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7.ラブコメのようにはいかないらしい

 俺は唐突な黒川との再会に一瞬フリーズしたが、金髪の男が黒川の手を掴もうと動いたのをみて止めに入る事を決意する。黒川は異性に近付かれるのを嫌がっているからな。五月雨には店員を呼ぶように伝えさっそくナンパの邪魔をすることにした。



「いいじゃん、ちょっとだけだって言ってるだろ」

「触らないでって言っているでしょう!!」

「やめろよ、俺の彼女に何をするんだ」



 いきなり割って入った俺に黒川と金髪の男の視線が集中する。ふ、どうだ。これこそラブコメで学んだ知識を総動員した救い方である。あとは黒川が話をあわせてくれれば……



「え、、こいつお前の彼氏なのか?」

「いいえ、違うわ、私に恋人はいないし、できたこともないもの」

「え、うっそでしょ」



 怪訝な顔をする金髪の男の言葉を黒川が一刀両断して否定した。いや、確かにそうなんだけど、ここは話をあわせるところじゃないの? 俺がどうしよと悩んでいると金髪の男がこっちに話を聞いてきた。心なしか俺をちょっとかわいそうな人をみるような目でみている。

 


「彼氏……じゃないのか?」

「あ、はい、本当はちがいます」

「じゃあ、お前は本当になんなんだよ!!」



 金髪の男のセリフももっともである。ただのクラスメイトというには彼女の秘密を知ってしまっているし、友達というほど親しくはない。俺がどう説明しようか悩んでいると、黒川が口を開く。あれ、ちょっと笑ってない?



「そうね……強いてあげればマスターかしら」

「え、お前らそういうプレイしてるのか? その……邪魔してわるかったな」

「ちょっと、待ってすごい誤解をされた気がするんだが!!」



 黒川の言葉を聞くと金髪の男はひきつった顔でいってしまった。確かに、マスターだけど、絶対違う意味のマスター……それこそSとMみたいな関係だと思われた気がするんだが。



「妻田君まずは助けてくれてありがとうと言われてもらうわ。万が一サキュバスの力が発動したら大変だったもの」

「ああ、気にしないでくれ。女の子を助け……」

「でも、いきなりの彼氏づらはどうかと思うわ。人によっては不快に思われるから気を付けたほうがいいわよ。現実はラブコメのようにはいかないの」

「いきなり辛辣!!  デレツンかよ!! でも、今後は気を付けますね!!」



 これもダメなのか……まさか俺のモテるためにラブコメやエロゲで勉強してきたのは間違いだったのか……いや、違うはずだ……きっといつか俺の努力が報われ……



「妻田君……野球をうまくなるためにサッカーの練習をしても無駄なのよ」

「待って!? 今俺の考え読んだの? サキュバスとマスターってそんなこともできんの?」

「いえ、あなた時々思っていることを口にだしているから気を付けたほうがいいわよ」

「ここでーす。ってあれ、もう解決してました?」



 俺と黒川が話していると五月雨が店員さんを連れてきてくれたようだ。そして、黒川が慣れた感じで事情を説明している。やはりあれだけ美人だと、ナンパも結構あるんだろうな……待って、今写真を見せてたんだけど……いつの間にかナンパ男の顔とってたんだよ……絶対敵に回さないようにしよう……

 店員にお礼を言って一息ついた黒川に声をかける。



「それにしても黒川もこういうところにくるんだな」

「すいません、今忙しいからナンパはちょっと……」

「おかしいよな!? 俺今ナンパから助けたよな? あ、もしかしてこれもナンパになるの?」

「冗談よ、私だって、学校から帰って寄り道位するわよ、放課後くらい息を抜きたいもの」

「あ、黒川先輩もこれ好きなんですね。これ可愛いですよね」



 真面目だからそういうのには興味ないと思っていた黒川のちょっと意外な一面がみえたなと思っていたら、彼女の後ろのクレーンゲームを五月雨が指を差した。中身はどうやら可愛らしいパンダのぬいぐるみのようだ。

 ちょっと意外だななどと思っていると、視線を感じたので振り向くと、黒川が少し、顔を赤くして俺を睨んでいた。



「なによ、私が可愛いキャラ好きなのがおかしいかしら」

「別におかしくないだろ。よかったらとろうか? こう見えても結構得意なんだぜ」

「悪いわ……だって私はあなたにとってもらえるようなことしていないもの」



 俺の言葉に黒川は申し訳なさそう首をふった。だけどな、俺はとりたいんだよ。なぜなら……



「頼む、黒川……とらせてくれ……こういうのってラブコメでよくある好感度あげイベントだから練習したんだが、うまくなったらいいけど肝心のゲーセンデートする相手がいないことに気づいたんだ……お礼なら、ありがとう妻田君ってほほ笑むだけでいいから!! それだけであの日々は無駄じゃなかったんだって思えるんだよ!!」

「練習する前に気づくべきだったわね……あと必死すぎて怖いんだけれど……」

「私からもお願いします。この人何にも取り柄がないからって一生懸命練習したんです。おかげでうちはぬいぐるみだらけになりました……」

「なんで中村さんまで悲壮な顔しているのよ……でも、そうね、それならやってもらえるかしら? もちろん私がお金を払うわ」

「まかせろ!! ついでに好感度もあがってくれ!!」



 俺はクレーンゲームを前にさっとボタンを押す。黒川のやつ結構金をつぎ込んでたな? 初期位置からはだいぶずれているようだ。そして俺の操作するアームがパンダのぬいぐるみを落下穴におしやった。



「どうよ!!」

「翔先輩本当にこれだけは得意ですよね」

「私初めて妻田君をすごいなって思ったわ。ありがとう妻田君」

「二人とも素直にほめてくれない? 何でディスられてんの?」

「いや、なんか翔先輩を素直に褒めると調子に乗るじゃないですか」



 五月雨があきれたように言う。くっそ、心当たりがありすぎて何にも反論できない……五月雨と俺をみて黒川が少し、驚いたように言った。



「妻田君と中村さんは本当に仲良しなのね。まるで……家族みたいね」

「ああ、幼馴染だからな。なあ、五月雨」

「よかった……恋人見たいとか言われたら自害するところでしたよ、黒川先輩」

「俺だってお前みたいなクソガキはお断りだっての?」

「はぁー? こんなかわいい女の子を前に何を言っているんですか!?」

「ふふ、本当に仲良しなのね」



 言い合いを始めた俺達を見て黒川はクスッと笑った後に少し寂しそうな顔をして、小さくつぶやいたのを聞き逃さなかった。



「私にもそんな人がいたら少しはましになってたかしらね」

「黒川……?」

「なんでもないわ。ぬいぐるみありがとう。私はそろそろ帰るわね」



 俺はどんな言葉をかければよかったのだろうか? 彼女が何を悩んでいるかもわからないというのに……そして彼女の表情がこれ以上踏み込むのを拒絶していた気がしたのだ。結局黒川の背を見送ることしかできなかった。ああ、くそ、ラブコメの主人公だったらここできっと気のきいたセリフでも言うだろうに……



「翔先輩、なんだかんだ黒川先輩と仲良くなれたみたいですね、だけど調子に乗っちゃダメですからね。あの人怒らせたらこわいですからね」

「わかってるっての!! むっちゃ無表情で延々と罵られそう……」

「その……黒川先輩は良い人なんですけど、男性が苦手なんですよ。だから壁があるなって思っても気にしなくてもいいと思いますし、むしろ、異性で一番仲良くなってると思いますよ」

「そうか、ありがとう、五月雨……」


 最後の表情が気になったのは俺だけではなかったのだろう。五月雨が心配するなと慰めてくれる。そして俺たちはアイスを買ってきた中村と合流して帰路につくのあった。




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