表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無銘の世界~personaluniverse~リメイク  作者: ネツアッハ=ソフ
2、エルピス領編
44/57

番外、遺跡の奥に眠る1

 それからひと月ほどが過ぎ()った。あれ以来、どうもリーナが僕から(はな)れようとしない。


 まあ、理由は既に分かり切っている。あの遺跡(いせき)での一件だろう。


「なあ、もう(ゆる)してくれても良いんじゃないか?」


「やだ」


 即答だ。どうも、少しばかりへそを()げてしまったらしい。分かっている、流石に僕も自分が悪いという事実は黙して受け入れよう。流石に仕方(しかた)がないさ。


 とはいえ、もうひと月も過ぎたんだ。許して()しいとは言わないが、そろそろ少しくらいは機嫌を直して欲しいとも思う。


 或いは、リーナもバツが(わる)いだけかもしれないけど。それは言わぬが花かな。


 一応、あのバフォメットの一件でギルドから報奨金(ほうしょうきん)が出ている。領主からも謝礼があり、金銭的にもかなり余裕があるだろう。既に一生の半分は(あそ)んで暮らせるだけの金はある。


 しかし、いくら余裕があるとはいえ流石に(そと)に出ないままでは身体がなまる。


 だから、そろそろ外に出ようと思う———


「なあ、リーナ?」


「なによ………」


「………そうだな、デートでもしようか?」


「っ⁉」


 そう言うと、リーナはあからさまに狼狽(うろた)えた。うん、デートというのは少し言い訳臭くはあるが彼女にはかなり効果的だったらしい。少々、良心の呵責(かしゃく)があるが。


 まあ良い、とりあえず外に出る事は出来そうだ。


          ・・・・・・・・・


 とりあえず、僕達は揃って久しぶりに外へ出た。街の中を(めぐ)るだけでも中々面白い。それは流石に僕が外に出なかった弊害(へいがい)だとは思うけど。まあ、それは良い。


 とりあえず、此処(ここ)は僕がリードするべきなのだろう。ともかく、適当な飲食店へと入ろうと思いすぐ近くにあるフォークとナイフの絵が(えが)かれた看板の店に入った。


 店に入り、席に着くと(そろ)って店のメニューを見た。どうやら此処はスイーツ店らしい。


 メニューにはケーキなど甘味類が(なら)んでいた。


 ケーキとはいえ、此処は異世界。地球(ちきゅう)にあるそれとは色々と(ちが)う部分が多い。例えばアロンという名前の地球で()うところのチーズケーキがある。チーズケーキをベースにして様々な果実を盛りつけたような彩り豊かなケーキとなっている。


 しかも、その果実類も地球のどこにも存在しない果物ばかり。()たものはあるが、同じものは一つとしてありはしないのである。うん、中々に独創的だ。


「じゃあ、僕はアロンと紅茶(こうちゃ)のセットで」


「あ、私はアリカとミルクティーのセットで」


 僕とリーナはそれぞれ注文をした。ちなみに、アリカとは異世界版ロールケーキだ。


 注文を聞いた店員が見事な営業スマイルで()っていく。


 さて、そろそろもう一つの用事を()ませよう。


「なあ、そろそろリーナも機嫌を(なお)してくれないか?」


「……………………」


「もちろん、リーナが僕の事を()きでいてくれてるのは分かってる。それに、僕が傷付いて悲しんでくれてるのも分かるつもりだ。けど———」


「………それだけじゃないよ」


「え?」


 思わず、僕は()き返した。リーナは、そんな僕の顔を真っ直ぐ見て言った。


「それだけじゃない。確かにムメイが傷付いて悲しいけど、それよりも私はムメイが大変な時に傍に居られない事が(くや)しいの」


「…………」


「私は、私はムメイが大変な時こそその(そば)に居たいと思っている。だから………」


「………ごめん、理解した」


 そう言って、僕はリーナに深く頭を()げた。


 そうか、リーナは其処まで僕の事を(おも)って。そして、傍に居たかったのか。


「リーナの言い分は理解した。今度からはリーナにもなるべく(たよ)るようにするよ」


「………うん」


 そう言って、リーナは今度こそ笑顔を浮かべた。その笑顔はまるで花が()くようだった。


 思わず、その笑顔に僕は見惚(みと)れてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ