6,神王デウス
「久しぶりだな。今はシリウス=エルピスという名だったか?少年」
そう神様は、神王デウスは言った。その言葉に、父さんとリーナが驚愕の表情で僕を見る。
いや、それだけではない。周囲に控える騎士達も心底驚いた表情で見ている。どうやら此処に居る誰もが状況を理解している訳ではないらしい。
どうやら、僕は盛大なドッキリを仕掛けられたらしい。あるいはこれも神王の計らいなのかも知れないけれど残念ながら僕には今一つ理解しきれない。
なので、僕は正直に聞く事にする。
「えっと、今一つ状況が呑み込めないのですが?神王陛下?」
「デウスで良い。お前と俺の仲だ」
「はぁ、しかし周囲の方々もあまり状況を呑み込めていないようですが?」
見ると、周囲の人々もぽかんとした表情で僕たちを見ている。例外は国王陛下ぐらいで他は全員呆然とした表情で僕たちの様子を見ているだけだ。
まあ、それも仕方がないだろう。何故なら、僕のような一介の貴族の子息が神々を統べる王に対してほぼ対等のように話しているのだ。一種異常な光景だろう。
リーナに至ってはどういう事なのかという視線を僕に向けている。
「ふむ、流石に度が過ぎたか?」
そう、国王陛下に視線を向ける神王陛下。対する国王陛下はそっと溜息と共に言った。
「それもそうであろう。知っているならともかく、何も知らぬならこのような状況になるのもいわば必然というものであろうよ」
「ふむ、まあそれもそうか。少しばかり悪戯が過ぎたな、素直に詫びよう」
そう言って、苦笑を浮かべる神王陛下。
そして、未だどういう状況なのか呑み込めずに呆然としている父さんに国王陛下が言った。
「そろそろ戻ってこい。エルピス卿、貴殿に何も言わなかったのは詫びるが一応それにも理由というものが存在するのだ。先ずは話しを聞け」
「っ、はっ!」
慌てて頭を下げる父さん。それに対しまだ今一つ状況が呑み込めない騎士たち。
しかし、彼等も国王陛下の一喝で静まり返る。
「先ず、シリウス=エルピス。彼は神王が自ら異なる世界から呼び出した転生者である。故に彼の者は神王が自ら直轄する魂である。そうだな?シリウス=エルピス?」
「はい。その通りでございます」
その言葉に、父さんは愕然とした表情で僕を見た。
しかし、僕は一切動揺を表に出さない。リーナも心底驚いた表情を見せるが、僕はそれ等を意図的に無視して話を進める事にする。
実際、今の僕はかなり動揺している。その話は僕が意図して隠していた内容だからだ。
「今から話すのは、シリウス=エルピスを転生させた本当の目的だ。無論、彼を転生させたのには二つほど理由があるのだ。それを、今から神王自ら話す」
そう国王陛下が言った。直後、神王陛下が咳払いして周囲の視線を自らに集めた。
そして話を始める。僕が転生を果たした本当の理由を………




