1.モテなすぎるけど彼女が欲しいから召喚したサキュバスが堅物で男嫌いで有名な委員長だったんだけど!!
新連載です。よろしくお願いします。
真っ暗な部屋にろうそくの灯がともっている。友人のお手本を見様見真似で書いた魔法陣の上には供物であるコップに入っている牛乳を置いてあり、俺は一心不乱に呪文を唱えている。
「エロイムエッサイム エロイムエッサイム 我は求め訴えたり」
何をやっているかって? サキュバスを召喚するんだよ。俺も高校二年生である。彼女も欲しいし、エッチな事もしたい。ようは青春ラブコメがしたいのである。
だけどモテない。まじでモテないのだ。ラブコメやエロゲーで色々勉強だってした。クラスメイトの女子に頭ポンポンをすれば、「髪型乱れるからやめて」と怒られ。壁ドンをすれば「マジでこわいんだけど」と罵られるありさまだ。だから俺は考えたのである。クラスメイトに相手をされないのならば、 神秘の力を借りるしかないと!! 俺の青春ラブコメにヒロインがいないならば探せばいいのだ。
そこで中二病の友人の相談した結果、人間にもてないならば、サキュバスという淫魔を召喚して契約をすればいいという結論にいたり、呪文書を借りたのだ。
ぶっちゃけ半信半疑だが背に腹は代えられない。召喚の準備は色々と大変だったがそれも終わり今日に至る。ちなみにサキュバスというのはエッチな夢を見せて男から生命力を奪ったりする魔物である。淫魔とかこわくないかって? そこで使い魔として召喚するのだ。聞いた話によると、契約をすることによってある程度言う事を聞いてくれるらしい。そして重要なのがサキュバスはみんな美少女もしくは美女なのである。もちろんエッチな事もしたいけどさ、美少女とデートもしたいじゃん。そう、俺は青春ラブコメがしたいのだ。
「エロイムエッサイム エロイムエッサイム 淫魔よ、我が召喚に応じよ!!」
最後の呪文を唱え終えて俺は気合が入る。これで俺もリア充である。これで青春ができるんだよ!!やったね!! 死んでもいいぜ!! やっほーい!!
などとテンションあがって魔法陣の前で踊っていたが、何もおきない。マジかよ。呪文は偽物だったののか? 俺は一生童貞で生きるしかないのか? 俺は暗い未来に絶望しながら魔法陣をかたずけようとした時だった。踊った時にぶつけた指から垂れた血が、魔法陣に触れるといきなり光出して、煙が出てきた。
「うおおおおおお、やべえ!! なんだこれ!!」
俺は慌てて部屋の窓を開ける。すると煙たちはまるで救いを求めるかのようにそとへと出て行った。ていうかさ、この煙なんかピンクなんだけど……驚いている俺に追い打ちをかけるかのように背後からクールそうな女性の声が聞こえた。
「まさかこの現代に魔術を使おうなんて人がまだいるなんてね……しかも術式が中途半端なせいで私のような出来損ないを召喚するなんて……しかもこれサキュバスの正装じゃない……」
「本当に召喚できたーー!! さあ、サキュバスよ、デートをしよう!! 彼女になってくれてもいいんだぜ」
慌てて振り向いた俺が見たものは、慎ましやかな胸と腰を黒いラバーで覆っただけのまるで、ハロウィンのコスプレか何かのような恰好をした美少女だった。とてもエッチな衣装ですね!! これ考えた人に投げ銭したい気分だぜ。シミひとつない白いお腹も脚も丸出しで。大胆に露出された肌に俺は目が離せない。無表情な顔は整ってはいるけれど、こちらに一切興味のない視線とあわせてどこか冷たい印象を受けた。てか見たことあるな、この顔……
「悪いけど私はあなたと契約する気はないわ。適当な夢をみせてあげるから今日の事は忘れ……」
「あれ、黒川か? なにやってんの?」
「え? あなた妻田君じゃないの。ちょっと待って……うそでしょ……」
俺の言葉に彼女はこちらの顔をみると、先ほどの余裕のある表情はどこにいったのか、いきなり顔を真っ赤にして自分の柔肌を隠すかのようにして、手で覆う。でも、もちろん露出の高い衣装のためそんなもので肌の全てを隠しきれるはずもなく、白い肌は羞恥のためか薄っすらと赤くなるのが良く見える。むしろその反応が先ほどまでの冷淡な反応と違って、可愛らしく思えてしまう。
「どうしたの? さっきまでノリノリだったじゃん」
「うるさいわね、普段の私を知ってるクラスメイトにこんな格好を見られたのよ。死にたくなるでしょう。別に好きでこんな格好してるわけじゃないし……それにこんなこと初めてだし……」
「それを言ったら、俺もおんなじ立場なんだけど……クラスメイトに彼女がほしいからってサキュバスを召喚しているところをみられたんだぞ」
「あなたの場合普段の言動とたいして変わらないでしょう」
まって、俺ってクラスメイトにも彼女が欲しくてサキュバス召喚しそうとか思われてんの? 死にたくなるな。それはさておきだ……俺は毛布を黒川に渡す。こういう時は優しくしろとラブコメの主人公が言っていた気がする。
「これは……なにかしら?」
「いや、その恰好寒そうだし、恥ずかしいんだろ。使いなよ。それにさ、黒川ってさ下ネタとか苦手じゃん。こんな風になってるのにも何か事情があるんだろ」
「妻田君……」
俺の行動に彼女は初めて柔らかい笑みを浮かべる。これはフラグ立ったんじゃね? 俺はとどめとばかりにラブコメにありそうなセリフをウインクをしながら言う。これでルート確定したりしてな、なんちゃって。
「これは、俺と君だけの秘密だな、マイサキュバス」
「……毛布はありがとう。あなたって何だかんだ優しいのね。ただそのラブコメにありそうなセリフはリアルにはしない方がいいわよ。虫唾が走るもの」
俺の言葉に彼女は一瞬にして無表情に戻る。あれ、好感度下がった気がするんだが? 俺の知ってるラブコメならそのまま秘密を共有した二人はラブラブになるはずなんだが?
彼女の顔を近くで見て改めて綺麗な顔をしているなと思う。俺は彼女の事は良く知っている。高校のクラスメイトであり、学級委員長をやっている黒川聖だ。彼女は女子とはそれなりに話すが、男子とは必要最低限しか喋らず、男子で彼女の笑顔を向けられたものはいないとすら言われている。また何人ものが告白をしているが、無視されてるかこっぴどくフラれているのだが、そこがまたミステリアスでいいと、その容姿とあいまって高嶺の美少女として一部では有名なのである。
それにしても、どうしよう。エッチな淫魔が来たらと思って召喚したんだけど、流石に彼女にそんな事をお願いするのは気が引けるんだよな。しかも、相手がノリノリならともかく無茶苦茶恥ずかしがっているし……というか真面目で異性にも一切興味がない彼女がサキュバスとはどういうことなのだろうか?
「翔!! 何をドタバタやってるの?」
「なんでもないぞ、母さん」
「嘘つきなさい、誰かいるの? 彼女……はありえないわね。あなたまさかデリヘルを……」
「んなわけねーだろ、自宅に呼ぶかボケ!!」
その声と共に母親が階段を上がってくる音が聞こえる。やっべえ、騒ぎすぎた!! 今の状況は……クラスメイトに変な恰好をさせて連れ込んでいるっていう状態である。こんなのがばれたら人生終わるし、家族会議待ったなしである。それに……多分彼女がサキュバス? ってことは内緒にした方がいい気がするんだよな。
「ごめん、ちょっと隠れてて!!」
「え? ええ、わかったわ。ってちょっと……」
俺は黒川をベットに押しやって頭から毛布をかぶせて俺も一緒に入る。何やら抵抗しているようだが、説明している時間はないのだ。毛布の中でもぞもぞされて彼女の身体が俺に当たり人肌の暖かさと、何やら柔らかいものが当たってしまう。なにこれ、やばい女の子の身体ってこんななの? しかも、無茶苦茶いい匂いがするんだが!!
「翔……だれかいるなら……っていないようね」
「悪いな、母さん。ゲームがいいところで、つい騒いじゃったんだ」
俺は毛布の中に入っているのが一人に見えるように黒川を抱きしめる。
「ふーん、今日からイベントですものね。わかってる? 課金は家賃までよ」
「いや、俺のおこずかい一年分でも家賃に届かないんだけど……」
「ちなみに私は宝具レベル5になったわ。フレンドにいるから使っていいわよ」
呼吸をするようにガチャマウントをとって、母親は去っていった。俺のお小遣いは月5000円だからね……課金なんて気軽にできないんだよ……それはともかくだ。俺は毛布をとって抱きしめる形になってしまった黒川に声をかける。
「ごめん、黒川。母さん出て言ったからもう大丈夫だぞ」
「男の子に……抱きしめられた……はじめてだったのに……しかも、うかつに触れるから契約も成立しちゃったじゃないの……」
え、なんかムチャクチャ顔を真っ赤にして呻いているんだけど……しかも、契約が成立したってどういう事だろう。実は召喚方法は書いてあったがそれ以外はわからないんだよな。しばらく悶えていた彼女だったがようやく顔を上げるとこちらを睨んできた。
「いきなりベットに押し込むなんて何を考えてるのよ、この変態、けだものーーー」
「いや、そっちなんてサキュバスじゃん……でも、今のセリフラブコメのツンデレヒロインっぽくてよかったぞ」
「うっさいわね、眠りなさい!!」
なぜだろう、彼女の一言でいきなり眠気が襲ってきて俺は夢の中へと誘われるのだった。自己紹介が遅れた、俺の名前は妻田翔、ごく普通の彼女が欲しい高校二年生だ。この時の俺はこの召喚のせいでとんでもないことになるなんて思いもしなかったんだ。
本日後二話ほど投稿します。
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