11、意思を持つ災禍
押し負けたのは僕の方だった。飛んできた魔弾を辛うじて避けるが、それを見越していたかのように距離を詰めてきたアインの蹴りを腹部に食らう。
身体を貫通するのではと錯覚するような猛烈な衝撃が僕の身体を駆け抜ける。思わず僕は口から血反吐を吐き出しそうになった。
「ぐっ………ぅ‼」
「まだまだ、容赦はせんぞっ!」
アインの咆哮と共に、更なる攻撃が来る。
呼吸すらままならない魔弾による連撃。それが嵐の如く僕を襲う。そんな中、僕の中で何かが切り替わるような気配を感じ———
………る前にそれを根性論で抑え込む。何とか意識を繋ぎ止め、アインの魔弾を自身の魔弾で相殺して切り抜ける事に成功する。魔弾による衝撃で遺跡が大きく揺れる。
しかし、それでもダメージは思いの他に大きい。僕はその場に膝から頽れる。
そんな僕を、アインは嘲笑を浮かべながら見下ろす。
「どうした?その程度か、その程度で終わる器なのか小僧?」
「………まだ、まだだ」
そう言って、僕はそのまま立ち上がる。不思議と身体は動く。あれほどの嵐の如き連撃を受けながらそれでもまだ、それでもまだ僕の身体は動いた。
大丈夫だ、まだ僕は動ける。まだ生きている。なら、まだまだ僕はやれる筈だ。
………ふと、僕の脳裏に前世の記憶が蘇る。もう、あんなみじめな最後は御免被る。
なら、僕はまだやれる筈だ。
なら、もう何も躊躇う理由なんて無いだろう?
「………………ふぅっ」
呼吸を整え。僕はもう一つの切り札を切る。下手をすれば、それこそ周囲一帯に致命的な損害を与えてしまう可能性がある。文字通りの切り札を。
………瞬間、僕の身体から放出されていた膨大な魔力が体内へ収束していく。
いや、違う。これは僕の体内で膨大な魔力が超高速で循環しているのだ。
光の速度を超えて体内を循環する魔力の奔流。光速を超えて更に加速していく。
魔力の高速循環。これこそが僕のもう一つの切り札だ。その効果とは———
僕自身の全ての能力値を大幅に強化すること。




