エピローグ。ラブコメのその先へ
あれから一か月の月日がたった。俺はいつものようにだるいなぁと思いつつ、席にすわる。
「おはよう、昨日は楽しかったねぇ、黒川さんって結構歌うまいよね」
「おはよう、中村。まったくだよ……点数勝負何てするんじゃなかった……」
いつものように挨拶をしてくる中村との会話で昨日の事が思い出される。五月雨も含めた四人で、カラオケに行ったのだが、話の流れで挑発してきた五月雨とカラオケバトルになり、中村と聖も乗ってきたのだ。結果は俺の最下位で、全員分のドリンク代をおごらされてしまった。おかげで今月はおこずかいがピンチである。
「無料のジュースは美味しかったなぁ……そういえば課題はやってきた? 今日席順的にあたるでしょ」
「げっ、やべえ……忘れてた……」
俺は中村の言葉に絶望をする。俺は立ち上がって救世主の方へと向かう。彼女は相も変わらず一人で何かの本を読んでいる。官能小説じゃないよな? などと思ったが口にしたら殺されそうだ。
「聖様ー、私めにお恵みを……課題を忘れてしまったのです。なにとぞお助けを……」
「あなたねぇ……まあ、いいけど。今度ちゃんと理解しているか確認するわよ」
俺が土下座する勢いで頭を下げると聖がわざとらしくため息をついて、俺にノートを貸してくれる。綺麗な字で書かれたノートは要点もあってわかりやすいのである。すると便乗するかのように近くの席の女の子も声をかけてくる。
「ごめん、黒川さん……私もいいかな?」
「吉田さん、部活も大変かもしれないけど気を付けてね。どうぞ」
「ありがとう、今度お礼にジュースおごるね」
俺の横からのぞき込むようにクラスメイトの吉田さんも黒川のノートを見る。俺が大げさに黒川に頼んだり、中村とかも含めて、会話するのを聞いているうちに、聖のとっつきにくいイメージもなくなってきたのか、最近では女子とも結構話すようになったのだ。今度カラオケに行くとも言っていたし、順調そうである。聖は俺のおかげと言っているが彼女が変わったのが一番大きいだろう。サキュバスの事がなくなったのか、以前のような素っ気なさがなくなったのである。
てかさ、ちょっと近いよ、吉田さん……大きな胸が当たりそうに……などと思っていると、俺は足に激痛を感る。自分の足元をみると思いっきり踏まれていた。踏んでいたのはもちろん……
「デレデレしてだらしないわね。吉田さん、気を付けて。そこの変態がラッキースケベを狙っているわよ」
「え……? 嘘……最低」
殺意に満ちた目線で睨みつけてくる聖だった。いや、しょうがなくないか? これは事故だっての……そして、聖の言葉で、吉田さんがさっと離れた。やっべえ、露骨に好感度さがったじゃん。しかもノート持っていかれたじゃん。
「聖……そういうこというなよな……」
「あなたが嫉妬させるようなことをするからでしょう。私以外とのラブコメは禁止よ。でも、こういうのもあなたの好きなラブコメでよくあるでしょう? ちょっとテンション上がってたりして?」
「いやまあ、確かにラブコメっぽくて青春だなとは思ったけど……」
「ほら、思った通りね。まあ、お詫びではないけれど、今日のお昼はハンバーグよ。ぜったいお母さんのより美味しいっていわせてみせるんだから」
そう言って彼女は熱意を燃やすのだった。どうやら彼女はお母さんの作ったハンバーグを褒めたことを根に持っているらしい。定期的にハンバーグの味見をさせられるのだ。しかもうまいんだよなぁ。あ、これは惚気です。
「それで……課題をみせるかわりにあなたは何をしてくれるのかしら」
「あー、駅前のクレープとかどう? おごらせていただきます」
「いいわね。楽しみ。」
そう言って彼女は本当に嬉しそうに笑う。今月のおこずかいがさらにピンチになるが、この笑顔をみれるのなら安いものだ。
「何よ、笑って。私とデートできるのがそんなに嬉しいの?」
「そりゃあな。これからもよろしくな。愛してるぜ、聖」
「あの……ここ教室だからあんまりイチャイチャしないほうがいいんじゃない?」
ノートを返しに来た吉田さんの言葉で顔を真赤にする俺達であった。
「翔君の馬鹿!! あなたのせいで恥をかいたじゃないの!!」
「いや、聖もデレてたよな? 俺だけのせいじゃなくない?」
俺は羞恥で顔を赤くしている聖に睨まれるのであった。彼女と一緒に過ごして思う。ラブコメは付き合ったら終わるのが大半だけれど、実際はその先が色々あるのだ。そして……その先こそが楽しいのかなと思う。
これにて完結になります。お付き合いいただいた方ありがとうございました。今後も小説は書いていくので、他のも読みたいなって思ったらお気に入りユーザー登録していただけると、新作を上げた時などに通知がいきますのでぜひ、お願いします。
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