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30.黒川のお願い

 お昼になったのでいつも通り俺は、黒川が出ていったのを確認してから特別教室へと向かった。ついでに購買部によったので少し遅くなったがまあ、誤差だろう。俺が到着すると彼女はいつもの通りの綺麗な姿勢で読書をしていた。



「授業お疲れ様、何を読んでるんだ? まさか、官能小説とか」

「あなたね、私の事をなんか勘違いしてないかしら? まあ、私だってそういう事には人並みには興味はあるけれど、学校にそんなものを持ってくるわけないでしょう、安心院くんじゃあるまいし……」



 そう言いながら彼女は呆れたとばかりに溜息をついた。でもさ、俺は知っているんだよ。黒川が安心院から没収するときに表紙と裏パッケージを凝視しているのをさ。やっぱりこいつむっつりサキュバスなんだなって思う。



「あなた今失礼な事を考えなかったかしら?」

「いや、何の事だ? 俺は今日のお弁当はなんだろうなって思っただけだよ。黒川がわざわざ作ってくれているお弁当の中身がさ」

「あなた……あまりからかうともうあげないわよ」



 俺が昨日聞いた嬉しい情報をつぶやくと、こちらを睨みつけながらも、彼女は俺にお弁当を差し出した。お弁当箱の中身は牛肉と野菜炒めと、卵焼きである。授業で空腹状態の俺を刺激するにおいに俺は嬉しくなる。



「黒川……この野菜炒めって……」

「ええ、あなた、この前の調理実習で食べれなかったのを嘆いていたでしょう? だから作ってみたのだけれどどうかしら」

「ありがとうーー!! 心の中でむっつりサキュバスとか思っててごめん!!」

「誰がむっつりサキュバスよ、失礼な男ね!! ここはあなたお得意のラブコメみたいなことを言う所でしょう」

「黒川……調理実習で食べ逃した俺のために、わざわざ作ってくれるなんて、優しいな。いいお嫁さんになるぞ」

「このご時世にお嫁さんになるとか、女子が家事をするのが当たり前の考えは痛いわよ」

「やっぱり、辛辣!! 黒川がいえっていったんじゃねーかよ!!」


 

 恒例のやりとりを済ませた俺はお弁当を口にする。限られた調味料の調理実習とは違い、家で作ったためか前につまみ食いをした時より、断然うまい。こんな事言ったら怒られるんだろうが、本当にいいお嫁さんになりそうである。



「やべえ、黒川の飯を食べてるともう、購買に戻れなくなりそう……というか、流石にもうしわけなさすぎるからお礼をさせて欲しいんだが……」

「だからこれは抱き着かせてもらっているお礼だって言っているでしょう。お礼のお礼何てされたら無限ループじゃない」

「いや、でもさぁ、実際抱き着かせてもらって嬉しいのはこっちもなんだし……」

「ふーん、私に抱き着いてもらって嬉しいんだ。……妻田君のエッチ」



 そう言うと彼女は俺をからかうように笑った。くっそ、そりゃあ思春期なんだから嬉しいに決まっているだろ!! それにしても黒川のやつ結構笑うようになったな。彼女の変化が個人的にはすごい嬉しい。



「じゃあ、そうね……二つほどお願いをしてもいいかしら?」

「思ったより多いな。まあ、いいけど……」

「もちろん、その代わり私もあなたのお願いを一つだけ聞いてあげるわ。さすがにエッチな同人誌みたいになんでもとは言わないけど……」

「くっそ、そこはなんでもって言ってくれよ!!」

「いやよ、そんなことしたら、あなた催眠術をかけさせてエッチな事をするつもりでしょう?」

「それは今日安心院がもってきて没収されたエロDVDの話だよなぁ!! 催眠術を本気にするやつなんて高校生でいるはずねえだろ!!」



 こいつやっぱりむっつりサキュバスじゃねえかと思いつつも、言い返す。でも、黒川のお願いってなんだろうか。俺は気になったので視線で先を促す。ああ、でも、俺もお願いをしていいんだよな。だったら……俺はこの前を見た夢を思い出した。



「とりあえず、妻田君の方から言いなさい。私のお願いはそんな大変じゃないから」

「え、ずるい……でも、まあいいか。俺はその……最初に召喚した時の服を着た黒川が見たい……」

「うわぁ……ハレンチね」

「ハレンチな恰好してうちに召喚されたくせに何言ってんだよ!?」

「あれは強制的なのよ、仕方ないでしょ!! でもまあ、どうしてもって言うのなら仕方ないわね……」



 彼女は顔を赤くしながら顔をうつむけてそう言った。え? まじか、夢で言ってたからワンチャンくらいの気持ちだったのだがあのエッチな黒川をみせてもらえるのか!! これはエロゲだったらCG回収だぜ!!



「その代わり私のお願いを二つ聞いてもらうわよ。一つ目はその……呼んでくれないかしら?」

「え、なんだって?」

「こんな時にまでラブコメの難聴主人公みたいなことを言わないでよね!!」

「いや、本当に聞こえなかったんだが……」



 俺が本気で聞き返すと黒川はすごい悔しそうな顔をしながらこう言ったのだった。



「名前で呼んでって言ったのよ!! 今朝中村さんとは名前で呼び合っていたでしょう? あれを見てなんかすごい仲良さそうでいいなって思ったの。悪い!?」

「なんで逆切れ!? なんというかすごい恥ずかしいな……」

「じゃあ、いいわよ……別に無理に呼んでほしかったわけじゃないし……」

「いや、呼ぶよ。呼ばせてください。聖……」



 うおおおお、なんかムチャクチャ恥ずかしいんだが!! 女の子を名前で呼ぶのってなんかドキドキする!! ラブコメの主人公ってなんでこういうのを普通にできてんだよ、あいつら化け物か!?

 黒川を見ると彼女も恥ずかしいのか顔を真赤にしてうつむいている。お前がよべっていったんだろうが!! 彼女はなにやらぶつぶつとつぶやいた後にこちらを見て意を決した顔で口を開いた。



「何かしら、翔君」

「くはぁ!!」

「ちょっと、なんで胸を押さえて倒れるのよ!? 大丈夫?」



 効果は抜群だ。いやいや、やばいって美人な友達に名前で呼ばれるだけで死にかけたんだが、やっばい好きになっちゃいそう。でも好きになったら死ぬんだよなぁ……それに、女子同士って普通に名前同士で呼び合うから友達感覚なんだろうなぁ。



「それでもう一つのお願いなんだけど大丈夫かしら……?」

「ああ、大丈夫だ。今なら聖の借金の連帯保証人にだってなれるぞ」

「頭は大丈夫じゃないわね……それでね、もう一つのお願いって言うのは……」



 彼女の形のいい唇から紡がれた言葉は俺の予想外のものだった。



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