37.乱入者
今日も今日とて俺は聖が出て少し経ったタイミングでいつもの特別教室へ向かう。最近、何人かの男子が察しているのか羨ましそうな視線を向けてくるのは気のせいではないだろう。まあ、毎回タイミングずらしてお昼行ったり、教室でちょいちょい話しているのが目撃されているのだ。俺と聖の関係性を疑うやつらが出てもおかしくはない。現に中村も何人かに聞かれたらしいしな。
しかし、現実は俺達は恋人同士というわけではなく、召喚者とサキュバスであり友人同士である。いやぁ、そりゃあさ、俺だってお弁当作ってもらったり、家に招待されているんだから、もしかしたらって勘違いもしたくなるよ。だけど、俺は彼女に惚れるわけにはいかないのだ、惚れたら死ぬしな。それに……彼女はそういう前提があるから、俺に心を開いているっていうのもあるのだろう。だから……しばらくはこのままの関係でいいのだ。
「入るぞー」
「ツーン」
扉を開けた俺を出迎えたのは無表情に澄ました顔をして本を読んでいる聖だった。彼女は一瞬俺の顔をみた後に、わざとらしく一言言って本を読み始めた。あれ、マジで怒ってるのか?
「いや、聖、まさか、あそこでサキュバスっぽいって言うわけには行かないだろ。怒るなよ」
「別に怒ってないわよ、どうせサキュバスっぽくないサキュバスですもの。吉田さんみたいにグラマラスじゃなくて悪かったわね。そういえばお母さんの事もハレンチな目でみていたけど、翔君はそういう子が好きなの?」
「いや……好きか嫌いかで言われたら好きだが、俺はグラマラスな女性も、スレンダーな女性も、ツンデレもヤンデレも、みんな好きだぞ。女子はみんながみんな誰かのラブコメヒロインになれる可能性を秘めているからな」
「早口でしゃべるオタクみたいできもいわね」
「相変わらず辛辣ぅぅぅぅ!!」
俺の言葉に聖は意地の悪い笑みを浮かべた。だけど、この顔をしている感じ本気で怒ったわけではないのだろう。俺はほっと一息つく。そして、彼女はからかうように言った。
「あなたは……女子はみんなラブコメのヒロインになれるって言ってたけど、口が悪くて愛想のないサキュバスの血を引く女子でもなれたりするのかしらね?」
「当たり前だろ、それと聖は口が悪くて愛想のない女の子じゃねえよ。真面目そうだけど意外とノリが良さくて、表情にはでないけど誰よりも優しい、むっつりサキュバスだよ。すごい魅力的なヒロインだって!!」
「誰も私の事とは言ってないでしょう? あと今女の子があえて欠点を言ってそれを否定するというラブコメにありがちなセリフをいったわね。そのくらいで嬉しがるチョロい女だとおもったのかしら?」
「キメ台詞なのに茶々いれるのやめてくれない!? 王道パターンだから仕方ないだろ。それに本音だし……」
確かにラブコメにありがちという事もあり俺のいつか行ってみようと思っていたからちょっと考えてはいたけどいざそういう言われると無茶苦茶恥ずかしいなと思う。でもさ、俺の本音って言うのは嘘じゃないんだが……
「そうね……王道だけあって効果はやばいわね、あなたも結構イケてるわよ」
「素直にデレると可愛いな!!」
「はいはい、そんなことより今日のお弁当よ、本当は電子レンジで温めた方が美味しいんだけどね、流石にそんなことで職員室のお世話になるわけにはいかないもの」
「おお、ありがとう!! 今日のおかずは何かな」
俺は楽しみにしていたお弁当箱を開けると中には焼き野菜にマッシュポテトとハンバーグが入っていた。今回は本当に昨日の残り物らしい。だけどすごい美味しかったからありがたい。俺は早速一口食べてみると違和感を感じる。
「これ昨日と味が違うな……あれ、ソースだけじゃない。なんだろう……」
「ふーん、なんでも美味しいって言ってるけどそれくらいの違いはわかるのね。昨日とどっちが美味しいかしら?」
そう言って彼女は興味なさそうな顔をしながらちらちらとこちらを見ている。それ俺はぴんと来てしまった。もしかして、こいつわざわざ自分で新しく作ったのか?
「聖って結構負けず嫌いだよな、今日の方が美味しいよ。あっためたらもっと美味しいんだろうな……」
「まったく変なところで勘が鋭いのね。そこはあなたの好きなラブコメの主人公みたいに鈍感っぷりを発揮しなさいよ。でも、そうね……お母さんもあなたを気に入ったようだし、よかったら、またうちに遊びに来なさいな。今度は私があなたに出来立てのハンバーグをごちそうしてあげるわ」
そういうと彼女はちょっと恥ずかしそうに言った。いったいどうしたんだろう? 今日はなんか機嫌がいいようだ。俺なんかやったかな?
「じゃあ、抱き着かせてもらうわね」
「あ、ああ……」
「もちろん約束は忘れていないから安心しなさいな。ただ……そのあの格好で抱き着くのは恥ずかしいし、あの姿になるのは結構疲れるのよ……」
そう言って聖ははにかむような笑みを浮かべると、ぎゅーと抱き着いてきた。なんだろう、いつもより抱き着く力が強い気がするんだが!! そのせいか聖の胸が俺の胸におしつけられてやばいっての。これは猿山の裸ぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 俺は必死に違う事を考える。
「はぁはぁ、しないでほしいんだけど。吉田さんみたいにグラマラスじゃなくてもいいんだ?」
「うっせえー、聖はなんでそんなに冷静なんだよ」
「冷静なわけないでしょ……こっちだって恥ずかしいのよ。必死に冗談っぽくしてるんじゃないの」
よく見ると彼女の顔は真っ赤になっている。そうか、彼女も意識してくるんだ。そう思うと少し嬉しい自分がいた。
「神聖な校舎でなにをやってるんですかぁぁぁ、翔先輩の変態!!」
俺達が抱き合ってしばらくしたときだった。乱暴に扉が開けられて、五月雨が入ってきた。
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