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ゲートウェイ・グリーン 6

 すでに視界外へと去っていたグリーンメサイア号を、レーダーを頼りに追いかけつつ、取り決め通りの方式に変更、という意味で、宇宙海賊へ向けて2回連打して止め、もう2回連打する。


 数分後に、宇宙海賊側から先程と同じ間隔で返事が返ってきたところで、グリーンメサイア号とワープゲートのリングを有視界内に捉えた。


「ヨル! オレとメアは出撃っからゲート横で待機! ミヤコはオペレーション!」

「あっ、はいっ!」

「了解」


 大義名分を得たザクロは、素早く指示を出しつつバンジと共にヘルメットを被り、格納庫から順番に発進した。


 そのままトロヤ群方面ゲートを潜っていく、グリーンメサイア号を追いかける。


「おら待てテメエら!」

「あら、先程の『ロウニン』さん。一体今度はなんのご用かしら?」

「ママッ。また僕たちに懸賞金がついてるよッ」

「な、なんですって?」


 ザクロからの呼びかけに対して、カツウラは扇で口元を覆いながら、余裕綽々《よゆうしゃくしゃく》でザクロへ言ったが、部下から指名手配情報を見て泣き声で報告され、ギョッと目を見開く。


「とにかく全速力で逃げなさい!」

「わ、分かったよママ!」


 うろたえつつも指示を出された部下は、エンジン出力をマックスにして、ザクロ達を振り切ろうと加速していく。


「ここから逃げても、お前らは鬼より怖ぇ連中に宇宙の果てまで追っかけられるんだ。大人しく捕まりやがった方が後々楽だぜ?」


 速力に勝るザクロ機は余裕で右横に位置どり、無線で呼びかけてグリーンメサイア号を止めにかかる。


「どうするのママ!」

「ハッタリで言ってるだけだから耳を貸さないの! あのミサイルを使って追っ払って!」

「あれって、まだ隠さないといけないんじゃ……」

「遅かれ早かれ見せるんだし、もう出しちゃっていいから!」

「なんか、ミサイルとか撃ったらダメとかなかったっけ!?」

「建前でそうやって言ってるだけだからいいの! この前も別に機銃撃ってもなにも起きなかったでしょ!」


 額に油汗が滲んでいるカツウラの指示に、分かった、と部下の男は応えて、ミサイルサイロから追ってくるザクロ機バンジ機を狙って2発発射した。


 それは先端から3分の2程までが2つに割れ、更に中から子ミサイルを20発ずつ発射した。


「ゲッ! マジかッ!」


 ワープ空間内で放たれた危険極まりないそれを見て、ザクロは青い顔で右上方向に急旋回し、空間境を示す蛍光オレンジのネット状ホログラムに左翼を擦らせつつ、ピッピッ、という警告音を聞きながらワラワラと追いかけてくるミサイルから逃げる。


「うわっ」


 少し遅れて追跡していたバンジ機も、ザクロ機の後ろに迫る、糸を引く子ミサイルの大群を目視して同じ様に引き返す。


 子ミサイルが飛んでいる周辺にある空間境ネットが、その放出されるエネルギーの余波を受け、ぐにゃりとにゆがんで警告を示す強い赤みを示していた。


「ミサイル程度ですぐ引き返すなんて、『ロウニン』さんたちは勇猛果敢ときいていたけれど、あなた達は随分と腰抜けじゃない!」


 尻尾を巻いて逃げているように見える様子に、カツウラは口の端を引きつらせながら、余裕ぶった高笑いで2人に大して煽る。


「アイツらバカなんじゃねぇか!? 火器使用厳禁とか初歩中の初歩だろがッ!」

「まあ、バカは話を聞かないものでござるから……ッ」


 それに一切反論することもなく、ザクロは余裕の無さげに顔をしかめ、バンジへ通信で愚痴りながら、


「バカに巻き込まれて死ぬ思いする身にもなれってのッ!」


 真っ直ぐ飛んで追いついてきたミサイルを宙返りして回避し、背面飛行から素早く通常飛行に戻しつつ機銃を1発だけ撃って破壊した。


「うわなん――。消えた……?」


 その際、子ミサイルの中に入っていた、ウィルスを含む白い霧がザクロ機の進路上に広がるが、爆発のエネルギーの影響による空間のゆがみで、運良く明後日あさっての方向へ瞬間移動した。


 直後、計器が空間の歪みを検知して警報音が激しく鳴り響き、余り気にする間もなくザクロは左に大きく旋回してしてそこから音の間隔が広くなる位置まで離れる。


 さらにその異常な歪みをゲートが検知して、危険回避のために3分後にゲートを閉じる事を知らせる自動音声が、位置情報回線経由でザクロ達へ流れてきた。


「畜生ッ! メア! 牽引けんいんすっぞ!」

「あいよ!」


 バンジ機の最高速ではその時間までに出られる距離になく、ザクロは機尾にある兼引用フックを流し、バンジ機はロボットアームでそれをつかんで引き込んだ。


「間に合えーッ!」


 ゲートから見える通常空間が狭まっていく出入口めがけて、ザクロ機とバンジ機はエンジン全開にして空間内を突き進む。


 後ろを着いてきている子ミサイルは、いくつかは停止して離脱してはいるが、2機の背後をピッタリと追尾してくる。


「大丈夫です、よね……?」

「だとは思うけれど……」


 残り時間が1分を切ったところから、ゲート脇にいるソウルジャズ号艦橋から、ヨルとミヤコが固唾を飲んで完全に閉じようとしているそれを見つめていると、


「あっ、出てきた」


 ゲートが閉まるギリギリのタイミングで、2機共ゲートの外への脱出に成功した。


「流石に死ぬかと思ったぜ……」

「はーやれやれ……」


 2機同時に逆噴射して減速しつつ、2人は天を仰いで安堵のため息をつく。子ミサイルが亜空間へ迷い込み、その横をシルエットだけになったそれが追い抜いていった。

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