8,純血の悪魔Ω
「もうか、存外動きが早いな………」
そう、神王デウスが呟いた。瞬間、入口の大扉が勢いよく開く。
「大変です、陛下!大勢の賊が街を襲撃。その数、約千人以上‼」
その言葉に取り乱しざわつく騎士たち。しかし、次の瞬間には国王陛下の大音声が室内に響き渡りその一喝で一斉に静まり返った。
「静まれ‼‼‼うろたえるでない、まだ我らにとっては想定の範囲内だ。故に我が騎士団よ、賊のこれ以上の暴挙を許すでない!早急に討ち果たせ‼」
「「「っ、はっ‼‼‼」」」
騎士団は陛下の一喝で一斉に士気を取り戻したのか、一糸乱れぬ動きで外へ飛び出した。
しかし、僕はそんな中神王デウスに視線を向けている。
何故だろうか?神王が僕をこの世界に転生させた理由とこの襲撃が繋がっている気がする。
いや、繋がっていると確信しているのだ。そんな中、神王は僕を真っ直ぐと見ながら比較的落ち着いた口調で告げた。まるで、これも想定内と言わんばかりに。
「分かっているな?この事態はお前を転生させた理由と決して無関係ではない」
「まさか、今回の事態を想定して僕を転生させたとでも?」
そう、神王デウスは全知全能の神王だ。故に、この宇宙で彼に分からない事は無い。
だからこそ、僕を転生させたのかも知れない。そう判断しての問いに、神王は………
「その通り、と言いたいがな。実際は想定していたよりも僅かに早かったのだ。まあ、これもあの悪魔が考えたシナリオならば納得出来る話だがな?」
「悪魔、ですか?」
僕の問いに、神王は無言で頷いた。
悪魔、つまり人ならざる存在がこの一件に関わっていると神王は言う。
「そう、悪魔とは文字通りの意味だ。この事件の黒幕は人ではない。Ωという名の純血の悪魔が今回の騒動を裏で糸引いているのだ。つまり、奴はこの世界で大戦争を起こそうとしている」
「………Ω」
「そう、奴はこの世界ではない。何処か別の世界で生まれた悪魔だ。お前を転生させたのも無論奴に対する戦力になると判断しての事だ」
「…………そういう事でしたか」
色々と、納得出来た気がした。
つまり、そういう事だったのだ。今回の事件と僕が転生した一件は繋がっている。
「無論、これはあくまで俺自身の判断でしかない。故に行くか否かはお前に任せる」
「いえ、行きます。もちろんこれは僕自身の判断で、ですが」
「うむ、分かっている。頼んだ」
その言葉を聞き、僕はそのまま外へと飛び出した。
・・・・・・・・・
シリウス=エルピスが外へ飛び出した後、神王デウスはぽつりと呟いた。
「ああ、分かっているさ。今のお前ではこの世界は救えないと………」
その言葉が聞こえていたのは、隣に立つオーフィス国王のみだった。
無論、その言葉の意味を知るのも………




