表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無銘の世界~personaluniverse~リメイク  作者: ネツアッハ=ソフ
2、エルピス領編
38/57

7,宿泊と冒険者ギルド

「はい、一泊につき青銅貨三枚になります。夕食付きでプラス銅貨八枚、お風呂付きで更にプラス青銅貨一枚という設定(せってい)となっておりますがいかがいたしますか?」


「部屋二つ、一週間夕食付きで。あと、お風呂も()けていただけるとありがたいです」


 そうして、僕達は無事に宿(やど)を取る事が出来た。受付に居た少女に金貨一枚を渡す。少女はその金貨を丁寧に受け取ると、そのままおつりを()り出し僕に渡した。


 この世界では貨幣に十進法が採用(さいよう)されている。下から石貨、鉄貨、銅貨、青銅貨。


 更に上に銀貨、金貨、白金貨、星金貨とある。それぞれ単位(たんい)が十繰り()がっていく。


 一番下の石貨で一円相当、次に鉄貨で十円、銅貨で百円といった所か。


 ちなみに平均的(へいきんてき)にパン一つで鉄貨八枚くらい。


 より具体的(ぐたいてき)に説明すると、この宿の宿泊代は一泊四千八百円。そして一週間で約三万三千六百円という事になるだろう。無論、宿泊費に夕食お風呂代もプラスした上での計算だ。


 其処(そこ)に部屋二つで約六万七千二百円である。


 この世界、惑星(わくせい)ウロボロスの世界において貨幣の流通は一切が統一(とういつ)されている。とはいえ全ての国が統一されている訳ではない。一言で()えば、世界統一国家連合とも呼ぶべき超大規模組織が形成されているらしいのである。


 それぞれの大陸にそれぞれの種族(しゅぞく)が住んでいる。そしてそれぞれの大国(くに)が存在する。


 人類(じんるい)の王として行政王、立法王、司法王が。


 神々(かみがみ)の王として神王が。


 幻想種(げんそうしゅ)の王として竜王が。


 巨人(きょじん)の王として炎巨人と氷巨人が。


 魔族(まぞく)の王として魔王が。


 そして、それぞれの国の王が代表として一定周期で会談(サミット)を行い世界の在り方を決定する。そうして世界経済などを()り立たせているらしい。


 それ等の世界的経済システムは太古の昔、幾度かの戦争を()て制定された物だ。


 その結果として、全ての国は一切の戦争行動をしないという法律(ほうりつ)を根本として設けた。


 無論、何かしら予想外の事態により外敵(がいてき)が出現した場合は全ての国が一丸となり戦うという法律も同時に儲けられている訳だが。それは()は無関係な話だろう。


 ………話を(もど)そう。


 僕達は宿泊する宿を確保(かくほ)した。次はギルドに冒険者として登録する(ばん)だ。背後で少し残念そうに僕を見ている視線を感じるが、気のせいだ気のせい。断固(だんこ)気のせいだって。


 そうして、僕達は宿屋の受付(うけつけ)から聞いた道順を辿(たど)り冒険者ギルドへ向かった。


 背後で少し不満そうに僕を見る視線を感じるが、断固無視(むし)する。


 だってそうだろう?結婚どころか正式な交際(こうさい)すら成立していない男女が、一緒の部屋に泊まるなど普通にありえないだろうに。そんな話、貴族として醜聞(しゅうぶん)にしかならないだろう。


 もっと貴族として自覚を持って()しいと思う。そっと溜息を吐いた。


 ………しばらく歩いて、やがて目の前に比較的大きな建物(たてもの)が見えてきた。入口の看板には双剣と盾を組み合わせた紋章と酒の紋章が(なら)んでいる。恐らく、双剣と盾がギルドの紋章だ。


 ギルドは居酒屋も兼任(けんにん)している場合が多いという。つまり、並んでいる酒の紋章は居酒屋を現わしているという事だろう。


 ギルドの(とびら)を開ける。瞬間、一斉に僕達へと視線が()いた。


 あからさまな好奇(こうき)の視線。しかし、やがて僕への視線はリーナへと向く。


 どうやら僕に対する興味(きょうみ)より、リーナに対する興味が(まさ)ったらしい。うん、どうやらどこまで行こうと冒険者は冒険者らしいな?しかし、


「……………………」


 リーナが(おび)えて、僕の背後に隠れる。後ろから(すそ)をぎゅっと握り締めてきた。


 まあうん、確かに冒険者は比較的チンピラが多いというし。それなりに(から)まれるのを覚悟した方が良いともいうけどさ?流石にこれは露骨(ろこつ)過ぎないか?


 うんざりとしながら、僕は受付へと向かった。


「あの、冒険者として登録(とうろく)したいのですが」


「はい。では冒険者として登録するにあたり事前に冒険者規約を説明(せつめい)させていただきます」


 そして、僕達は受付から冒険者の規約(ルール)を説明される。


 規約は事細かく設定されているが、要約(ようやく)するとこうだ。


 ギルドに所属する冒険者として相応しいマナーを遵守(じゅんしゅ)してください。基本、冒険者同士の喧嘩やいさかいにはギルドは一切関与しませんが、それがギルドの沽券(こけん)に関わるような内容なら話は別になりますのであしからず。


 冒険者が犯罪(はんざい)に手を染めた場合、ギルドはその全ての権限と権威を以ってその冒険者を捕らえしかるべき法の下に処罰します。これは全国王からも許可(きょか)が出ている事です。


 冒険者として登録する時に個人情報を記録(きろく)させていただきます。しかし、ギルドがその情報を私的利用する事はありませんのでご安心を。ただし、その冒険者が犯罪に関与(かんよ)している可能性がある場合にはこれを上層部及び国に開示(かいじ)する場合もございます。


 もし、ギルドの斡旋(あっせん)した依頼を連続で失敗するような事があった場合、その冒険者の登録を抹消処分する場合があります。しかし、これはよっぽどの場合ですので気になさらず。


 という事らしい。まあ、それ以外にもルールは(こま)かく設定されているが。


 そうして、僕達はそれぞれ個人情報を契約書類に記載(きさい)して冒険者登録を済ませた。


 そして、僕とリーナにそれぞれ鈍色(にびいろ)のカードが渡される。冒険者カードはその色によって冒険者としてのランクが明確に()かれている。


 それぞれ石、鉄、銅、青銅、銀、金、白金、星金だ。


 色は鈍色、鈍い銀色、赤茶色、青銅色、澄んだ銀色、黄金、白金、そして夜空の星を示す黒と黄金のコントラストである。それ等八等級に分かれている。つまり、僕達は石ランクだ。


 ………もう、(すで)に気付いているだろう。そう、この八等級は貨幣と同じ。八種類だ。


 つまり、今の僕達は最下級の一円クラスという訳だ。其処(そこ)から冒険者としての働きに応じて昇格していくという事になるだろう。


 さて、冒険者として登録を()ませたところでそろそろ宿に帰るかな?


 ………そう思っていたのだが。


「おいおい、もう帰るのか?これだからガキはよ」


 がははと笑いながら、一人の酔っ払いが僕達に(から)んできた。明らかに世界観を間違えているようなモヒカンのゴロツキだった。絶対こいつは世界観を間違えている。


 リーナも(おび)えているのか、僕の背後でぎゅっと裾を握ってきた。いや、別にそれは良いんだけど少し動きにくいし(やわ)らかい何かが押し付けられて。まあ()いか。


 はぁ………


「で?一体何の用だ?酔っ払い」


「はんっ!ガキが生意気な口を()くもんじゃねえだろう!もっと先輩は(うやま)えよ!」


「いや、酔っ払いを敬えってなあ?」


 僕とモヒカンゴロツキの言葉の応酬(おうしゅう)だった。


「お、おいおいあいつ死んだぜ。あのガンクツさんにあんな口の利き方を」


「まあ良いんじゃねえか?ルーキーの良い洗礼(せんれい)だろう」


「がははっ、(ちげ)えねえ!」


 と、好き勝手言っている。しかし、そのガンクツとやらは完全に出来上がっているせいか一向に気にした様子が無い。というか、完全に酔いに任せて笑っている。


 うん、典型的な酔いどれだな?


「おうおう!ルーキーのくせに中々根性が()わっているじゃねえか?気にいったぜ、俺様の子分にしても構わねえんだぜ?」


「いや、結構だ」


「なあにぃ~?俺様の(さそ)いに乗れねえってかぁ~?」


「いや、性格(キャラ)がブレブレだぞお前?」


「ええいっ、こうなったら無理矢理にでも俺様の子分(こぶん)にしてやる!そりゃあ~っ‼」


 そう言って、ガンクツは僕に(おそ)い掛かってきた。のだが………


 ……… ……… ………


 結果、僕の完全勝利。


 うん、やっぱりな?こんな酔いどれに僕が()けるとは思えないし。というか、はっきり言えば負けろという方が難しいだろう。つまり、僕の完全な勝利だ。


「うぅん………俺の、負けだぁ~………ぐぅっ」


 まあ、完全に出来上がって(ねむ)ってしまっているけどな?


「す、すげえ!あのガンクツさんに()ちやがった………」


「あいつ、何者だ?一瞬(いっしゅん)だったぞ!」


「………(はや)すぎて見えなかった」


 などと、全員好き勝手言っている。はぁ、仕方(しかた)がない。


 僕は受付の女性に頭を()げる。


「申し訳ないのですが、この酔っ払いを(たの)めますか?」


「え、ええっ‼」


「お願いします」


 そう言って、僕は受付の人に酔っ払いを()し付けその場を(あと)にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ