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エピローグ

 『NP-47』第19-98駐艦場のソウルジャズ号リビングにて、休日かつ出かける用事も無いある日の昼下がり。


「なにもしないをする、ってどうやるんです……?」

「オレぁ、別に意識してるわけでもねぇし……」

「厳密に言えば、ボクも何もしてないわけでもないしね」


 仕事で不在のバンジと、だらけるという概念を持ち合せておらず、なんとか理解しようと形から入っているヨル以外が、各自ダラダラと過ごしていた。


「――じゃあ今日はこの辺で! ザ・ショーット!」

「『ザ・ショット』はご覧のスポンサーの提供でお送りしました。次は『ズームアップ経済』です」


 いつも通り、冗長で底抜けに明るく賞金首を紹介した昼の『ザ・ショット』が終わり、次番組のおふざけ一切無しの真面目な経済ニュースがスタートした。


「これ見たいヤツぁいるか?」

「あっ、私見たいです」

「ボクも」

「あいよ」


 ザクロは興味なさげな無表情でリモコン片手に訊くと、長ソファーにどっかり座ってだらける練習をするヨルは素早く、論文を読んでいたミヤコはゆっくり手を挙げて申し出た。


「トップニュースの前に、火星機械製造大手のスネーク・バレー社の記者会見をご覧ください」


 タイトルだけが表示される地味なオープニングが終わり、一礼したアナウンサーが静かな口調でそう言うと、スネーク・バレー本社の会見場が映し出された。


「ん? あのエセ侍、スネーク・バレーの社長だったのか」

「本当に〝誰とか今は良〟かったんだ……」


 ちゃんとスーツを着たモネの名前を見たザクロが、非常に新鮮そうな物言いをしてミヤコの苦笑いを誘った。


「私はある旧ノブモト社のファンから――」


 NPコロニー標準時で13時になると同時に一礼したモネは、先日、工場長に言ったことと同じ事を言ってから、


「――なので、社名をSVノブモト社として分社化し、スネーク・バレーのグループ企業とする事。また、廃盤としていた純正パーツの再生産を発表いたします」


 会社のスタッフが2人がかりで運び込んできた、板に掛かった白い布を剥がすと、中から上に小さく〝SV〟と足された、旧ノブモト社の筆文字ロゴが姿を現した。


「文句言ったの聞いてたのか……」

「そのようだね」

「おん? なんかあのエセ侍の名前でメッセージが来たんだが」

「どんなだい?」

「見たいです」


 それと同時に、ザクロの仕事用アドレスへ、モネ本人名義のメッセージが送られてきた。


 開いてみると内容の類いは一切無く、荒野でトドロキマルに乗ってコテコテのカウボーイ姿をする、ニヒルな笑顔のモネが写る写真が添付されていて、


「〝本物の『ロウニン』を見て、格好だけの自分が恥ずかしくなりました。なので『ロウニン』は廃業して、コスプレする社長として業務に専念します。〟だと」


 そこには、彼女のそんな決意表明のメッセージが添えられていた。


「へっ。調子の良いヤツめ」


 ザクロはそれを読み上げた後、テレビの向こうで質問に答えるモネを見て、腕組みをしつつザクロは笑い混じりにそう言った。

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