2,王都への支度
「……ムメイ、大丈夫?」
「うん?何が?」
王都へ向かう支度の最中、リーナが聞いてきた。振り返ると、不安そうに僕を見ている。
思わず首を傾げ、怪訝な表情をするとリーナが補足を入れてきた。
「いや、ほら………ムメイは確か一人になる為に家を出たんじゃ」
ああ、うん。なるほど?
納得して、思わず苦笑を漏らす。どうやらリーナなりに僕の事を心配しているらしい。まあでもそれは既に僕の中である程度覚悟が出来ていた事だけれども。
けど、それでも心配してくれるのは僕なりにこそばゆくはあった。だからだろうか、気付けば僕は自然と穏やかな笑みを浮かべていた。その事実に、自分自身が内心驚いた。
………僕ってこんな性格だっただろうか?
「大丈夫だよ、僕自身既に覚悟は決めていた事だから。それに、独りになりたくても独りにしてくれないお節介焼きも傍に居る事だしね?」
その言葉に、あうっとリーナが俯いた。そして、不安そうに僕に問う。
「………やっぱり、ムメイにとって私は迷惑?」
「いや、そんな事はないさ。少しくすぐったくはあるけど、それでもリーナが傍に居てくれるのは僕からすれば嬉しくもあるから」
「……そう、なの?」
上目遣いでやはり不安そうな視線を向けるリーナ。そんな彼女の頭をそっと撫でる。
やっぱり、僕はこれでも彼女には多少なりとも心を開いているんだろう。だからこそ、彼女を相手にこんなにも穏やかな気分になるんだろうし。穏やかになれるんだろうし。
そう思った………
「それに、きっと何れ僕は自由が利かなくなるだろう事は予想出来ていたから」
「?」
リーナが小首を傾げるのを、僕はやはり苦笑を浮かべながら支度を進めていた。
そんな僕を、リーナはやはり不思議そうに見ていた。




