41.翔と五月雨
「すいません、取り乱しました……」
俺の胸元で泣いていた五月雨だったが、ようやく落ち着いたらしい五月雨は目を赤くしながら、恥ずかしそうに「えへへ」と笑う。いつもの意地の悪い笑みではなく、彼女の恥ずかしそうな笑みに少し、ドキリとする。というかこいつは俺の事を本気で心配してくれたんだなという思いが先だって愛おしくなる。もちろん、妹的な感情だが……
「いや、こっちこそごめん、こんなにマジで心配されるとは思わなかった」
「心配しますよ!! 知ってると思いますけど、サキュバスは男の精気を全て吸い尽くして殺すんですよ。わかっているんですか!! なんでサキュバス召喚をしたんですか」
落ち着いてせいかまた、怒りが湧いてきたらしい五月雨に怒られる。実はサキュバスってエッチだな程度の知識しかなかっだよな……聖も言っていたけど、サキュバスとエッチな事をすると、死ぬらしいな……さすがに彼女が欲しいからサキュバスを召喚したとは言えなそうな空気である。
「まあ、先輩の事ですからどうせ彼女が欲しいとかなんでしょうけど」
「しってるじゃねえかよ、五月雨!!」
「この前言ってたましたし、お兄ちゃんが馬鹿にしてましたよ……以前聞いたときは冗談だと思ってましたが、本当にそんなあほな理由で召喚したんですか……そんなに欲しいのなら、その……先輩がどうしてもっていうなら私が友達を紹介してあげますから、もう、そこまでして彼女を求めるのはやめてください」
「あー、前言っていたのはそういう事だったんだな。俺の事を心配してくれてありがとう」
無茶苦茶すねたかおをしている五月雨に俺は突込みをいれる。こいつはいつもは憎まれ口ばかりだけど俺の事を本当に心配してくれているんだよな。俺が彼女の頭をなでるといつもとは違いされるがままにしている。俺が事情をはなさなかったばかりに五月雨に心配をさせてしまった。ここまできたのだ。事情を説明すべきだろう。それに、このままでは聖が悪者になってしまう。
「とりあえず、俺の話を聞いてくれるか? あ、あと制服ぬれてるからこれを使ってくれ」
「あ、それってなんかラブコメっぽいですね。翔先輩の言動ではじめてきゅんと来ました!!」
「苦節何百回もやってようやくワンヒット!?」
そして俺は五月雨に教室で抱き着いていた経緯を話す。もちろん聖には全部話して言いという確認はとってある。俺がサキュバスを召喚した事、サキュバスと召喚者の関係、そして、聖の悩みと俺の宣言、抱き合っていた理由などだ。最初は興味深そうに聞いていた五月雨だったが、後半になるにつれて顔が険しくなっていた。話せることは全部話したが信じてもらえただろうか?
「大体事情はわかりました。そのサキュバスの同人誌みたいな設定のせいで抱きついていたって事でいいんですよね。それ以上エッチな事をしなければ翔先輩の命は大丈夫なんですね」
五月雨が少し緊張した表情で確認をする。よかったわかってくれたみたいだ。俺は安堵の吐息を漏らす。
「ああ、そういう事だ……でも、よくこんな話を信じてくれるな……」
「まあ、兄が読んでいる同人誌でよく見る設定ですからね。しょっちゅうアストルフォとぐだ男が魔力供給してますよ」
「中村の性癖!! あいつ男の娘好きなのかよ!!」
衝撃の事実である。俺のお尻狙われてないよな。いや、俺は中世的ではないから大丈夫か? エロゲだったら隠しルートみたいになりそうだな。中村ルートみたいな。ちなみに俺はメルトリリスが大好きです。冷たく罵ってほしいね。
「そして……黒川先輩がそんな風に悩んでいたなんて……私ひどい勘違いをしちゃった……翔先輩が黒川先輩のサキュバスごっこに付き合わされてもてあそばれているなんておもって……よく考えたらあの人がそんな事をするはずがないのに……」
そう言うと彼女は今にも泣きそうな表情で顔をうつむかせる。そんな彼女の頭をポンポンと叩いて安心されるように撫でて言う。
「そうだな……確かにさ、聖に失礼な事いったよな。でも、五月雨はそれを後悔してるんだろ。だったらちゃんと謝ってみようぜ。聖ならちゃんと謝ればわかってくれるよ。それでさ……もしよかったらあいつの友達になってくれた嬉しいな」
「はい、頑張ってみます……」
「ああ、もしも一人が気まずいって言うならさ、俺も付き合うぞ。だからそんな不安そうな顔をするなって」
「はい……ありがとう、翔兄!!」
そして俺は聖に解決した旨を連絡して帰宅の準備をするのであった。ちなみに残った牛乳は俺と五月雨で飲み干しました。
この時の俺は聖が屋上を出るときの表情の意味をちゃんとかんがえていなかったんだ。もしきづいていればもっとましな事を連絡できたのかもしれないのに……
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