エピローグ
その日は普段よりも一時間はやい、午前七時に館内放送が流れた。
ほとんどの人がまだベッドの中だった。そしていつもよりはやい放送に、寝返りをうった。もうすこし寝かせろと。
『たいへん長い間、ご迷惑をおかけしました。本日、午前八時より、太陽システムが回復いたします。しかし電力の復旧に』
!
復旧、の二文字に、人々の睡眠モードはふっとんだ。
『…はさらに一日かかる見込みで、都市の完全復帰は、あすをお待ちください。くりかえします、本日、午前八時より太陽システムが回復いたします……………………』
しずかだった暗やみの町が、あっというまに騒然とした。
まだ熟睡していた家族はたたき起された。ベッドから転がりでて、家具の角に身体をぶつけながら家を飛びだした。
そしてひさしぶりの太陽を点灯の瞬間からおがもうと、バルコニーにどっと人が押し寄せた。
群衆が、息をつめてそれを待つ。
時計の短針がカチリと数字の八を指した瞬間、有限の空の中心にパアアッと光が灯った。
ウェーブのように、感嘆のどよめきが広がり、エデン全体をゆるがした。
「たいようが…のぼったね」
『ホーム』の奥まったところにある、ワンルーム。
直接にはその光の届かない、暗い部屋に男は座っていた。かたわらには少女が一人。
だまって堪え忍んでいる彼を、少女はうしろからそっと抱きしめた。
いまだけ…。いまだけ、泣いてもいいよ。でも、あしたからは…ね?
きっと戦いはもう、はじまっているから。
ET IN TERRA
PAX
HOMINIBUS BONAE VOLUNTATIS
そして 大地には
すべての善良な人々に
平和が