エピローグ
勝敗は一瞬で決した。
遺跡の内壁はボロボロに崩れているが、遺跡全体としては一応無事だ。というのも、何らかの魔術的防御が働いているのか徐々に遺跡が再生しているからだ。
恐らく、何か核のような物が存在するのだろう。核を破壊しなければ周囲の地脈や霊脈から自然魔力を吸い上げ再生する仕組みになっているのかもしれない。
それよりもバフォメットのアインだ。驚いた事に、僕の全力を喰らいまだ生きていた。
もはや息絶え絶えではあるが、それでもまだ意識を保っていたのである。
「ふふっ………残念だ。貴様の全力をついぞ引き出せなかったか」
「何を言う……?僕の、奥の手を出させておいて………これ以上は…………」
そう言う僕に、アインは首を左右に振った。
苦笑を浮かべ、もはや無視の息だというのに眼光鋭く僕を真っ直ぐと射抜いた。
「小僧、貴様はまだ全力を出していない。いや、貴様の全力は今の小手先の技術でどうこう出来る領域には存在していないのだ」
「何、を………」
「じきに分かる。貴様はこれから先、この世界を………いや、この宇宙の根幹すら覆す」
言って、アインはそのまま力尽きた。何を言っているのか理解出来なかったが、それを考えているほど僕も余裕がある訳ではなかった。
というか、もう意識を保つのも限界だった。
「……………………っ」
背後から、複数の靴音が響いてくる。誰かが集団で近付いているのだろう。
そう、ぼんやりと考えながら、僕の意識は闇に呑まれていった。




