表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無銘の世界~personaluniverse~リメイク  作者: ネツアッハ=ソフ
2、エルピス領編
39/57

8,暑苦しい舎弟?

 そして、次の日———


「………えっと?これはどういう状況(じょうきょう)だ?」


 思わず、僕の口からそんな言葉が()れ出た。リーナも呆然とした表情で硬直している。他の宿泊客も同様に呆然と僕達を見ているのみだ。宿の(あるじ)ですら、同様の有様だった。


 それは何故(なぜ)か?その状況は、まあつまりだ。今目の前で起きている事を見れば解るだろう。


「どうか、どうか俺を舎弟(しゃてい)にしてくだせえ‼」


 宿泊している宿の中、僕の目前で額をこすり付け懇願(こんがん)するモヒカンの姿があった。そのモヒカン男の事は一応覚えてはいる。確か、冒険者のガンクツだったか。昨夜、まだ冒険者になりたての新人である僕に絡んで喧嘩(けんか)を売ってきた()っ払い冒険者だ。


 そいつが今、僕に土下座(とげざ)しているのである。まあ、何というか土下座というより土下座に似ているだけの別物なのだけど。額を(ゆか)にこすり付けるその姿は土下座に良く似ている。


 とまあ、それはともかくだ。僕はガンクツに話しかける。


「とりあえず、頭を()げないか?流石に宿に迷惑(めいわく)が掛かる」


「………へい」


 そういって、ガンクツは頭を上げた。そんな彼に、とりあえず席に座るよう(うなが)す。


 僕も向かいの席に座り、話し合う。とりあえず、()ずは話し合う事が重要だ。


 何事もまず話し合う事から始めなければ。


「で?何故舎弟なんだ?見たところお前そこそこベテランの冒険者なんだろう?なのに、始めたばかりの新人冒険者相手に舎弟にしてくれだなんて。流石(さすが)に笑えないぞ」


「へえ、しかしその新人が俺を瞬殺なんて出来ますか?俺、冒険者ではそこそこ名が()れているベテランの冒険者ですよ?そんな俺を、酔っていたとはいえ瞬殺したんですよ?」


「いや、それはまあ………けっこう(きた)えたし?」


「けっこう鍛えたくらいでベテランの冒険者を瞬殺って………」


「いや、死ぬほど鍛えたし?」


 そう言う僕に対し、ガンクツは(ふたた)び頭を下げてテーブルに額をこすり付けた。


 うん、こいつ分かっていたけど暑苦(あつくる)しいな。そしてかなり面倒臭い。そう思い、思わず頭を抱えたくなるが寸での所で(おさ)えた。抑えた、のだが。


「頼みやす、俺を兄貴(あにき)の舎弟にしてくだせえ‼」


「誰が兄貴だ‼あと、宿に迷惑だって()ってんだろ‼」


 思わず怒鳴(どな)ってしまったのは悪くあるまい。流石の僕にも、我慢(がまん)の限界がある。


 しかし、ガンクツは意にも(かい)さない。額をテーブルに()り続け懇願を続ける。どうやら意地でも僕の舎弟になるつもりらしい。少し、ドン引きした。


 見れば、他の宿泊客もドン引きしている。リーナもだ。


「お願いしやす!どうか、どうか俺を舎弟に‼」


「ああ、もうっ!分かった、分かったからさっさと此処(ここ)から出ていけ‼」


 思わず、そう言ってしまった。瞬間、ガンクツの表情が喜色満面に()わる。


 いや、おっさんの笑顔ってそうとうキツイな?


「ありがとうございやすっ!兄貴‼」


「だから兄貴は()めろ‼」


 そう言ったが、結局ガンクツは聞く耳を持たず笑顔で()っていった。その後ろ姿に、僕は思わず深い深い溜息を()いたのだった。


 全く、本当に面倒だ。そう思ったのが(つた)わったのか、隣でリーナに(なぐさ)められた。


 今回ばかりは、その慰めがありがたかった。思わず(なみだ)が出る程に………

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ