世界に赤ちゃんとして産まれてくるか、このままこの世界に残るかって。私はここに残るって言ったの。だって、寂しいじゃん」


 住めば都。


 最初は住みにくかったかもしれないけど、次第にそれが心地よい場所に変わる。


 慣れたと言えばそうなのだろう。


 でも、そこでの思い出や気持ちは消したくないって思ったんだ。単純に。いい思い出も悪い思い出も。


 どちらも一生懸命そこで生きたしるしだから。


「そうだね」


 こうして俺たちはソルティオルたちから別れて、このままペンギンの飛行船でパイナプルの町まで来た。


 オーガミッドの乗っていたイルカの飛行船はソルティオルが使うこととなった。ミミヌイがペンギンの小さい飛行船がいいと言ったので俺たちはそっちに移った。


 ペンギンの飛行船に移るときになってポワティガはワープを出してくれた。近い距離までならワープを作れると言い俺たちを送ってくれた。


 それから俺とラクアピネスの生活が始まった。


 俺たちには家がなかったので、ミミヌイのアトリエを使わせてもらいそこで過ごすこととなった。


 居候している俺たちはミミヌイに裁縫を教わり、それで生計を立てることにした。


 夕方、ハーメニの散歩がてらに3人で食事をしに町に出かける。


 物静かと言えばいいのか、リッピットラト星人たちはいつも通り行き交っている。


 「おい、そこの怪しい奴、待て!」と、遠くでは赤い仮面のピピジュアンがパトロールを行っていた。


 そうしているうちにリッピットラトレストラン前まで来た。


「じゃあ、中に入りましょ」


 ミミヌイはそう言って中に入って行った。ハーメニも一緒に中に入る。


 ウェイトレスがやって来ていつものように注文を聞いてきた。


 床に伏せているハーメニにも注文が入る。犬専用の食事が皿にのって床から出てきた。


 この星では動物も俺たちと同等の扱いを受けるみたいだ。


 みんなは食事をしている。ミミヌイはサンドウィッチを頬張りラクアピネスはスープをスプーンですくって食べている。


 ラクアピネスはあまり話さない。何かを聞いても「はい」や「いいえ」などを言うだけだ。


 でも、それでいいと思った。側にいるだけで。


 ラクアピネス。何だかわからないが側にいるととても心地よく感じる。俺は彼女の魅力に少しずつひかれていく。


 するとミミヌイが目を細めて疑い深そうに俺を見てくる。俺は慌てて紅茶を啜りながら窓の外を眺めた。


 薄暗くなり街に明かりが点く。空には星がちらほらと輝いている。


 俺は思った。ここに住むという選択をしたけど、これが俺の選択した未来なんだ。最初からやり直す必用はない。


 だから、ここにいてもいいよね。


 


最後までお読みいただいた方々、長い間、本当にありがとうございます。

ご評価を下さった方、本当にありがとうございます。励みになります。


『共に』をテーマにして書きました。


何かのパラメーターが0だからという理由で、理不尽な死が起こってしまう現象がもしあったら。そういったことを異世界転生にしてみました。


人にもしパラメーターというものがあったらという仮定です。


異世界転生ものを初めて書いたので、これが正解とは思ってないのですが。作者の思い描いている異世界転生はこれなのだということです。


リッピットラト星人はなぜ三大欲求が無いのか、それは転生してきた者がなるべく目的を果たしてくれるように補佐的な役割をしています。


それは常に側にいて見守るということです。その人が目的を果たしてくれるまで。


リッピットラト星ではストレスなく目的を果たせるようにしている。それは天使が理不尽な死を遂げてしまった人たちに対して、少しでも嫌な思いをさせないように。


主人公に起こる不自然な出来事は、ほぼ運のパラメーターが0ということで起こっているものです。


異世界に行ってもパラメーターは変わらない。生前のままで転生します。ですので主人公は病気にはならないし仲間はできやすい。


最後に主人公は運を手に入れたので、その主人公の魅力に周りは次第に気づいていくようになります。


参考にしたドラマや映画『レジェンドオブトゥモロー』や『ターミネーター2』などです。


ここまでお読み下さりありがとうございます。


最後に、この小説をお読みになって何かを感じ取ってもらえれば幸いです。


おんぷがねと。


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