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無銘の世界~personaluniverse~リメイク  作者: ネツアッハ=ソフ
3,王都編
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エピローグ

 気付けば、僕は王都(おうと)の外れに一人立ち尽くしていた。


 どうやら無意識(むいしき)で此処まで来たらしい。少し、いやかなり精神的にこたえていたようだ。


「………そうか、僕はバケモノだったのか」


 今なら分かる。神山での修行の時、山神(かみ)であるミコトが僕に何をしていたのか。恐らくは僕の中で目覚めかけていた力をずっと(ふう)じていたんだ。封じ込めていたんだ。


 そして、その力がさっきの戦いで完全に目覚(めざ)めた。きっと、あの時バフォメットのアインが口にしていた力というのがそれだったんだろう。最初から、僕の力を見抜(みぬ)いていたんだ。


 バケモノ。そう、僕はきっとバケモノだ。


 なら、バケモノはきっと此処にいちゃいけないんだろう。


 頭の奥を、人々の(おび)えた顔が(よぎ)る。皆、僕に対して怯えていた。


 そう、僕がバケモノだから。皆、僕の力に怯えていたんだ。


「ああ、なるほど。結局僕は他人(ひと)に認めてもらいたかっただけなのか」


 ずっと(ひと)りになりたかった。他人(たしゃ)を必要としない、独りで生きていける力が欲しかった。


 ずっと、そう思っていた。


 けど違う。僕はただ、(みんな)に認めてもらいたかっただけなんだ。ずっと、自分の事を理解してくれる存在を求めていただけだったんだ。ただ、それだけだったんだ。


 けど、それももう(おそ)い。もう、僕の事を誰も認めてはくれないだろう。バケモノなんて。


「………死のう。もう、どうでもいいや」


 手元には、何時(いつ)の間にか一振りのナイフがあった。これも僕の持つ力によるものだ。僕の能力を駆使すれば無から物質を創造(そうぞう)する事など容易いのだろう。


 それこそ、文字通り軽く意思を(かたむ)けただけで。


「……………………」


 自分の首に、そっとナイフを当てた。そのナイフへ力を少し()めれば、僕は死ねる。


 そう思い、そっと力を籠め———


駄目(だめ)っ‼‼‼」


「‼?」


 僕に、勢いよく飛び付いてくる何者(なにもの)か。その何者かが僕に飛びついた勢いで、僕とその誰かは共に地面を転がりやがて土塗(つちまみ)れで地面に共に横たわる。


 しかし、それでもその誰か。リーナは()まらない。


 そのまま起き上がると、僕の上に馬乗りになって涙目で僕の頬を(はた)いた。


 ひりつく痛みが、僕の頬に伝わる。そして、呆然とする僕をリーナはぎゅっと()き締めた。


「ムメイは私にとって希望(きぼう)なの。そんな貴方を失ったら、これからどう生きればいいの?」


 希望を失った自分はこれからどう生きればいいのか?


 そう、リーナは()げた。


「それ、は………」


「ムメイがずっと誰かに認めてもらいたかったのは知ってる。ムメイの目が私の事を見ていないのは既に理解しているよ。けど、それでも私にとって貴方は。ムメイは———」


 それまでだった。僕は、リーナの言葉を遮り強く抱き締めた。


 嗚咽(おえつ)が漏れる。止め処なく、涙が溢れ出す。感情が(おさ)え切れない。


「ご、めん。リーナ、ごめん………」


「………良いよ。私こそ、ごめんなさい」


 リーナの腕がそっと僕を包み込むように抱き締め、そっと頭を()でる。


 (あたた)かい。心が、リーナの優しさが何よりも暖かい。


 そう、感じた。


 ………


 …………


 ……………


「ねえ、ムメイは何がしたい?これからムメイはどうしたいの?」


 やがて、僕が落ち着いた頃にリーナがそっと僕に()い掛けた。


 それはきっと、僕の今後に強く影響(えいきょう)する言葉だろう。だから、僕はしばらく考えてからやがて自身の回答を告げた。僕自身の、何よりの本音(ほんね)を。


「………やり直したい。今度こそ、間違わない為に。今度こそ、失わない為に———」


「………うん、それで良いよ。けど、これだけは(わす)れないで。貴方は私にとっての希望、だから私も決して貴方の事を(あきら)めないって」


 強い覚悟を秘めた瞳で、リーナは告げた。


 そんなリーナに僕も(わず)かに笑みを向ける。


 そして、僕は、僕たちは(すべ)てをやり直した………

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