33.黒川さんの家3
聖のおススメの映画を観終わった俺はちょうどいい時間になったので帰りの準備をする。ていうかさ、聖のやつと触れそうで触れない距離感でちょっとドキドキしてしまい、映画に集中何てできなかった。これが普通のラブコメだったらフラグが立っているんだろうが、俺達はお互いが恋をしたらバットエンドという制約がある。これが彼女の素なのだろう。
「じゃあ、今日はありがとう。むっつり……じゃなかった。聖」
「あなた私を馬鹿にしているでしょう? あなただってそういうのを見る癖に……」
「そりゃあ、見るさ、今度おススメを教えようか?」
「結構よ!!」
そういうと彼女は親の仇でもみるかのように俺を睨むつけてきやがる。だけど、彼女がどんどんと素を出してくれているようでうれしかった。
「あらあら、帰っちゃうの? よかったらうちで晩御飯も食べてたらどうかしら?」
俺と聖が玄関で話していると聖のお母さんに声をかけられる。正直、母親はパートなので晩御飯はどこかで食べて帰るつもりだったのだが、そこまで甘えてしまっていいものだろうか。聖に判断を仰ごうと視線をおくると彼女は少し、嬉しそうに柔らかい笑みを浮かべて言った。
「そうね……お母さんもそう言ってるし、翔君がよかったらうちでご飯を食べて行かない? お母さんの料理は私よりも美味しいわよ」
「そうそう、ああ、でも、私の料理が美味しすぎて、聖ちゃんのお弁当じゃ満足できなくなっちゃうかもしれないわよ」
「いや……その……じゃあ、お邪魔してもいいでしょうか?」
俺は意外に乗り気な聖とノリノリな聖のお母さんにの誘いにのって晩御飯をお邪魔することにした。
少し待っててねと言われリビングで座らせてもらっていると、向かいに座っている聖に声をかけられた。
「その……結構強引にさそっちゃったけど迷惑じゃなかったかしら?」
「いや、美味しいごはんが食べれて、綺麗な女の子がいるんだ。迷惑なはずないだろ」
「そうね、綺麗な私と一緒にご飯を食べれることを感謝しなさい」
「ああ、これは一生の思い出だな」
「自分で綺麗とか言うなとか突っ込みなさいよ!! これじゃあ私がナルシストみたいじゃないの。またラブコメみたいな胡散臭い事ばかりいって」
おそらく聖は俺が緊張しているのをかんじとってボケてくれたのだろう。でもさ、綺麗って言うのは冗談じゃないんだよなぁ……などと思っているとお肉のいい匂いと共に、聖のお母さんが料理を持ってきてくれた。ハンバーグにカットされたフランスパン、オニオンスープという豪華な夕食である。俺の好物である。油断した成果「ぐうぅー」という情けない音が部屋に響く。くっそ恥ずかしいんだが……
「あれね……男がお腹を鳴らしても萌えないわね。あなたの言葉を借りるならラブコメ的な萌え要素なんでしょうけど……」
「わかってるっての!! わざとじゃねえよ」
「あらあら、二人は仲良しねぇ、じゃあ、早く食べましょうか」
俺と聖のやりとりを楽しそうに見ていた聖のお母さんが席についたので俺達は、手を合わせる。そして声を合せて一言。
『いただきます』
チーズの乗ったハンバーグをナイフで切ると肉汁がじわーっとあふれ出して、溶けかけのチーズと混ざり、早く食べてと誘っているようだ。そのままフォークでさして口に運ぶと肉汁とチーズがうまみとなって、俺の脳内を一言が支配する。
「うまいな!!」
これは、やばい。俺は他人の家というのも忘れてがっついてしまうのだった。確かにこんなお母さんに料理を習っているのだ聖も料理上手になるわけである。俺の食事が一息つくのを待っていてくれたのだろう。聖のお母さんが問いかけてくる。
「美味しそうに食べてくれてありがとう、聖ちゃんが作ったお弁当とどちらが美味しいかしら」
「ちょっとお母さん!!」
恥ずかしそうに制止する聖だが、ここはどう答えるべきだろう。すっごい答えにくいんだが……ラブコメだったらこれの選択肢で聖ルートかお母さんルートに行くかってレベルである。
「えーと黒川さんの……」
「あら、翔君が呼んでるわよ、お母さん」
「何かしら、ふふふ、私も翔君って呼ばせてもらうわね」
苗字で読んだのが気に喰わなかったのか聖からすごい反撃がきた。てかお母さんもノリノリですね!! でもさ、相手の親の前で名前呼びって結構勇気いるんだけどな。俺は聖に許してと目線で合図を送るが彼女は舌を出してそれを拒否した。俺は観念する。
「その……聖さんのお弁当もこのハンバーグもすごい美味しいです」
「無難な回答ね、つまらない男。いつものラブコメみたいな返事はどうしたのかしら?」
「あらあら、聖ちゃんがわざわざ作ったお弁当とは同じくらい何てもうしわけないわねぇ」
「お母さん、そういうのはいいから!!」
さっきまでこちらを見てにやにやとしていた聖だったがどうやらお母さんには勝てないようだ。顔を真赤にして睨みつけている聖はなんか新鮮でみていて楽しい。
「聖ちゃんは学校ではどんな感じかしら? この子ったら全然はなしてくれないのよ」
「えーと……」
再度聖に助けを求めるが、聖が余計な事は言うなよって目線でむっちゃ睨んでくるばかりである。どうやらお母さんには勝てないようだな。何と答えるべきか、まさか、一日一回抱き着かせてもらってますがその時の反応が可愛いというわけにもいかないだろう。
「非常に真面目で頼りになります。聖さんが委員長としてまとめてくれるおかげでクラスもまとまっていますし、勉強とかも教えてくれていつも助けられてます」
「ふーん、聖ちゃん学校ではそんな感じなのね。あ、優等生の聖ちゃん私アイスを食べたくなってきたから買ってきてくれないかしら。もちろん翔君の分もね」
「なんで私が……」
俺の返事が気に入らなかったのか、聖のお母さんは一瞬つまらなそうな顔をしてかと思うと、すぐに笑顔に戻って聖におねだりをするように甘えた声で言った。
「聖ちゃんのケチー!! そういえば翔君クッキーは食べたかしら、あれはね昨日の晩私が翔君を呼んでっていったらせっかくだからって言って彼女が作ったのよ。お菓子作りは聖ちゃんの趣味なの。可愛いところもあるでしょう」
「ちょっと、母さん!!
「え……あれって、百均で買ったんじゃ……」
「うるさいわね、久々に友達が来るから嬉しく焼いたのよ!! 文句ある!?」
「文句なんてあるはずないだろ、お母さん一言だけ否定させてください。聖は可愛いとこもあるじゃないです。可愛いところだらけですよ!!」
「そうなのよ、聖ちゃんは可愛いの!! この前もね……」
「あーー、もうわかったから、アイスを買いに行ってくるから変な事を言うのはやめて!!」
そういうと聖は顔を真っ赤にして叫んでどこかにいってしまった。財布でもとりにいったのかもしれない。俺は仕方ないなと、席を立とうとしたがその手を引っ張られる。なんだろうとお母さんの方を見ると彼女は笑顔を浮かべたままこういった。
「二人で色々と話をしたいのよ、ね? 聖ちゃんの召喚者さん」
その言葉に俺は心臓が止まるかと思うほどの衝撃をうけたまましばらく動けなかった。
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