29.五月雨との投稿
俺は昨日聞いた話や今朝見た夢を思い出しながら、自分に何かできないか考えながら学校へと向かう。彼女はサキュバスとしての力にとらわれすぎている気がするのだ。
昨日だって、あのあと中村に電話をしたときにそれとなく、黒川をどう思うか聞いたのだが、「綺麗な人だよね。そんな人と友達になれたっていう僕への自慢かな? 死ねばいいのに」と言われただけだった。黒川に恋心を抱いている様子は一切なく、むしろ俺への嫉妬がやばかった。
「翔せんぱーい、おはようございます!! どうしたんですか、相変わらず辛気臭い顔をしてますね」
「あー、五月雨か……」
「なんですか、その反応は!! 可愛い後輩が声をかけてくれたんですから喜んでくださいよ。最近なんか悩んでませんか? よかったら話を聞きますよ」
朝っぱらから五月雨は元気だなぁと思いつつ返事をする。悩み事か……まさか、黒川がサキュバスの血を継いでいることを気にしているんだが、それをどうにかしてやりたいって話をするわけにもいかないんだよな……多分マジで頭の心配をされそうだ。などと思っていたが一つの事を思い出した。
「なあ、五月雨って黒川と同じ部活だったんだよな」
「ええ、そうですよ。あ、まさか友達になったからそのまま彼氏の座を狙うつもりですか? それは手段としては悪くないですが、あの人は優しい先輩ですが、ちょっと厨二病が入っているので、そこはきちんと理解したほうがいいですよ。ああ、でも、デートしたらしいですね……もしかしてもう……?」
、五月雨がデートと言う言葉を言った時少し、眉をひそめたのは気のせいだろうか? とはいえ、恋人たちのデートとは違うんよな、残念ながら。まあ、ラブコメでもよく主人公とヒロインが一緒にあそびに行くしな。
「確かにデートだけど、別につきあっているわけじゃねーよ。二人で遊びにいったら付き合っているってなったら俺と五月雨何てやべえだろ……」
「いや、私たちは家族みたいなものですが、普通は男女の友人同士はそんな毎日一緒にお昼食べたり、どっかいったりはしないと思うんですが……」
そこは契約者とマスターというと特殊な関係があるのだがそれは説明するわけにはいかにので適当に誤魔かす。
「まあいいや。中学の時にさ、その……部内でさ、黒川に告白した先輩がいるらしいな。その人ってどうなったんだ?」
「え? いきなりどうしたんですか?」
俺の質問が予想外だったのか五月雨はきょとんとした顔で聞き返してきた。そりゃあそうだよな。いきなり中学の頃の……しかも、俺が知らないであろう先輩の話をされても困惑するだろう。
「その先輩なら、黒川先輩に振られた後に、幼馴染の子に慰められて、結局その子と付き合ってますよ。高校は別ですし、最近はあってませんが……あ、まさか、幼馴染との恋愛がありなら俺も私と……なんていうつもりですか!?」
「いや、ねえだろ……」
「ですよねー、でも、翔先輩に否定されるのはなんかむかつきますね。てい!!」
そう言うと五月雨は「いー」と舌を出しながら蹴ってきた。それを見越していた俺が華麗にかわすとバランスを崩した五月雨がこけそうになったので支えてやる。でも。よかった……その先輩はもう、黒川の事を引きずってはいないようだ。だったら、彼が黒川に恋をしたのは、サキュバスの力なんかじゃないのではないだろうか?
むにっという柔らかい感触と共に俺の思考がかき消される。バランスを崩した五月雨が抱き着いてきたのだ。これは胸か……相手が五月雨だと言うのに思わずにやけてしまった。
「おはよう、妻田君、中村さん、ずいぶん仲良しなのね。だけど、ここは公共の場だからそういう風に抱きあったりはしないほうがいいと思うわよ」
「うおおおおお」
「翔先輩セクハラです!! でも、支えてくれてありがとうございます!!」
背後からかけられた冷たい声で俺達はばっと離れる。声の方を向くとちょっと不機嫌そうに唇を尖らせている黒川が立っていた。そして、そのまま通り過ぎる。すれ違いざまに「抱きつければ誰でもいいのね」とつぶやいていたのがムチャクチャ怖い。
俺が何と言おうかと考えていると、五月雨が口を開いた。
「黒川先輩……サキュバスっていると思いますか?」
「は?」
思わず問い返したのは俺と黒川どちらだっただろうか。しばらくの沈黙と共に一瞬黒川がこちらを睨んできてので、俺はあわてて首を横に振り身の潔白を示す。それを確認した彼女はいつもの無表情で答えた。
「サキュバス……そうね、私もそういうのは好きだけど……あくまで、想像上の生き物じゃないかしら。でも、もしもいたとしたらあまり関わらないほうがいいと思うわよ」
そう言って黒川はさっさと学校へと早歩きで歩いて行ってしまった。残された俺は五月雨に問いかける。
「いきなりどうしたんだ? あんなこと聞いたら黒川も驚くだろ」
「いえ、翔先輩がサキュバスを彼女にするために召喚しようとしてるって聞いていたので黒川先輩もそういうの好きだからなんか知ってるのかなと思いまして」
「まあ、してたが……」
あの時は必死だったのだ、周りに彼女ができまくって、なんとか俺も彼女が欲しくて藁にも縋るつもりでやったのである。その結果黒川と仲良くなれたのだから、人生分からないものだ。
「翔先輩は本当に馬鹿ですよね……そんなに彼女が欲しいなら友達を紹介してあげますから、サキュバス召喚とかあほな事はやめてください」
「え、まじか? でも、今はいいかな……」
いままで紹介してくれと頼んでも「翔先輩みたいなあほに友人は渡せません」っていってたのにな。何かあったのだろうか? だが、今は黒川と一緒にいるのが楽しいからか、誰かを紹介してもらおうとおは思わないんだよな。俺はそんな事を思いながら一緒に登校をするのであった。
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