ゼイ・アー・プラネターズ 3
「本当にすいません……」
「こんな気持ちなのかな。子猫って」
「ちゃんと反省してもらえない? ――本当に重ね重ねこんなのですいません……」
「まあ持ち主が気にしてねぇから、オレぁ構わねぇよ」
神妙な面持ちで、楽しげなマリの首根っこを捕まえ、連れてきて頭を下げるアイナへ、ザクロはマリに珍獣を見る目を向けつつそれを止めさせた。
「むしろこの無駄におめでたい結果に喜ぶぐらいはするからな」
「はあ」
「やあやあ、近づくとより華やかだねぇっ。やっぱり実験は爆発しないと始まらないや!」
「ほれ、この調子だし」
「????」
そう言うザクロも釈然としない様子で眉を動かしていて、アイナに至っては宇宙の真理を知った猫の様な顔をしていた。
「なんだい?」
「お前の器がデケぇって話」
「いやあ、そんな事は無いさ。祖母の教えの〝危なくないなら勝手に触っても怒らなくていい〟を実践しているだけだからね!」
「お、おう。そうか」
業務用掃除機のタンク上部にプロペラを付けた、中型のドローンを引き連れてやってきたミヤコは、怒るどころかめちゃめちゃ朗らかな表情をしていた。
「すごい。飛ばせるんだ。掃除機」
「おや、気になるかい?」
初めて飛行機を見て興奮する子どもの様に、宙に浮かぶ掃除機ジッと凝視しているマリを見て、ミヤコは楽しそうに彼女ににじり寄っていった。
「思ってたから。飛んだら面白いって」
「分かるよ。地上を走るロボット掃除機じゃ物足りないよね」
「上に乗れたりする? 普通のやつで進むみたいに」
「目指してるところはそれだったんだけれど、吹き飛ばしちゃ掃除にならないから妥協したんだ」
「ふふ。でも分かるよね。実験しなくても」
「いやあ、ボクも予想はしたんだけれど、実際に失敗してみないと分からない事ってあるからねぇ」
「無かった。その考えは」
「仕方ないさ、普通はそう考えるものだからね」
「ふふ。勉強になった」
「勉強ついでに、もっと細かい事を知りたくはないかい?」
「気になる。すごく」
「そういうことなら存分に話そうじゃあないか」
「ちょっともうマリ……っ」
「まずはコイツはただ飛ぶだけじゃあないんだ。――トランス・フォーム!」
「わ。着地した」
「面白いのはここからさ」
「ふふ。動いてる。変形ロボットみたいに」
「いくら相手が良いって言っても、一応謝らないと……」
「そう! あの底についた部分は、ああやって左右が伸びてキャタピラになるんだ」
「掃除するんだ。あの状態で」
「人間みたいな動きでノズルを動かして、指定した範囲を完璧にやってくれるよ」
「動かせないの? ラジコンみたいに」
「……」
「うーん、必要がないからってオミットしちゃったね」
「あらま」
もはやアイナの声は聞こえておらず、マリはミヤコが繰り出す機体の説明を極めて真剣な目で受けていた。
「なんつうかこう、先々で大変だろうなアンタ」
「いつもこんな調子なんですよ、本当に……」
謝らせる事をついに諦めた様子でため息を付いたアイナへ、ザクロはサインを書き終えた全書類を渡しつつ同情の声をかけた。
「かくいうウチのクルーもクセが結構――」
「クローさん!」
ザクロが少し愚痴ろうとしたところ、ヨルが手首の腕時計型端末からホロモニターに時間を表示しながらやってきて、
「そろそろ出発しないとお――ひゃあッ」
時間を知らせようとしたが、艦に乗り込む足場などを移動するレールの、へこんだ段差に引っかかって転びそうになった。
「あっぶねぇな。気ぃつけろよ」
予想して駆け寄る構えをしていたザクロは、倒れてくるヨルを胸で受け止めて両腕で確保した。
「すすすす、すいません……。もももも、もうそろそろ出発の……」
「わーってるよ、わざわざどうもな」
「はひ……」
顔を赤くして冷や汗をかき、わたわたと手を動かしているヨルへ、ザクロはその肩をポンポンと叩いて労う。
「クセが結構強ぇのがいてな」
「やっほークロー殿ー。なーにやら拙者に言及しそうな話題でござるな」
「噂をすれば影のこのメ――いてっ」
「おい」
「……このバンジなんかは特にな」
話を再開しようとしたところ、いつものロス・パンチョススタイル&ゴーグル型サングラスのバンジがひょっこりと現われ、本名をバラしかけたザクロの尻に蹴りを入れた。
「な、なるほど……?」
ソウルジャズ号クルーのパンチが強い面々を目にし、アイナは口を半開きにして瞬きをしつつそう言う。
「よし、これで君にも操作できるよ」
「本格的なやつだ。物理コントローラー」
「操作の説明はいるかい?」
「いらない」
「そうかい? ――おお、自由自在じゃあないか」
「得意だから。昔からこういうの」
その後ろで、ミヤコが持ち出してきたラジコン操作のドローンを、マリがゲームコントローラーを用いて宙返りやら背面飛行やら、縦横無尽に飛ばしていた。
「うわぁ」
「いたい」
「マリ!?」
「念のために柔らかい素材で作っておいてよかった」
「うん」
が、コントロールをミスして、マリは自分の顔面にドローンをヒットさせてしまった。




