3,ユニークスライム
王都へと向かう道中、馬車の中でふいに父さんが話しかけてきた。
「なあ、シリウス。お前の肩にさも当然のように乗っているスライムだが………」
「はい」
「そいつ、ユニークスライムではないか?」
ユニークスライム?聞いた事のない単語に、僕は思わず首を傾げた。その反応に父さんは何かを察したのか僅かに苦笑を浮かべた。
肩の上に乗っているスライムが、ぷるりと震える。
「ユニークスライムというのは、要するにスライムの変異種だよ。簡単に説明すると、スライムの上位種であり数多のスライム種を統率するリーダー個体だな」
「はあ、このスライムがですか?」
ちらりと、肩の上のスライムに視線を移す。
こいつの名前はジール、スライム種の中でも特殊な個体だと聞いてはいたが。どうやらスライム種の上位個体であったようだ。まあ、多分あえて隠していたんだろう。
視線の先で、ジールが僅かに誇らしげな態度を示している。というより、先程から念話能力により思念が僕の脳内に直接響いているのである。中々にうるさい。
けど、なあ?
「当人?に直接聞いた話によると、出来る事は主にテレパシー能力ぐらいらしいけど」
「ふむ、けどそれはそのスライムが言っている事だろう?実際そのスライムがテレパシー能力により何ができるのかは知らないんじゃないか?」
「……………………」
確かに———
僕はこのスライムがテレパシー能力を使って何が出来るのかまでは聞いていない。
もしかしたら、そのテレパシー能力を使って他のスライム種全員を相手に一斉に命令を下せるのかもしれないしな。要するに、其処の所が全く分かっていないのだ。
まあ、でも別にそれでも良い。僕は其処で思考を切る事にした。
「別に、今の所こいつが僕に敵対する意思を見せた事は無いし。そもそも恐らくだけど、こいつ自体にスライム種以上の力は他に持ち合わせてはいないと思う」
それこそ、他のスライム種全員をけし掛けさせる事以外は。
そもそも、スライム種は総じて最弱の魔物だ。それこそ、大量のスライムが一斉に統率され襲い掛かるような事でもない限りは……
僕の言葉に、とりあえず納得したのか。それともイマイチ納得出来ていないが、それでも取り合えずは納得する事にしたのか。ともかく父さんは納得した。
いや、それとも納得する事にしたか?
・・・・・・・・・
同時刻、走り去る馬車を森の木陰から覗き見る異形の影があった。
オークの変異種。ホワイトオークだ。
ホワイトオークの一団は、何事かを伝え合うとそのまま馬車に強襲を仕掛けようと、
した瞬間、大量の何かに背後から襲われ一瞬でその命を散らせた。オーク達にとって全くあずかり知らぬ事だが、その時、馬車の中から一匹のスライムがその何かに指示を出していた。
そのまま、馬車を襲おうとしていた魔物達は、尽く大量の何かに呑まれて消えた。
その事実を知るのは、馬車の中にはただ一匹以外居なかった。




