12.女友達
「それで妻田……保健室で黒川さんに変な事してないだろうね?」
「なんもしてねえぞ、マジで看病してただけだっての!!」
「ふーん、保健委員でもないのに看病ねぇ……それにしてはずいぶんと戻ってくるのがおそかったけど……寝ているところとか盗撮したら犯罪だからね」
「だからお前の中の俺はなんなんだよ!!」
あの後教室に戻り、帰宅の準備をしている俺は待っていた中村から質問攻めにあっていた。まあ、確かに保健委員でも、友達でもない俺が黒川の看病をするって言うのはおかしいよな。サキュバスの事は言えないので俺は笑ってごまかすことしかできない。そして、俺は先ほど抱き着かれた時の感触を思い出し、ついにやけてしまうのだった。柔らかかった……
「なーにイヤらしい顔をしてるんですか、翔先輩? そんなんだから彼女ができないんですよ」
「うおおおおおお、どっから湧いてきたんだよ、五月雨!! 中村、殺虫剤をくれ」
「人を害虫みたいに言わないでくださいよ。、お兄ちゃんから翔先輩が保健室に行ったっていうから心配してたんですよ!」
「まじか、それは本当にごめん。てか中村どんな連絡したんだよ!? 俺は体調不良の黒川のつきそいで行っただけだぞ」
「え? どういうことですか、お兄ちゃん?」
「ああ、ごめん、保健室に行ったって事しか伝えてなかった、あははは」
俺と五月雨が睨むと中村はごまかすように笑った。それにしても、五月雨は俺が怪我をしたとでも思って心配してくれたのか。なんだかんだ可愛いところあるよな。こいつ。非難の目を兄に向けている五月雨をみながら思う。
「それで……わざわざ黒川先輩を保健室で看病しに行くなんて彼氏でもないのに痛い行為をした翔先輩は何か得るものはあったんですか? まあ、翔先輩の事だから、何にもないでしょうけど……」
「ふっふっふ、聞いて驚け!! 俺は黒川と友達になったぞ!!」
俺がどや顔で言うとなぜか二人が憐みの目で見つめてきた。え、なんなの子の視線? なんでそんな目でみられなきゃいけないの?
「翔先輩……告白した時のその断り文句は社交辞令ですよ。実際は異性としてはみれないからごめんねって意味です。その後はどんどん疎遠になっていきますよ……」
「また、フラれたんだね……牛丼食べるかい? 今日は特別におごるよ」
「優しさが辛い!! 誰が保健室で告白するか、ボケ!! 普通に友達になったんだよ!!」
「今日は残念会ですね、しょうがないから可愛い私が慰めてあげますよ。良かったですね、気の利く後輩がいて」
俺の言葉を無視して五月雨が嬉しそう笑いながら言った。このガキ信じてないな。俺がどう仕返しをしよか悩んでいると、後ろから声をかけられた。
「お疲れ様、妻田君。そろそろ帰るのね。今日は助かったわ。ありがとう」
相変わらずの無表情だが、なにやら大量のプリントを持った黒川が挨拶をしてくれたようだ。その様子に一瞬教室がざわっとする。そりゃあそうだよな。黒川が自分から挨拶をすることは中々ない上に相手が男子ときたものだ。俺だって、同じ立場だったら、驚くさ。俺はちょっとした優越感に浸りながら返事をする。
「おお、黒川お疲れ、その荷物はどうしたんだ?」
「これ? 学級委員の仕事で、職員室までもっていかなきゃいけないのよ」
「よかったら手伝おうか? どうせ予定もないし」
「うーん……じゃあ、せっかくだしお言葉に甘えようかしら」
「じゃあ、俺が半分持つぞ。あ、これラブコメっぽくない?」
「はいはい、真面目な委員長ルートが見えました。なんてね、これでいいかしら? ありがとう」
黒川から俺は半分プリントを預かり彼女についていく事にした。中村と五月雨が信じられないという顔をしている。俺は珍しくうまくいって調子にのっていたのだろう。だから五月雨のつぶやきを聞き逃してしまったのだ。
「本当に二人が仲良くなっている……双葉ちゃんが保健室で聞いたって言ってた事は本当だったのかな……じゃあ、サキュバスって……?」
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