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執着のラブマシーン 5

 処理の関係で翌日の朝一番に出された手配書は、それなりに高額の賞金が出るため、ザクロ達を含めた『ロウニン』数十名が受託し、総勢30隻の一団となって教団コロニーへと移動していた。


「しっかし、たかがカルト宗教にハマったぐらいで、戦闘訓練まで行くとか酔狂なことで」

「暇と金を持て余している連中なんてそんなもんでしょ」

「金はいくら持て余しても問題ねえが、暇はろくな事にならねえからな」

「おう、そういや知ってるか? 例のバカのメントールのヤニ、メントール増量するらしいぜ」

「あ? タダでさえ暴力的なのにか?」

「一部の層には刺さったんだろうよ」

「またオバチャンに押し売りされるのか……」


 オープンになっている回線から、同業者達の雑談がひっきりなしに流れていた。


 ソウルジャズ号艦橋にいるのはザクロとバンジのみで、後の2人はそれぞれ自室にいて、ヨルは深呼吸して気持ちを作り、ミヤコは補助用ドローンの整備を行っていた。


「しかしお前、よくカルト教団なんかに紛れ込んで入信しなかったな」

「そりゃあもちろん、アタシにはそんなポッと出より、よほど信じられるものがあるからな」


 いつもの砂漠の民的な仮装はしているが、にんまりとそう言ったバンジはメアの喋りをしていた。


「オレを何だと思ってやがんだ。やめろ薄気味(わり)ぃ」

「良い事じゃねえの。人望があるってこった」

「そりゃそうだが指導者扱いはやめろ。オレのガラじゃねぇ」


 温かい目を向けてくるバンジへ、顔をしかめて追い払う様に手を振っているザクロだが、その口元にはうっすらと笑みが混ざっていた。


「――オレぁ冷てぇ地面で引っくり返って、血に溺れて死んでいくのがお似合いさぁ」


 またそんな事言ってやがる、とバンジから一笑に付されたザクロの、遠い目はほんの僅かの間だけ隣の空席へと向けられた。


 ゲートを経由すること3時間後。


「お、おいでなすったぜ」

「……なんか聞いてたよりしょぼくね?」


 コロニーの防宙識別圏に入り、迎撃に艦隊と戦闘機がやって来たが、戦闘機は民生品の非武装機に機銃をポン付けしただけ、艦船は3次大戦の放出品のオンボロという始末だった。


「うむ。拙者の見立て通りでござったな」


 やる前から結果が分かっている戦力差に、バンジは顔をしかめて小さく首を傾げて憐れむ。


 豆鉄砲をらったはとみたいにポカンとした『ロウニン』達だが、一応、規定通り名乗って戦闘に入り、


「ウチの10歳の息子でももっと動けると思うんよ」

「ない方が死なずに済んだだけマシだな」


 ものの5分で全滅し、生き残った穴ぼこだらけの艦は尻尾を巻いて撤退していった。


「まあ、ブービートラップっつう可能性もあっから、油断は禁物だぜ」


 先頭にいるザクロ機に続いて、戦闘機と艦船が慎重に小惑星を避けながら進み、特に何もないままあっさりコロニー本体近くまで接近に成功した。


「マジであの賞金額で良いのかね」

「ヌルゲー過ぎてお値段釣り合ってなくね?」

「教祖に従ってんだろうけど、なんか可愛そうになってきたな」


 宇宙揚陸艦を使っている、数人の『ロウニン』のそれに相乗りする『ロウニン』達は、大して戦闘らしい戦闘もなく、戸惑いの色が隠せない様子で各々顔を見合わせていた。


 護衛機と艦がその周囲を固めていたが、最初の戦闘以降、相手はただ単に逃げているだけで迎撃の動きすら見せていなかった。


 だが、いざコロニーに突撃して、先端の移乗用ドリルが格納庫のシャッターに突き刺さり、中心の円筒の通路から『ロウニン』達が乗り込んでくると、


「うおっとっと」

「チッ、無警告で撃ってきやがった!」


 通路入り口でバリケードを作っていた信者兵が、てんでバラバラの狙いで『ロウニン』達へ銃撃して来た。


「そっちがやるってんなら、遠慮は要らねえな!」


 だが、『ロウニン』達から即座に反撃され、信者兵は軽傷すら与えられずにバタバタと倒れた。


「じゃ、陽動部隊が暴れてる間に、ちゃっちゃとやっちまうか」

「了解でござる」

「あいよ」

「おう」

「へいへい」


 派手にやっている表とは逆に、コロニーの裏手から警備兵をして中に入ったザクロやムサシなど、特に実力者の『ロウニン』達数名が、教団の指揮所へ奇襲をかける。


 ちなみに、逃げ出す者を逃さない為に、コロニーの周辺でヨルやミヤコを含む人員と艦が待機していた。


「おら、手配書出てっから大人しく――するわけねぇか!」


 ザクロが紙の書類を掲げつつ、廊下にいて失神している警備兵を盾に入ったが、当然相手はビーム拳銃を手に、捜査会議の様に並ぶデスクへ隠れて応戦してくる。ザクロは警備兵を前方へ放りつつドアの横に隠れた。


「勝ち目のねぇ戦いで死にたくはねぇだろ? 大人しく手ぇ上げて投降すりゃ殺しはしねぇぞ。少なくともオレたちやぁな!」


 嵐のように弾が飛んでは来るが、幹部も大概素人なのであっちこっちに被弾し、弾幕にしても無駄弾だらけになっていた。


 その隙を縫って、『ロウニン』達がドアの脇から顔を出して銃撃すると、真っ直ぐ幹部達の居る位置のすぐ後ろにある机の天板に着弾し、


「と、投――」

「裏切るのか! この異端め!」


 左の列にいたいかにも小心者な中年男が、腰を抜かして銃を落としつつ手を挙げて投降したが、すぐ横にいた若年女に撃たれて耳が無くなった。


「おいおい、愛もクソもねえな」


 ビーム拳銃のガリガリとやかましい発射音に紛れる、中年男の喚き声と若年女の罵声を聞いたムサシが眉をひそめてゆっくりと首を振った。


「あっ、当たっちゃった」

「まあ事故だ事故」

「うわきったね」


 だが、銃撃戦中にも関わらず頭を出したままそういうことをしたので、大型ビーム拳銃弾が頭に直撃して汚い花火になってしまった。


 そのグロテスクな光景を目にした幹部4人が、かがみ込んで嘔吐おうとしたため左列からの銃撃が止まった。


 間もなく、右列の幹部5人の拳銃がエネルギー切れを起こし、一斉に高エネルギー電池交換を始めるが、全員がもたついている内に『ロウニン』達が突入し、まとめてあっさり捕縛された。


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