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無銘の世界~personaluniverse~リメイク  作者: ネツアッハ=ソフ
2、エルピス領編
30/57

プロローグ

「はっ……はっ……はっ………‼」


 ()げる。逃げる。逃げる。何処までも逃げ続ける。深い(もり)の中、私は何処までも逃げ続ける。逃げなければ追い付かれると()っているから。逃げ続ける。逃げなければ………


 逃げなければ。もっと(とお)くに。ずっと遠くへ。


 (はや)く。速く。速く。(いそ)がないと………それは追いかけてくるから。


 何処までも、何処までも。追いかけてくる。それは、黒いアンデッドの(いぬ)。その群れだ。逃げなければ追い付かれて私は()われるだろう。その事実に、私は恐怖(きょうふ)する。


 足をもつれさせ、それでも何とか姿勢を整えて(はし)り続ける。急がねば、早く、もっと早く走らねば追い付かれてしまうだろう。それが、(こわ)い。どうしようもなく、怖い。


 無様でも、恰好が(わる)くても、それでも逃げなければいけない。私は、逃げなければ。


 しかし、それでも私の体力は限界(げんかい)なのだろう。脚をもつれさせ、派手に転倒する。


 (いた)い。


「い、痛っ~~~」


 派手に(ころ)んだ結果、脚をすりむいてしまった。しかし、痛みに気を()らしている暇など無い。


 アンデッドの黒犬はすぐ(そば)まで来ていた。唸り声を上げ、ゆっくりとにじり()ってくる。


 私の恐怖は、ついに頂点にまで達した。思わず、悲鳴(ひめい)を上げる。


「い、いやぁ………こ、()ないで…………っ」


 しかし、現実(げんじつ)とは無情なもの。黒犬は勢いよく私に(おそ)い掛かってくる。


 きっと、次の瞬間には私はこのアンデッドの(えさ)となってしまうのだろう。


 恐怖のあまり咄嗟に目を(つむ)る。しかし、次の瞬間黒犬の悲鳴が(ひび)き渡った。そして静寂。


「………え?」


 疑問の声。それは、私のもの。それは、つまり私は()きているという事実。何故、どうして私は生きているのだろうか?そもそも、今の悲鳴(ひめい)は?


 ゆっくりと目を開く。其処には、私と同年代くらいの少年(しょうねん)の背中が。その背中に、何故か私は懐かしい気持ちを(おぼ)える。何故?


 しかし、そんな感傷に(ひた)っている場合じゃないだろう。恐る恐る、私は少年に声を掛ける。


 無様だが、(ふる)える声で私は少年に声を掛けた。


「あ、あの………えっと」


「君は、また(おそ)われているんだな?」


 え?また………?


 一瞬、何を言われたのか理解出来なかった。しかし、その声は()き間違えようがない。その声の主を私は確かに()っている筈だから。間違える筈が無いだろう。


 何故(なぜ)なら、その声は………


 その声の(ぬし)は………


「ム……メイ………?」


(ひさ)しぶりだな?リーナ………」


 そう、無銘(むめい)の少年が私の前に再び現れたのだ。私は、十年ぶりに彼と再会した。

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