8.誰かの夢
おそらくこれは夢なのだろう。ここは小学校のようだ、見覚えはないが校庭で、男女が関係なく遊んでいるのが見える。教室の窓から校庭を眺めていると声をかけられている。
「こんにちは、妻田君……夢で逢うなんて今日話したせいかしらね」
「え……? 黒川か」
「もう、私の夢なのになんで当たり前の事を聞くのかしらね」
そう言って彼女は柔らかい笑みを浮かべているのは小学生の姿の黒川だろう。幼いが綺麗な顔と白い肌には面影がある。彼女は今の無表情とは違い、笑みをうかべているが不思議と違和感は感じなかった。おそらくこの頃はこれが自然だったのだろう。
「このころはよかったわ。男女なんて関係ないんですもの。異性なんて気にしないで遊べたわよね」
「黒川……?」
そういう彼女はまるで眩しいものを見るように校庭で遊んでいる男女を眺めている。よく見るとそこには黒川も混じっているが、今とは違いまるで普通の少女のように笑っていた。ああ、そう言えば五月雨も言っていたな。中学の一年までは男嫌いではなかったのだと。ならば中学の頃に何かがあったのかもしれない。
「今日は色々な事があったわねあなたと話して、ナンパから助けてもらって、ぬいぐるみもとってもらっちゃたりして……まるであなたの言うラブコメのヒロインみたいだったわね。実はね、ゲームセンターで絡まれた時結構こわかったのよ。だから助けてもらって嬉しかったし、その……短い時間だけど一緒にクレーンゲームで遊べて嬉しかったの。だから、ありがとうね、妻田君。なんてね、現実世界で言わないと意味がないのにね」
そう言うと黒川は柔らかい笑みを浮かべる。その笑顔を見て俺のなかで去り際の寂しそうな黒川の表情が思い出される。彼女は本当はこんな風に遊びたいじゃないか? だったら彼女が何かを悩んでいるかはまだわからない。だけど、仲良くなることはできるんじゃ……そう思った俺はいつの間にか自分の気持ちを口にしていた。
「だったらまた遊ぼうぜ。五月雨も黒川の事は嫌いじゃないし、中村もアホだけどわるいやつじゃないんだ。黒川さえよかったら……」
「それはダメよ……私とは必要以上にかかわらないほうがいいわ。あなたも不幸になるもの」
そう言って寂しい顔をしながら首を振る黒川から放たれたのは拒絶の言葉だった。俺は何と答えればいいかわからず、言葉に詰まる。そんな俺を彼女は申し訳なさそうな表情で見つめていた。そして、口を開く。
「ありがとう、あなたと話してちょっとすっきりしたわ。私ね、召喚してくれたのがあなたでよかったって思ってるのよ。あなたは言動こそアホだけど優しいわよね。今回だって私が嫌がる事を順守権を使って命令しようとは一切しなかったし、私がサキュバスだっていっても引かないで接してくれて嬉しかったのよ。もしも、私が普通の女の子だったら友達になれたかもしれないわね。なーんちゃって」
そう言って黒川はウインクをしてきた。その姿はまるでいつもの無表情な彼女とは違い普通の少女の様で場違いとは思いつつもついドキドキしてしまうのであった。
目が覚めた俺は自問自答する。あれはなんだったのだろう。黒川の事を考えていたから変な夢をみたのだろうか? だけど、あの黒川は昔の黒川で……なぜだろう、理屈ではないけれど、彼女の本音だった気がしたのだ。
続きを見ようともう一度寝たら猿山先生に襲われる夢をみた。しにてえええええええええ!!
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