21.嫉妬?
ああ、やってしまった……私はベットに頭から突っ込む。母には行儀が悪いといわれるだろうが今は許してほしい。なんで今日はあんな態度をとってしまったのだろうか。
放課後、妻田君が、後輩の中村さんと仲良くしゃべっているのを見て、そして、放課後一緒に遊ぶのというのを聞いて、胸がざわざわとしてしまい、挨拶をされたのに無視をしてしまったのだ。この前までは全然きにならなかったのに……
「私どうしちゃったんだろう……」
私の独り言に返事をするものはだれもいない。こんな気持ちになったのは保健室で彼と抱き合って、そして、昨日の放課後一緒に帰ったのが楽しかったからだろう。今日も一緒に帰るのかななどと思っていたが約束をしたわけでもないし、彼は私以外にも友達がいるのだから当たり前なのにね……柄にもなく嫉妬をしてしまったのだろうか。
彼の中で私は友達のうちの一人にすぎない。お昼にいつもいっしょにいるのも彼と契約して、サキュバス状態になってしまった私は彼の精気を吸わないと体力がもたないから気をつかってくれているだけにすぎないのに……私は備え付けの冷蔵庫から大量に入っているエナジードリンクの缶をを一本とって口につけながら昔を思い出す。
私が自分をサキュバスだという事を知ったのは中学だった。ある日先輩に告白されて、断ったことを母に話したら、「そろそろ、聖ちゃんもそういう時期だもんね。一応知っておいた方がいいかな」と言われ私の先祖がサキュバスだという事を説明されたのだ。
とはいえ、もう、血もだいぶ薄くなっており、母曰く召喚儀式などに巻き込まれなければ普通の人間と違いはないらしい。母も普通に育ち父とも普通に結ばれたとの事だ。だけど、自分がサキュバスの血を引いているという事もあり色々と調べる事にしたのだ。
いわく、サキュバスは男性にみだらな夢をみせて、精気を奪うらしい。
いわく、サキュバスは男性からしたら魅力的に映るらしい。
いわく、サキュバスは男性と性交したらその男性の命を奪うらしい。
いわく、サキュバスは男性に触れたら、その相手を惚れさせるらしい。
なんともおそろしい生き物だ。母曰く血が薄いためそこまでの力はないのかもしれないらしいが、万が一自分の力が発動してしまったらどうしようと思い、私は異性から距離をとる事にした。
だって、本来は私を好きになるはずじゃなかった人が、サキュバスの力で私に恋をしたら申し訳ないじゃないか……だって、私のせいで本来結ばれるはずだった女の子がいたらかわいそうじゃないか……
そんな中いきなり召喚された時はどうしようかと思った。最初は召喚した相手に適当な夢をみせて、契約が終わる前に逃げるはずだった。でも、召喚していた相手が、クラスメイトの彼だったから急に恥ずかしくなってしまったのだ。そしててんぱっている間に彼と肌が触れてしまい、契約は成立してしまった。
本当は事情を説明して距離をとるつもりだったのだ。予想外にスタミナの消費が激しくて保健室に行く前に倒れかけたのは誤算だった。そんなときに彼が助けてくれたのだ。
「自分よりも他人の事を優先して本当にバカよね……だいたい何を考えているやら……大事な順守権をあんなことにつかっちゃって……後悔してもしらないわよ」
本当に馬鹿だと思う。私なんかのために彼は三つしかない順守権を使ったのだ。もしも私が彼の命を狙う悪いサキュバスだったらどうするつもりだったのだろう。
「もちろん彼の命を狙う気なんてないけどさ。でも、妻田君はそんな事をかんがえもしないんでしょうね。それに抱き着くことを彼はどう思っているのかしらね、私は恥ずかしいけど不思議と嫌じゃないだけど、彼はいつも変な顔をしてぶつぶついってるのよね……まあ、本当に嫌だったら私と友達になろうなんて言わないわよね」
私は彼が言ってくれた言葉を思い出して胸が熱くなるのを感じた。多分この胸の高鳴りは儀式のせいだとは思うけれど、召喚してくれたのが彼で良かったなと思うのだった。そして不思議と彼に抱き着くのは不快な思いはしないのであった。ふと気になって鏡をみるとそこに写った私はニヤニヤとみっともなくわらっていた。異性の事を考えて苦い顔以外の表情を浮かべたのはいつぶりだろう。何か恥ずかしくなって、私はベットにおいてある彼がとってくれたパンダのぬいぐるみを抱きしめる。
「やっぱり最近無表情だったのがいけないのかしらね……もうちょっと笑顔の練習しないと彼に変な目で見られちゃう」
彼の言動はぶっ飛んでいるけれど、話を聞いていて結構面白いのだ。だから、彼の前でつい笑ってしまう事もあるのだけど、変な笑いかただなと思われた嫌だなと思う。そして私は死にかけの表情筋を復活させるべくちょっと笑顔の練習をするのであった。
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