26.デート3
俺はいきなり乱入してきた相手に言葉を失う。マジでだれだろう。顔を見ると少し濃いめのメイクのせいか、どこかで見たような顔なのだが、名前が思い出せない。てか、これって俺が黒川を浮気相手にしたみたいに勘違いされないか?
「私というものがありながらこんな泥棒猫うつつをぬかして許さないんだから……」
「ねえ、あなた……」
「なによ、私の翔を返しなさい、この雌ブタ!!」
そう言って黒川を指さして睨みつける謎の人物。だけど、黒川はいつもの教室のような無表情に戻って謎の人物にツカツカと足跡を鳴らしながら近づく。いや、こわっ!! 顔がきれいだからか妙な迫力がある。
謎の人物も気おされたのか、後ずさりをしたが黒川が逃がすわけもなくその髪を掴んで……すぐさま距離をとった。
「なにをやってるかしら? 中村君。それともあなたと妻田君はそういう関係だったのかしら?」
「うわぁ、なにをするんだ」
黒川の手に髪の毛がばさりと移動したと思ったら、その下から見覚えのある短髪の頭が見えた。本当だ、よく見たら中村じゃねーか。こいつなにをやっているんだ。てか、ウィッグを取ったら化粧している顔が浮いていて違和感が半端ないな……
「で、誰が雌ブタですって?」
「いやその……」
「で、誰が雌ブタですって?」
「妻田助けてよぉぉぉぉぉ」
無限ループって怖くない? しかも無表情で見つめているから感情がよめないのが何とも言えない恐怖を感じさせているようで中村が今にも泣きそうになっている。あまりにも哀れになったので、俺はため息をついて仲裁に入る。
「まあまあ、中村も何か事情があって、こんなことしたんだよな。一体どうしたんだ?」
「いや、君に彼女ができたらむかつくから邪魔してやろうかなって」
「黒川、こいつ殺そう。生きてちゃダメな奴だ」
「だって如月にも彼女ができて、安心院にすら彼女ができたんだよ。そのうえ君にまで彼女が出来たら僕だけ非リアじゃないかぁぁぁぁぁぁ」
こいつを助ける必要なんてなかったよ……ショッピングモールで泣き叫ぶ中村を見ながらそう思っていると、黒川がスマホを中村にかがげてこちら画面をみせてくる。
「ちなみにあなたの登場からこれまではスマホで動画を撮っておいたわ。これはクラスのグループに流したらどうなるか……わかるわね。それで誰が雌ブタですって?」
「すいませんでしたぁぁぁぁぁぁぁ!! 豚は僕です、ぶひぃぃぃぃぃぃぃ」
「予想以上の殺意!! 雌ブタって言われたの根に持ってんな」
「黒川さん……何でもするからその動画を流出されるのだけはぁぁぁ」
「触らないで」
縋るような中村の手を黒川が冷たくかわす。そして、中村は体制を崩した後、泣き叫んで去っていった。俺はそれをあっけにとられた顔で見る。俺の女友達が強力過ぎない? だけど、無表情なまま固まっている黒川を見て俺は気づく。こいつなんかこわばってないか?
「なあ、黒川……聞きたいことあるんだけどいいか?」
「何かしら、悪いけどスリーサイズなら教えないわよ」
俺の言葉に彼女は無表情で答える。軽口を叩いているが先ほどの笑みはない。いつもの教室と同じ顔だ。そして俺がサキュバス召喚する前の黒川の顏だ。俺といるとにそんな顔をしているのが嫌だった。だから……ちょっと踏み込み過ぎかなとは思いながらも聞くことにする。だって俺は黒川の友達だからさ。彼女が困っているなら助けたいと思うし悩んでいるなら話を聞いてあげたいと思ったのだ。
「なあ、黒川が異性と疎遠になったのって、サキュバスと関係あんだよな? もしかして異性に触れると能力が発動するのか?」
「……なんでそんな風におもったのかしら?」
「さっき、中村に触らそうになった時にすぐにかわして距離を置いたし、あいつが近づいた時に表情が固まったからさ……黒川はさ、男子と関わらないようにしているだけじゃない。極力男性に触れないようにしてるだろ」
今思えば安心院からDVDを回収するときも、直接受け取らずにテーブルに置かせていた。(この部分あとでよみかえして追記する)それに今だって中村には触れないでロングウィッグを先端を奪うように取っていた。
俺の言葉に彼女は少し目を逸らした。そして何かを考え込んで、俺をまっすぐと見つめこういった。どこか縋るように見つめてこう言った。
「本当によくみてるのね……つまらない話だけど聞きたいの?」
「ああ、二人っきりなれるところのほうがいいよな?」
そうして俺達は二人っきりになれるとこへと移動することにした。これはいわばラブコメで言うならばヒロインの過去を知るチャンスなのだろう。いわばルートが確立するイベントのようなものだ。ラブコメを読んだ時は、俺だったら、挙動不審にならずにかっこよくも立ち回って見せると思ったものだ。
だけど、いざそうなったらこうなったら普段はクールな彼女から何とも言えない圧を感じる。ラブコメの主人公のようにうまくは立ち回れはしないとかもしれないけれど、そんなことはどうでもいい。彼女の力になりたいと思ったのだ。黒川が俺を信じて話してくれるのだから。
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