閑話、悪魔は企てる
果たして、自身が悪魔となったのは何時の頃だったか?それは忘却する程遥か過去の事。
科学が発展したその世界において俺は科学では説明がつかない異能を宿していた。そして、ヒトという生き物は自身と異なる生物を忌み嫌う傾向にあるという。
それが例え自身と同じ人間であったとしてもだ。自身とは異なる価値観、倫理観、道徳、正義や悪など自身とは致命的に異なる何かを持っている者を排斥しようとする。
そんな生物が訳の解らない、説明や理解の出来ないような特異能力を持っていれば?
果たして、どういう結果に至るのか?それは火を見るよりも明らかだろう。
無論、答えは一つ———その者を自身の同族として見ない。即ち同じ人間として見ない。
俺は幼い頃から悪魔として忌み嫌われてきた。例え、それが実の父や母であれ。俺の事を悪魔と呼び化物と呼び怪物と呼んだ。そして、それを幼い頃の俺は容易く受け入れた。
———ああなるほど、俺は人間じゃ無いんだ。バケモノなんだ、と。
———人間じゃないなら、よりバケモノらしくふるまおう。俺はバケモノなんだから。
容易く受け入れ。そしてその生き方を自身に受け入れた。
そして、バケモノである俺に一切の躊躇など無かった。俺は俺として。バケモノはバケモノとしての生き方を貫こうと幼い俺は一切合切余分な感情を自身から排除した。
即ち、絶望や苦悩や悲哀などの感情だ。そんなもの、バケモノである俺には必要は無い。
故に、俺は一切後悔もしないし恥じもしない。この世の地獄という地獄を、この世の醜悪という醜悪を己の娯楽として楽しむのみだ。俺はバケモノだから、悪魔だから。
ならばそれ相応のふるまいというモノがあろう?
だからこそ、俺はこの宇宙を滅ぼした。生物という生物を。星という星を。神々すら。
徹頭徹尾末端に至るまで全てを滅ぼし尽くした。その瞬間、俺は人という肉体を捨て本当の悪魔へと変貌を遂げた。それは、まるで羽化と例えるべき事象。
いや、そんな生温いモノじゃあない。断じて、そんな可愛らしいモノではないのは確か。
それは即ち、人の皮を脱ぎ捨て純血の悪魔へと転生を果たす所業だ。
例えるならば、人の肉を食い破って内側から悪魔が這い出てくるような悍ましさだ。
………俺は、完全に人間を止めたのだろう。
そんな俺は次に此処とは異なる宇宙を目指した。そして、数々の星々を滅ぼした。
滅ぼし、滅ぼし、滅ぼして………やがて、一つの多元宇宙を滅ぼし尽くした。
だがまだだ、まだ足りない。俺はまだ餓えている。まだ乾いている。ならどうする?
この多元宇宙で足りないなら、別の多元宇宙に乗り込むだけだ。そうして、俺はまた異なる多元宇宙へと進出する事にした。進出し、そして俺はその多元宇宙のとある宇宙。ある星の一国。
そのまた一地方で。ある少年と出会った。それが、俺の新たな遊びの始まりだった。
それが、純血の悪魔であり生粋の悪魔である俺の壮大な遊びであり。企てだ。




